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解放戦線 ~誰がために我らは戦場に立つ~  作者: 騎士誠一郎
第1部 戦場への旅立ち
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過去 ~悟の悪夢~

 訓練が終わり、悟はシャワールームへと足を運んだ。


 「はぁ……、訓練後のシャワーはどうして気持ちがいいのだろう?」


 などと、呑気なことを呟いていると、


 「悟!」


 突然女性が悟に抱き付いてきた。


 「あ、アリス! 何でここに??」

 「だって、私は悟の婚約者ですもの」


 彼女の名は、アリス・コーラル。

 同盟軍を顧客に持つ有名軍需企業の社長令嬢で、卓越した操縦技術を持つ才媛である。

 士官学校入学時からの腐れ縁的な関係で、一方的に悟の婚約者宣言をして周囲を驚かせるお騒がせ娘だ。


 「だから、俺はお前の婚約者じゃないって!」


 悟は顔を真っ赤にしてシャワールームを急ぎ足で飛び出す。

 余談だが、アリスは男子シャワールームを清掃中の看板を置いて悟にアタックしたらしい。



 その晩、悟は寮の自室で娯楽番組を見ていた。


 『それで、兵隊さんも頑張ってはりますなぁ』

 『何を言うとるんや! このまま何もしなかったら敵さんが攻め込んでくると、ちゃう?』


 戦争をテーマにした漫才に飽きたのか、別のチャンネルに切り替える。


 モニター画面には、日本出身のアイドルグループが、帝国軍襲撃で全員身柄を拘束されたという一報を伝えていた。


 『人気アイドルグループ・《ガッチャンガールズ》は、アジアツアーの最中に、カスバニオン帝国特殊部隊に身柄を拘束され、現在同盟軍が救出作戦に向かっているところです』


 カスバニオン帝国は、同盟政府が誇る娯楽文化も徹底的に排除するべく、娯楽文化撲滅を目的とした特殊部隊を結成していると、士官学校・社会科教科書にも記されていたことを悟は思い出した。


 「帝国の奴らは何故そんなことを……」


 そう言いながら時計を確認する。

 時刻は2140(ふたひとよんまる)時、間も無く消灯時間だ。


 「明日も早いんだ。 今日はこの辺にしておこう」


 悟は、消灯してベッドに横たわる。

 まどろみの中、悟はあの日の出来事を思い出す。


 3年前、後に語り継がれるコロナクリスタル戦役開戦直後の悪夢を。

 その日は、妹の結婚式が盛大に行われていた。


 「おめでとうございます、高槻さん!」


 会社の先輩と後輩が悟の妹にお祝いの言葉を投げかける。

 賑わう披露宴会場。

 誰もが最高の幸せに包まれた。

 はずだった。


 突然鳴り響く銃声。

 会場は一瞬で凍り付いた。

 それに合わせるかのごとく披露宴会場内に侵入する小型無人機械たち。

 それは、カスバニオン帝国が開発した対人制圧用のドローンだ。


 『愉悦に浸る者たちに告ぐ! この愉悦は、我らが大皇帝の名のもとに終わりを告げた!』


 ドローンに搭載されたスピーカーから帝国兵士の声が響く。


 『貴様らには報いを受けてもらう! 愉悦に生きた罪は、死の報いを持って償うのだ!!』


 次の瞬間、ドローンに装備された爆弾が爆発した。

 悟は、祭壇の裏に隠れたことで辛うじて難を逃れた。

 そして、彼が目にした光景は正に地獄絵図と言っても過言ではなかった。

 粉々に吹き飛んだ会場、おびただしく横たわる死体からは血が絶え間なく流れていた。

 そして、悟の妹や両親、祝いに来てくれた親友たちも、無残な姿をさらしていた。


 「あ……、あぁ……!」


 悟は、怒りと悲しみが混じった声にならぬ叫びをあげた。

 その後、悟は同盟軍極東士官学校に入学、アリスや仲間たちと出会い、切磋琢磨して現在に至る。

 その悪夢がきっかけで、悟は起床する。


 「またあの夢……!」


 時計を確認する。

 時刻は0500(まるごまるまる)丁度を差していた。


 「よし、今日も頑張るか」


 悟は、この日の訓練に励むことにした。

悟の過去がここで明かされてきましたね。

次回は、帝国軍のエースが登場しますよ。

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