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侍と苦戦

第6話です。


よろしくお願いします



「チッ、雑魚のクセに群れやがって。狼なら一匹狼で生きて行けよ、雑魚がぁ!」


カルマが暴れている。自分がピンチの状況じゃないと燃えないカルマは、苛立ちながら剣を振り回している。カルマは、両刃の長剣を武器として戦う、剣士と呼ばれる職業だ。まったく、カルマのせいで私には全然敵が回ってこない。久々に暴れられると思ったのに


「……興ざめ……」


私は、飛びかかって来た1匹の首筋に短剣の刃を突き刺して呟く。後ろでは、タケユとミョウとkannaが暇そうにおしゃべりしている。……少しは働いてよ。私は2匹の狼の後ろから、両手の短剣を背中に突き刺した。私は、カルマみたいに戦いが好きなわけではない。極力、自分が傷つくのは避けたいから、安全に、一撃で、敵を仕留めて行く。


「お前で……終わりだぁ!」


カルマが長剣で狼を切り上げる。宙に飛んだ狼を蹴り飛ばしてカルマはミョウに聞く。


「おい、ミョウ。今のでクエストは終わりか?」


「うん。ヘビーウルフの討伐。50体目がさっきのだよ」


私たちは、最近増えて来たヘビーウルフの討伐クエストを受けた。もう少し時間がかかるかと思ってたけど、群れで一斉に襲いかかってきたからすぐに50体に達した。普通ヘビーウルフは、この辺りには出ないはず。異世界に飛ばされた影響で、何かがおかしくなっているのかな。夢に出てきた女の人は私たちにしか出来ないことなんて言ってたけど、そんなことは関係ない。私はこの世界で、少しでも静かに暮らせればそれでいい。


「さて、それじゃあ帰ろっか!」


タケユが元気に言う。タケユは私とは違って、いつも楽しそうに笑っている。正直、なにが楽しいのか私には理解出来ないけど、タケユの笑顔は私の気持ちを落ち着けてくれるから、好き。

私たちはクエストの報告のため、ギルドに戻ろうとする。そのとき、森の方から何かが走って来るのが見えた。みんなも気づいたみたいで、警戒の色が顔に浮かぶ。近づいてきたのは、ヘビーウルフと同じでここには出て来るはずのない、シャドウホースだった。


「おいおい、なんちゅう数のシャドウホースがいるんだ」


kannaが焦ったように呟く。ざっと50体は超えているだろう。これの相手は、私とカルマだけでは厳しい。takaとカミルが必要になるかもしれない。タケユもそう思ったのか、すぐにtakaにコールする。


「ククク、いいじゃねぇかいいじゃねぇか。血が滾ってくるのを感じるぜぇ。これは俺への挑戦でいいのかザコ馬? ぶっ殺してやるぜぇ!」


カルマが駆け出して行く。さすがに1人では苦しい。シャドウホースは攻撃が強いわけではないが、異常な耐久力とスピードが自慢のモンスター。パワータイプのカルマとは相性が悪い。


「ミョウ、kanna、すぐに街に戻って。ギルドの女の人にこの話をしておいて。私とカルマで、takaが来るまでの間は保たせておくから」


「わかった!」


ミョウとkannaが走っていく。久々に、私も本気。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



宿屋にたどり着きそうなとき、タケユからコールがかかってきた。随分焦った様子だったが、事情を聞くと同時に3人に指示を出す。


「カミル! 俺と一緒にタケユたちの所に行くぞ。シャドウホースが出たらしい。ポーションは用意出来てるか?」


「昨日のうちに結構な数は生産出来てる。質は高くはないけど、数でカバーできるよ」


「コトコト! ヨシ! 2人はすぐにギルドに行って、この話を伝えてこい!」


「わ、わかった」


俺とカミルはすぐに町の外へ向かった。



俺がタケユの元に到着した時、すでにカルマとアリスは戦っていた。


「俺もすぐ行く。タケユは回復魔法を頼む。カミルはポーションで補助を頼む」


俺は、神速というスキルと抜刀術を併用して、三体のシャドウホースを切り倒して、2人に近寄る。


「俺とカルマで数を減らしつつヘイトを稼ぐ! アリスは俺たちの死角から襲ってくるシャドウホースを頼む!」


2人が頷くのを確認する間も無く、敵は襲いかかってくる。突っ込んできた一体を、居合切りで胴体と首を切り離す。後ろから来た馬を蹴りでいなして、他の馬にぶつける。左右から襲い来る馬を回転しながら飛んで、刀で切りつける。着地をする前に馬が突っ込んでくる。ガードを構えたが、アリスが飛び込んで来て短剣で首を突き刺して倒す。


