侍と会談
やっぱり文字の数が少ないなぁ。
第6話です。どうぞ
シェリルに連れられてギルドの二階に上がった俺は、一番奥の豪華な部屋に通された。部屋には二つのソファーが向かい合って置かれていて、その間にはローテーブルが置かれている。ソファーは素材はわからないが、適度な弾力が心地良い。ローテーブルは、滑らかな木が使われていて、素人が見ても高そうに思える。ギルドマスターというのは意外と成金趣味なんだな。そんなことを考えていると、突然ドアが開いた。
「失礼する。はじめまして、君がtakaかね? 私がギルドマスターのメンフィだ。以後お見知り置きを」
そういって向かいのソファーに腰掛けた人は、先ほどの成金のイメージを一撃で木っ端微塵にした。まず、ハゲ。いや、スキンヘッドと言うべきなのか。そして、成金といえばデブ。なのに、このギルドマスターは、自分が棒切れに思える程体を鍛え抜いている。極めつけは、健康的を通り越すほどの色黒。日焼けサロンに行ってもこんなにこんがりとならねぇだろ。
あまりにもイメージと違いすぎて固まってしまった俺を見て、メンフィは少し困惑した顔を向けた。
「どうした? なにかまずいことでもあったのか?」
「あ、いえ……ただ、この部屋を見た限りはもう少し偉そうな人が出て来るのかと思ったもので」
「はっはっは、このギルドは本部の連中が建てたものなんだが、おかしな趣味のやつもいたものだ。こんな気色の悪い部屋は、俺も好かん。ただ、いちいち変えるのもめんどくさくてな、このままにしてあるだけだ。決して俺の趣味では無い」
「それは見ればわかります。……ところで、俺を呼んだ理由は?」
そう言うと、メンフィは真面目な顔をして話し始めた。
「君は……いや、君たちは、この街には流れ着いたらしいな」
「ええ。ただ、流れ着いたというのは少し違いますね。本当の所は、気がついたらこの街の近くにいた。というのが正確でしょうか」
「ふむ。実はな、君たちのことを本部に話したところ、他の街にも君たちのような者がいるようなのだ。気がついたらここにいた、というような者達がな」
「なっ! 本当ですか?」
「あぁ、様々なギルド支部から報告が来ている」
「まさか、俺たちだけじゃ無かったなんて」
彼の話によると、俺たちと同じように冒険者となって、モンスターを狩りまくっている奴や、工房を作って様々な開発をしている奴がいるらしい。
「そこで、ギルド本部から通達があった。君たちに王都に来て欲しいらしい」
「俺たちが王都に行ったとして、一体何があるんでしょうか?」
「それは俺にもわからん。が、おそらく酷な話では無いだろう。それに何かあったとしても、君たちなら逃げることなんて余裕なんだろう?」
「ええ、まぁそうですね」
「なら心配することは無い。むしろ君たちが本部を支配してしまわないかが心配だよ」
メンフィはそう言って笑うと、話は以上だと言って部屋から出て行った。残された俺は額に浮いた汗を拭った。あのおっさんは本物だと、直感が告げていた。
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次の日の朝、旅の準備を終えた俺たちは、朝一番に街を出た。
「それで? 結局どっちのルートで行くんだよ?」
カルマは朝が苦手なようで、目をショボショボさせながら聞いてくる。俺は昨日の晩に、ずっとどちらのルートから行くのがいいのか考えていたのだが、どっちも近いようでどっちも遠いように思えて来てしまい、結局考えが纏まらなかったのだ。
「あぁ、ずっと考えてたんだが、なんだかどっちでも良くなってきてな。だから、両方から行こうと思う」
俺の発言にさすがのメンバーも意味を理解できなかった。
「……taka、よく意味が、わからない……」
「今から説明するから。まずどちらもほとんど同じくらいの時間。正確には約5日程かかるらしい。どっちも同じ時間なら好きな方から行けばいいんじゃ無いかと思ってな」
「つまり、各々好きな方の道を選べと、そういうことですか?」
「あぁ、そういうことだ」
そう告げるとみんなは、少しの間考えていたようだが、すぐに決めたようだ。
「よし、それじゃあ。陸路から行く奴は俺の右側に。海路から行く奴は俺の左に立ってくれ」
俺の右側。つまり陸路から行くのはタケユとヨシとカミルの3人。俺の左側。つまり海路から行くのはカルマ、アリス、kanna、コトコト、ミョウの5人だ。
「takaはどっちから行くの?」
「俺は陸路から行く。船は嫌いなんだ。……まぁ、いい感じに分かれられたんじゃ無いか? 俺とカルマは離れたし、タケユとコトコトも分かれたから、パーティーとしてのバランスはいいしな」
「うん。そーだねぇ。でも、歩くのは疲れそうだなぁ」
「あぁ、陸路は馬で行くよ。馬に乗っても5日はかかるんだ。この世界も思ったより広いんだな」
この大陸は結構大きい。俺たちが今いるナイレは、マーシャ国といって、王による政治が行われている国の中にある。他にも、五つ程国があるらしく、その中にはエルフの国もあるらしい。また、国として扱われるコトは少ないが、獣人とドワーフが共存している山があり、亜人国と呼ばれている。
「とりあえず、俺たちは馬を買ってから出発だから。そっちは先に行っとけよ。」
「わかりました。道中で死ぬことの無いようにお願いしますよ」
そんな冗談を口にすると、コトコトを先頭に5人が街を出て行った。
「……さて、俺たちもすぐに行こう」
ありがとうございました。