枝垂れ桜と藤棚
本作品は、作者が少しずつ書き足していく未完成品です。完成を目標に頑張ります。
人によっては受け付けない死体描写やホラー要素もあります。ハッピー要素はほぼゼロです。
ほぼ地文で構成されています。
外ではしんしんと雪が降っていた。カーテンの隙間から覗く白雪は陽を照らし、薄暗い部屋を照らしている。
何も考えず、手の内にある冷め切ったコーヒーを見つめ続けてどれくらいがたったのだろうか。本人には知るよしもないだろう。そうしてただただ時間を過ごしていく。
【白雪】
そもそも彼は家にいる時間が勿体無いと感じる性格であった。仕事が終われば、友人を誘い夕食を共にしたり、休日であれば家の事を午前中に済ませ、これと言った用事も無くただ外をふらつくのを好んでいた。
春になれば、彼の好きな花や草木がめぶき、カメラを持って毎週の如く、刹那に咲く花を写真に納めていた。
そんな春を待ち遠しく感じるなごり雪の季節。今年は恋人と藤棚や枝垂れ桜を見に行こうと約束した矢先、恋人は死んだ。自宅で首を括っていたのを恋人の母親が見つけた。死後1週間だったという。暖房で暖まった部屋では美しく整った顔も形を留めておらず、温かく自分を包んでくれたその身体からは深い闇夜の様な黒い液体が流れてたという。
最愛の人が亡くなった。まるで自分の大事な何かが欠けて落ちたようであった。とてつもない虚無感が自我を襲い、仕事にも手をつけられず、ただただ外に降る白雪を眺めて時を惰性に過ごしていた。
【枝垂れ桜】
雪も解け、春の暖かな風が吹き始めた頃。
ふと、近所の神社の石段にある立派な枝垂れ桜があるのを思い出した。