「まだまだ来る…油断しちゃダメ……」


そう呟くと、すぐに気配を消す。もう一度気を引き締め直し、馬の群れに向かい合う。右から二体、左から一体こちらに襲いかかってくる。左の一体を切り払った後、真上に跳んで一体の突進を避ける。着地と同時に回転して、二体の足を切る。まだ15体ほど残っている。俺は刀を鞘に収め、構える。


「烈炎流抜刀術・灼血 劫火!」


俺の声とともに刀に炎を纏わせる。馬がいななき、全ての馬が突っ込んでくる。最前列の馬が俺の間合い半径1mに入った瞬間、抜刀する。炎が激しく燃え広がり、突っ込んできた全ての馬を飲み込む。炎が消えた時に残っていたのは、黒く焦げた地面だけだった。


「さてさて、カルマの方はどうかな」



カルマは楽しんでいた。馬の突撃をもろにくらい、あばらが折れて血を吐きながらも、馬を切り刻んで行く。残りは後六体。一体が頭を低くして突っ込んでくる。その鼻っ柱に剣を突きつける。剣は頭を貫いて馬は息絶える。後ろから二体同時に突っ込んでくるが、剣を引き抜き、その勢いで振り向いて二体共々切り伏せる。残り三体。右から襲いかかる馬を避けて背中に飛び乗り、首を切り飛ばす。残りの二体が同時に襲ってくるが、剣のスキルを使って切る。が一体を切り損ねて、正面から突進を食らう。


「ぐはぁ! ……ククク、いーねー。盛り上がるねぇ!」


振り向いて、再度向かってくる馬に自ら走って行き、スライディング。足の間を滑りながら胴体に剣を突きつける。馬は最期の叫びをあげて倒れる。


「クハハハハ! 楽しかったぜ! 弱いなりに楽しませてくれたな。今日の酒は美味いぜ」


剣を収めて、こちらを見つめる四人の下へ向かう。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「しっかし、シャドウホースがあの量の群れで出てくるとは。やはりゲームとは色々変わってるみたいだな」


俺は四人と話しながらギルドに向かって歩いていく。


「うん。やっぱり異世界に飛んだからなのかなぁ?」


「どっちでもいいぜ。あんなに楽しませてくれたんだ。これからはどんなピンチが襲いかかって来るのか、考えただけでアドレナリンが吹き出しまくるぜ」


「もー。いっぱい怪我したんだよ? もし死んじゃったら私、泣くからね! ほんとに泣くからね!」


タケユは本当に目に涙を溜めてカルマに怒っている。カルマも女の子の涙には弱いのか、タジタジしながら謝っている。


「……でも、あの量は、異常……」


アリスが呟いた。


「確かに。しかし今は考えていても仕方ないでしょう。門番やギルドの方に聞いて、情報を集めてみますか?」


「うーん……そうだな。王都に行くには陸路も海路もだいたい一週間はかかるらしいしな。あと1日だけここにいて、情報と装備を集めてから王都に向かおう」


俺はそういうとギルドの中に入って行く。先に戻っていた四人は真ん中の席で、シェリルと一緒に待っていた。俺たちを見つけるとすぐに駆け寄って来た。


「taka! 大丈夫だったか?」


「あぁ、シャドウホースごときには負けるわけねぇよ」


「それはそうだけど、死んだら死に戻りなんてできずに死んじまうって考えたらもう落ち着いてられなかったんだよ」


「まぁまぁ、シェリル。このあたりには元々ヘビーウルフやシャドウホースは生息しているのか?」


「いえ、この街にはもうずいぶんとそういった強力なモンスターは目撃情報がありません。こんなことは異例の事態です。ギルドとしても感謝しています。ありがとうございます」


「モンスターがいれば討伐するのが冒険者の仕事だ、気にすることは無い。ただこの辺りにももう少し戦力が必要だな。王都や大きな街から増援は来ないのか?」


「ギルドマスターがギルド本部に報告を行って、戦力の増強を申し出ている所です。ただ、最近他の街でも強力なモンスターが増えて来たらしく、ギルド本部も現状を把握できていないようです」


「そうか、気をつけろよ」


「はい、それで少しでも情報が欲しいらしく、takaさんに一度ギルドマスターとお話しをしていただけないでしょうか?」


「はぁ……めんどくさいのは嫌いなんだが。みんなは街で水や食料。その他必要なものを集めてくれ。明日、王都に向かう。俺は今からお偉いさんと話し合いだ」


みんなは、ぞろぞろと町の中央へ向かって行った。あとは陸路か海路か、どっちから行くか考えないとな


「それじゃあ、ギルドマスターの所に連れてってくれ」

ありがとうございました。


タイトルのように、もっと苦戦するはずだったのに、普通に勝ってしまった。

カルマは中々な戦闘狂ですね。

タケユの活躍はもう少し後になりそうです。

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