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ボクの彼女は能力者!  作者: タコ
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第4話 黒猫救出作戦 part2

 少し話しすぎてしまったようだ。急がないとまた同じ事の繰り返しになってしまう(ボクにとっては初めてだが)。ということで、ボクらは急ぎ足で事故現場となる筈の交差点に向かう。


「夢香はタイムリープができること…受け入れられたの?」


 道中、ボクはこんなことを聞いてみた。別に今聞かなくてもよい事かも知れなかったが、初のタイムリープにしてはやけに飲み込みが早いように感じたからな。


「うーん、タイムリープが出来る…なんて普通なら信じないけどさ、実際に自分がこんな目に遭ってるんだし信じるしかないよね。もしかしたらこれは夢の中の話かも知れないけれど…でもね」


 夢香は一呼吸置いて続ける。


「この力で…救えなかった人を救えるのなら…素敵かなって」


「…そうだな」


 確かにそれが実現するとしたらとても素敵な事だろう。そして多分…夢香はそれを実現させる事ができる。…どうしてだろう。妙な胸騒ぎがする。いや、理由は分かっていた。夢香には救いたい人がいる。彼女は、その人を救う事を選ぶのだろうか。

 いや、今はそんなの関係無い。考えるのはやめだ。とりあえずは黒猫を救ってやらないとな。


 例の交差点に辿り着いた。そしてその中央には既に黒猫がいた。すぐに軽トラが突っ込んでくるはずだ。


「ねえ、どうするの?」


「軽トラが来る前にボクが黒猫を無理矢理捕まえて軽トラを回避する。正直荒い方法だし、猫アレルギーだから気は進まないが…やるしかないな」


 というか、そもそも猫アレルギーとかではなく猫自体が少し苦手だ。まあ苦手な理由は幼少期に猫に攻撃されたからなのだが…。でもこんな状況でそんな贅沢な事を言えるわけもない。


「ごめん…私、何もできなくて」


「何言ってんだよ。夢香がいなかったらここに戻ってくる事は出来なかったんだし…それにいてくれるだけで心強いしな」


「…うん…」


 夢香は少し嬉しそうに表情を緩ませる。ボクにしてやれるのは夢香を笑顔にさせてやること…。

 

「よし…」


 ボクは覚悟を決めて大きく息を吐き出すと、黒猫のいる道路に向かって駆け出した。まだエンジン音は聞こえない。これならとっとと捕まえて道路から離れればOK…のはずだった。

 この黒猫、予想以上に人嫌いらしい。ボクが捕まえようとしても腕の間を上手くすり抜けてしまう。ここで素直に逃げてくれれば良いのだが、何故か道路上に居座ってしまう。こいつ…もしかしてボクをからかっているんじゃ…?こんな時に…

 そんな感じでなかなか黒猫を捕まえられずにもたもたして、ようやく暴れまくる黒猫を捕まえた時だった。


「危ない!」


 突然、夢香の叫び声が聞こえたと思えば、直後にけたたましい音が辺りに響く。この音は…ブレーキ音?

 振り返ると、ボクの目の前には軽トラと…そして、腕を大きく広げて軽トラの前に立ち塞がる夢香がいた。

 どうやら黒猫を捕まえるのに夢中で軽トラに全く気付いていなかったらしい。ボクと軽トラの距離はほぼ2m。後ちょっとで撥ねられる所だった…。途端に体から血の気が引いていく。


「おいゴラ、危ねえだろうがクソガキ!」


 軽トラのドアが開くと、サングラスを掛け煙草を吸っている、いかにもヤバそうな禿げたオッサンが出て来た。オッサンはボクと夢香を交互に鋭く睨みつけた。もしかしたら軽トラじゃなくてこの人に殺されるかもな。


「道路で遊ぶなって親から教わらなかったんか?え?」


「そちらこそ、こんな狭い道でスピード出したら危ないじゃないですか!」


 すかさず夢香が反論する。あんな強面の人相手によく反論できるな…。まあ、夢香は昔からそうだ。誰にでも優しい、けど間違った事はちゃんと間違っていると指摘する。危うさすら感じる真っ直ぐさ。

 ボクは黒猫を抱きかかえたまま立ち上がり、夢香とオッサンの間に割って入り、


「すみませんでした」


 と、頭を下げた。黒猫は救えたんだ。だったらもう余計な争いはしなくていいはずだ。

 夢香に目配せすると、ボクの言いたい事を察したのだろう。納得してはいないようだが、「すみませんでした…」と消え入りそうな声で謝り、頭を下げた。


「フン、まあええわ。こっちも急いでるしな…。ほら、さっさと帰れ帰れ」


 それだけ言うと、オッサンは再び軽トラに乗り込み、ボクらが道をどくと反省した様子も無く凄いスピードで走っていってしまった。


「…よし、黒猫救出作戦は終了だな。帰ろう」


「なんか…すっきりしない」


 夢香は不機嫌そうに呟く。どうしたもんかな…。こうなってしまった夢香は少々めんどくさい。ここも可愛い所ではあるんだけど…。


「ま、いいじゃないか。ほら、黒猫も救えたし目的は達成し…へ、へ、へっくしょい!」


 安心した途端に猫アレルギーの症状が出てしまった。早くこの猫に離れてもらいたいのだが、何故か懐いてしまったようで一向に離れる気配がない。


「アハッ、蓮くん鼻水垂れてるよ」


 さっきまで険しい表情だった夢香にようやく笑顔が戻った。理由がボクの情けない顔っていうのが少しアレだがまあボクは夢香が笑ってくれればそれでいいんだ。


「そういえばこの子、首輪ついてるね」


 きっと誰かに飼われているのだろうが…。それにしては随分汚い。


「どうしようか、このまま放したらまたどこかで事故に遭うかもしれないし…やけにボクに懐いてるし…」


「いっその事、飼ってみる?飼い主さんが見つかるまで」


「それは無理かな…。父さんも猫アレルギーだし、母さんは動物苦手だし…。妹は喜ぶと思うけど」


「そっか…じゃあ私の家で飼おうかな」


「大丈夫なのか?」


「うん!ママもパパも猫飼いたいって言ってたからね」


 そんなこんなで、野良猫にはそのまま『クロ』と名付けられ、咲花家に引き取られることとなった。これで黒猫救出作戦終了って事だな。やたらとボクに懐いてたせいで引きはがすのに苦労したけどね…。

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