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白詰草を運ぶ者

作者: 枯らす衝撃

その日も この日も 雨の日も 風の日も 晴れの日も 曇りの日も 悲しい日も 楽しい日も 幸せな日も…それは…どんな日もそこに置いてあった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


よつばの だれかさんへ


わたしは、望月葵…も、ち、づ、き、あ、お、い、…というなまえです。


あなたは?…きみは?…いったいだれなの?


どうして、まいにち よつばのクローバーをげんかんまえに、おいていくのですか?


うれしいけど だれかわからないと すこしこわいかな?


でも…ほんとうに…ありがと。



もちづき あおい より


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



そう、手紙を玄関前に置いて私は東京美術大学に出かけた。


玄関の外は、暖かい光が差し込んでいて、私は日課のように空を見上げる。


本日も…気持ちの良い青空!


えーと…今日は何処に…


葵(…発見!…可愛い四つ葉のクローバー)


今日は、室外機の上に置いてあるのね…。


私は、黒色の絵が入る手提げ袋の中から 一冊のノートを取り出すと、四つ葉のクローバーを大切に挟み込んだ。


クローバーを押し花にするために買った ボタン止めの青いノートはすでに6冊目だ。


ふと 腕時計を見ると 時計の秒針は私の焦りを読み取ったかのように忙しなく時を刻んでいる。


葵(急がないと…)


私は、一年前に新潟から上京してきた美術大学生、名は望月葵もちづきあおい19歳。現在は東京駅から徒歩15分の木造アパートに住んでいる。


本当は友達みたいにオートロックマンションとかに住みたかったけど…ま、経済的に無理無理です。


葵(…レトロで雰囲気の良い住まい!でしょ!葵!)


毎日、朝は慌ただしく学校に行っているから気がつかなかったけど、いつの日からか 四葉のクローバーが

玄関先に置かれている事に気がついたのです。


葵(だれかの悪戯なのかな…それとも…)


私は、歩きながらムフフとした非現実的な事を思い浮かべていた。


その妄想が頂点に達した瞬間 突然脳天をペシっと叩かれた。


…(よ!葵!お前遅刻すん…ぞ!!)


葵(練君!?)


オンボロママチャリをガニ股でのり、茶髪ユルパーヘアーの ミラクル自由人・戸田練とだれんが背を向けたまま右手を振ってバイバイしている姿が視界に入る!


葵(もう!毎朝 人の頭叩かないでよー!!)



練(葵〜!?)


葵(ッ何!?)


練(喜ぶなよ〜!…あとで…、ラ、、ス、いよー!)


葵(…えー?!何?)


ムッカー!!ちにみに、練は私の友達…ではない…知り合い?…と言うか、同じアパートの住人で、同じ大学に通う一学年上の意地悪先輩なのです。


大学では、ちょっとしたイケメンと女子達の中では言われているけど…私からすればアイツは…タコ…内面タコ!そうだ!アイツはタコ焼きみたいな男なのです!


まず、先週の水曜日!私がお風呂から出た時の事、、…


〜思い出し中〜


ドアをノックする音


葵(はーい!)


私はバスタオルを体に巻いて玄関ドアに近づき穴から外を確認する。


練(お前!何回呼ばせるんだよ!4回は呼んだぞ!)


葵(え!?練君?!あっ…今ね…)


練(ったく!いるんなら早く来いよな…入るぞ!!)


ガチャっとノブが回る!?ヤバ…鍵掛け忘れてるよ〜!!


葵(ちょっ!!)


っとまってー!っと言う前に勢いよくドアが開く!


練(よ!じゃますんぞ…おっ!こっちのほうが部屋広くねーかな!?)



練(なんだ、風呂入ってたのか。あんさ!冷凍タコ焼き買ったんだけどさ…ソースが入ってねーのな!やっぱ、北の屋スーパーって安いけどマジ使えねーよな!ってか、ソースどこ?)


