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解放戦線 ~誰がために我らは戦場に立つ~  作者: 騎士誠一郎
第1部 戦場への旅立ち
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序章ACT2

 西暦2081年、カスバニオン帝国が自由同盟に宣戦布告をしてから半年以上が過ぎようとしていた。

 帝国軍は兼ねてから開発していた人型作業重機の設計データを基に、コロナクリスタルを組み込んだ半永久エンジン「コロナ・リアクター」を搭載した人型兵器VD(ヴァリアントドール)を戦線に投入、同盟諸国を一気に蹂躙していた。


 『モール1より各機へ。 敵はどの道戦車しか持っていない虫けらどもだ。 落ち着いてやればわが軍の勝利は確実だ!』


 荒れ地と化した大地を蹂躙するがごとく、モスグリーン色の丸みを帯びた時計仕掛けの巨人・「GH-06S ゴブル」たちが駆け抜けていく。


 『そら、見えてきたぞ。 同盟軍の大戦車部隊だ!』


 目前に迫るのは、自由同盟軍が保有する、78式電磁投射砲戦車50両の大部隊。


 「VDの部隊を確認! 数は6機です!」


 戦車内で通信士が叫ぶ。


 「全車、迎撃しつつ予定ポイントまで後退!」


 戦車部隊指揮官が叫ぶ。

 搭載された電磁投射砲リニアレールガンが火を噴きながら、戦車たちは後退を始める。


 『おじけづいたか? だが逃がさん!!』


 モール2が94mmアサルトライフルを発砲する。

 それに続くかのごとく、他の機体もライフルを放つ。

 流れ弾が地面をえぐり、その内の1発が1両、また1両と沈黙させる。


 「34号車、46号車沈黙!!」

 「まだだ! まだこのタイミングではない!!」

 1号車の車内で車長と通信士が怒号でやり取りをする。


 『モール3より、モール1へ』

 『こちらモール1、何だ?』

 ライフルの弾をまき散らしながら、モール1がモール3に答える。

 『ここ最近、同盟軍の様子がおかしいのです。 妙に我々の動きを観察されている気が……』

 モール3が懸念すると、

 『そんなことは気のせいだ! 我らは大皇帝の体現者。 そんなことで揺らいでどうするんだ?』

 モール1が発破をかけた。


 一方、同盟軍戦車部隊はこの瞬間を待ち望んでいた。

 「隊長、本隊より入電!」

 「何だ?」

 「『我が隊、間も無く到着する』とのことです!」

 それは、同盟軍にとって、大きな意味を持った入電だった。

 「よし! 全車聞こえたな! 後は本隊に任せて、我が隊はこれより離脱する!!」

 戦車部隊指揮官は戦線からの撤退を命じ、自分たちも離脱の動きを見せた。

 それは、帝国軍も薄々気づいた。


 『おかしい? 奴らが撤退していく? 何が起きているんだ??』

 モール1が呟いたその時、何処からか飛来した弾丸がモール4を貫き、大破させた。

 『モール4、大破!!』

 『何が起きた!?』


 あまりの出来事に、戸惑うゴブルたち。


 『ヘッジ3よりヘッジ1へ、敵部隊の混乱化に成功!』

 高台に伏せ姿勢で狙撃銃スナイパーライフルを構えるブルーを基調とした角ばった巨人。

 この機体こそが、同盟軍が開発した高性能VD「KFT-904D ケーファー」である。


 『ヘッジ3はこのまま狙撃支援を頼む! 他の者は私と共に敵部隊の各個撃破に当たれ!』

 『了解!!』


 ヘッジ1の掛け声と共に、ケーファー部隊が突撃を敢行した。


 『て、敵のVDです!』

 『馬鹿な!? 同盟軍がVDを開発したなんて、聞いてないぞ!!』

 ゴブルたちは必死に応戦する。


 しかし、ケーファーは左腕の防弾シールドを構えつつ、76mmサブマシンガンや、120mmアサルトライフルを発砲する。

 その銃弾を浴び、斃れるゴブル。


 また、別のゴブルの懐に飛び込んだケーファーは武器を白兵戦用アサルトナイフに持ち替えると、勢いに任せてコックピット付近に突き立てる。

 隙間から鮮血とオイルが混じった飛沫が飛び出し、ゴブルは沈黙した。


 『くそったれ!』

 モール1がやけくそにライフルを撃つ。

 『大皇帝、ばんざーい!』

 死を覚悟した叫びが終わった途端、ヘッジ3の狙撃が彼を絶命させた。

 『敵部隊の撃破を確認!』

 『みんな、この勝利こそ、我が同盟軍の反撃の狼煙だ!!』

 この日、アムレイシア自由同盟は初めての勝利を手にした。


 コロナクリスタル、それは新たな恵みと同時に、争いをもたらした太陽からの贈り物。

 その占有権を掲げる大カスバニオン帝国と、平和的な利用法を模索しつつ帝国の蹂躙を阻止するために立ち上がったアムレイシア自由同盟。

 国の威信と繁栄をかけたゼロサムゲームは、二人のエースが現れることにより、大きく動き出そうとしていた。

連続投稿です。

次回からは物語が本格的に始動しますよ!!

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