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解放戦線 ~誰がために我らは戦場に立つ~  作者: 騎士誠一郎
第1部 戦場への旅立ち
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戦いは現場だけではない、会議室からでも始まっている

 カスバニオン帝国欧州・アジア国境戦線基地、そこではこれからの作戦行動について話し合っていた。


 「同盟軍は新型機を投入したがために、我が陣営は不利な状況に陥ったのだぞ!」

 「しかし、我々もゴブルの装備規格の拡張を始めたが、全てに渡るのは時間がかかる。 ましてや、新型機の開発は最低でも半年はかかりますぞ」

 「しかし、同盟軍が息を吹き返してこのような状況に陥ったのは、開発陣ではないのか!?」


 会議室は、現在の戦況で紛糾していた。

 無理もない。

 同盟軍と帝国軍は今もなお小規模な衝突があるものの、大雑把に言えば冷戦も同然だった。

 そんな状況下で下手に動けば必ず帝国は大敗北を期してしまう。

 それだけは絶対に避けたいのが本音ともいえるだろう。


 「グシアン公、貴公のお考えを聞きたい」


 前線基地高官の一人が、貴族を思わせる風貌の男に声をかける。

 名は、エリアス・グシアン。

 かつて、コロナクリスタルを発見した有名人であり、現在では「黒い亡霊シュヴァルツ・ファントム」の異名で知られているエースパイロットだ。


 「私はコロナクリスタルの第一発見者ですが、発言しましょう。 今回は敵の抵抗が激しいのであれば、それを逆手にとるのはどうでしょうか?」


 エリアスは、この状況を生かした作戦を提案する。


 「と、申しますと……?」

 「つまりは陽動作戦です」


 エリアスは一通りの作戦概要を話し終えると、自機があるハンガーへと向かった。


 「私の機体あいばの状況は?」


 黒いゴブルの近くにいた整備員に声をかける。


 「いつでも出撃できます! 今度の作戦、同盟軍に一泡吹かせてやりましょう!!」


 整備員はその問いかけに元気よく答えた。


 「ところで、例の装備は?」

 「ノートラル社から新型の電磁投射銃リニアライフルの試作品を取り寄せましたし、対装甲騎兵槍アーマー・ブレイク・ランスも最新モデルに更新しました」


 エリアスの問いに、整備員が説明する。


 「推進機の推力も3割ほど上げましたから、並のパイロットでは扱いきれませんよ」

 整備員が語る通り、エリアスのゴブルはスラスターユニットの増設や、軽量化などが施されている。


 これを使いこなせるパイロットは、並外れた実力が無ければ到底できない、正にエリアスのためにチューニングされた特別な機体ともいえるのだ。


 「大尉、作戦の予定日は?」


 整備員がふと気になったことを尋ねた。


 「来月3日に同盟軍士官学校の卒業試験が行われる。 これ以上敵を増やさないためには、種の内から掘り起こして潰してしまえばいい、というわけだ」


 エリアスが気さくにウィンクする。

 戦いは、既に巻き起ころうとしていた。


 その一方で、アムレイシア自由同盟作戦参謀本部。

 そこでは、今後帝国軍が仕掛けてくるであろう攻撃に備えて議論が交わされていた。


 「この状況は見ての通り、我が軍にも帝国軍にも好ましくないとも言えるな」

 「しかし、膠着している間にも、敵が奇襲を仕掛けて来たらあっという間に不利になるぞ!」

 「だがそうだとしても、極東までの道のりは、最短ルートを使っても4週間はかかる。 恐らく奴らが仕掛けてくるのは、来月3日の卒業試験辺りではないでしょうか?」


 参謀幹部たちはそれぞれ意見を出し合う。

 無理もない、この状況で奇襲攻撃を受ければ、同盟軍は致命的な打撃を受けかねない。


 「仮に帝国軍がこの状況を利用して、卒業試験を襲撃してくるのであれば、我らは其処をついてみようでありませぬかな?」


 初老の男性参謀・小林明人こばやしあきひとが紛糾寸前の場を沈めた。


 「小林さん、と言いますと?」

 「虚誘掩殺の計というやつですよ」

 この小林と言う男、かなり切れ者の様だ。


 後日、エリアスの部隊「漆黒の猟犬シシュヴァルツ・ハウンズ」は、同盟軍国境防衛ラインを滞りなく突破した。

 それが、同盟軍の計略であることを知らずに……。

両勢力が互いに探り合いながら部隊を投入する。

ミリタリーものは、奥が深い。

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