葵(…えっと…冷蔵庫の中…)


練(おい、葵!ソースのお礼にタコ焼き食べさせてやるから着替えて、そこ座れよ)


葵(…あ…あぁりがとう…?)


練(レンジ借りんぞ!…)


練(なあ!葵…)


葵(ん?)


練(お前、そのまま顔だけ右向いて…)


葵(こっこう?)


練(あぁ!そこ、そこでいい!そのまま俺の質問に一つだけ答えろ!タコ焼きあげるから!)


葵(なんで?…何でこの体勢で…き…着替えてからじゃ)


練(動くな!!)


…はい…


練(あのさ…100年後には、今生きてる奴らってみんな…てか、俺らも含め消えちゃうじゃん!?)


葵(れ、練君…突然どうしたの?)


練(いや、センコーから聞いて俺なりに考えた訳さ…そんで…お前に質問な!)


葵(ん〜よく分からないけど…どうぞ…)


練(…願い事とかさ…奇跡とかって、スゲー現実的じゃ無くてさ…形もなければ、約束された答えもないだろ?)


葵(…願い事か…私、難しい事は分からないけど、叶えるために願い事ってするんだよね?)


練(…叶えるために…か…)


葵(うん。最近ね、朝に…)


練(よし!また明日な!タコ焼き全部食っていいぞ!)


練(あ!あまり食べ過ぎるとタコ娘になるから注意しろよ〜)


…え…


バタン!


〜現実に戻る〜


あのタコ焼き男は、何かしら私の部屋に来ては 我が物顔で過ごしていくのです!


葵(この…タコ焼き男ー!!)


と…いいながら そのタコ焼き男を追いかけた事で遅刻をまのがれた私なのですが…。


…(んふふふ〜今日もギリギリセーフだね〜ア、オ、イ!)


葵(霧 おはよ!ふぅ〜本日もセーフ!アハハ)


霧こと霧島美香きりしまみかは私が上京して初めて友達になった同級生です。


バイトの無い日や、霧が彼氏と会わない日は、だいたい一緒に遊んでる気の合う子なのだ。


霧(今日も練先輩とラブラブ登校?フフ)


葵(ラブラブは余計!だって住んでるアパート同じだし!同じ大学なんだから…仕方ないでしょ!…)


霧(ふーん!?)


目を細めて霧が私を見ている…。


葵(だーかーらぁ!ホント…なんもないし…どうにかなりたいとも、思わないわ…)


葵(あんなタコ焼き男とは!!)


霧は目をパッとひらいてから笑いだした。


霧(タコ焼き男ってなんなの?)


私も霧の笑いがうつってしまい笑いだす。


葵(だってね!このまえね!!)


…(ごほん!)


葵(私がお風呂から出たときにさぁ!)


…(ごほん!!)


霧(…あおい…やば。先生きて…)

…る!が言えたか言えなかったのか?のタイミングで、大きな声が教室に響き渡った。


中年男の先生(望月さん!!霧島さん!!また!…また!…マタ!!アナタタチデスカ!!!)


私達は、ピシャっと立ち上がり頭を下げて謝る!


霧(ごんなさい!!古瀬先生…)葵(本当に!すみません!!)



古瀬栄蔵ふるせえいぞう私達の中での別名・うるせ〜ぞ!先生は、この美術大学で一番の天敵です。


女子トークを我慢出来ない私達二人を、目のかたきにしている鬼のような先生なのです。


古瀬(………。………。………。)


でた!なんかのクイズ番組司会者なみに長〜いガン見…。これを乗り越えれば…!!


私達二人も、反省した表情を演出し その先生の長〜いガン見状況に付き合う事に…もはや私達の瞳はチワワの瞳のように潤んでいる。


古瀬(………。……。)


クラスメイト達も…この見慣れた光景を観客として見守っているみたいだ。


古瀬(……ったく!。はーい!授業を始める!!)


その声を聞いて、私と霧は 小さく笑い目を合わせて眉毛をクネっと持ち上げてから着席した。


お互い、小さく長い溜息をフーっと吐きながら…


古瀬は、教卓に資料を置いて黒板を向くと、何かを思い出したかの様に、手を叩いて こちらに振り向く。


古瀬(あぁ!そうだった!あれだ…この授業が終わったらな、皆んな一階のエントランスに行くといい、二年生のコンクール予選作品が展示され終わる頃だからな!)


そう言うと、古瀬先生は気のせいかもしれないけど私を見て…一瞬笑った。


古瀬(えーと、それでは教科書124頁 色の効果について……)


よく怒られる私達ですが、美術大学には なんとなく入ったわけではありません。

霧は、イラストレーターとして、私は…絵を使った新しい何かを手にしたい為に 美術大学を選んだのです。


その後、古瀬先生の授業をしっかりと聞いた事は言うまでもありません!…



……きて

…お…て

…もう…


霧(おきなさい!葵!!)


葵(え!…何?…あれ?!)


霧(まったく…葵ったら黒板見ながら半目で寝てるんだもん!)


葵(ごめん…昨夜のバイトがひびいたのかも…)


霧(バイト遅かったの?)


葵(うん…終わったの二時だったから…)


霧(居酒屋さんだもんね…)



霧(そだ!うるせ〜ぞ先生が先輩の作品見とけっていってたし見にいこうよ!)


葵(はーい!)


エントランスは私達の教室を出て左に真っ直ぐ歩けばあります。ガラス張りの吹き抜けの空間が太陽の光をこれでもかー!っと集めていて、日中は照明の光がまったくいらないほと明るいのです。


美大生が軽食をとるときは、エントランス中央にある大きな噴水まわりで、何かしら展示がされるときも ここでやります。


私がこの美術大学を選んだ理由の一つでもあり、自慢のエントランスなのです!


エントランスに着くと、多くの生徒達が集まり美術館のようになっていた。


私達は人混みの中をすり抜けながら作品を見てまわる。


霧(すごいね!先輩達ってやっぱり上手!)


葵(うん…私達もこんな絵かけるようになるのか不安なくらいだよね…)


霧(ねえ!あそこの絵見て…凄い人が集まってるよ)


霧が指差す先を見ると、そこには先生達もちらほら集まり その一枚の絵を見ている。


葵(凄い人混みだね〜)


霧(葵!いくよ!!)


霧は私の手を握ると人混みを掻き分け絵の最前列に押し入る。


霧(ちょっ!すみません…あっ。失礼します!)

葵(ごめんなさい!失礼します!)


私達が展示してある絵に顔を上げたとき…私の心臓は止まってしまいました。

いえ…止まったら死んでしまうので…なんというか…その絵を見たときに…


時が止まった!!


だってその絵は…


霧(これって…葵?)

葵(!!…)


その絵は…かなり美人過ぎる女の人が描かれていて…現実の私からは かけ離れた存在でありながら…たぶん…私!?だったのです…。


葵(そんな、こんな事…でも…ありえないよ!!たぶん違うと思うよ!)


霧(ううん…これ…、葵だよ…そこ見てみなよ)


霧は、なんだか興奮した笑顔で指をさした。

そこには作品タイトルと名前が小さく書かれていた


葵(作品名.願い。…ren)


葵(練君?…これ練君の作品だ!!)


私は、たぶん真っ赤な顔になっている…それでも…私は練君の作品を見つめた。


葵(あ…。)

そういう事だったのか…


練君の描いた、美人過ぎる私の髪には緑色の四葉のクローバーが耳元に描かれていた…。


…(よ!葵…)


私の名前を呼ぶ声を探すと、そこには練君が赤い顔をして笑顔で立っていた。



練(やべ…バレたよな?いや!ばれるように描いたけどさ…だってこの草って………願い事…叶うんだろ!?)


その土汚れた手には、小さく可愛い四葉のクローバーが握られていた。



おわり







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