侍と夢の女
こんばんわ。
今日から四日間、勉強会に参加させられたので、テンションだだ下がりな私です。
第3話、どうぞ。
俺は、狼の群れに向かって、魔法を使った。
「くらいやがれ。炎龍」
龍の形をかたどった炎が群れの中央を貫いた。その後には炎の壁ができ、群れを二分する。
「カルマ。右側はお前がやれ。左は俺がやる」
「左の方が多い。お前が右に行け」
そういって、返事も聞かずに左に駆け出して行く。別にどっちでもいいんだがな。そう思いながら、右側に顔を向ける。狼たちは炎を恐れているのか、あまり突っ込んでこなくなった。俺は刀に手を掛けながら狼たちへ歩いていく。
一番前にいた狼が俺に向かって飛びかかってくる。それを居合切りで一刀両断する。そして一気に3匹が飛びかかって来るのを見て、俺は刀を鞘に収め直し
「烈炎流抜刀術・風波」
そう呟いた直後、刀を振り切る。刀から空気の刃が飛び出し、3匹のうち2匹を両断する。かろうじてまぬがれた1匹も掌底で顎を撃ち抜く。顎を打たれた狼は、遠くに飛んでいく。後ろから1匹飛びかかって見たのを確認すると、半回転しながら狼を避け、抜刀して胴体を綺麗に切断する。血が吹き出しているが、そんなことに構ってる暇は無い。飛びかかってこないのは、近づくと切られると野生ながらに感じたからなのか。まぁ、どちらにせよ関係無いが。
「烈炎流抜刀術・灼血」
刀に炎を纏わせ、狼を2匹同時に切る。1匹は浅かったのか後ろに下がって行ったが、傷口が発火して一瞬で火だるまになる。残りは6匹か。抜刀術にも何も変化は無かったのであとは魔法で一掃する。っと、1匹飛びかかって来たのでカウンターで後ろ回し蹴りを食らわせる。首に当てたのでおそらく死んだだろう。残りの5匹が全方向から同時に襲いかかるがすでに遅い。
「これで終わりだ。風陣槍」
魔法を発動すると、俺の周りから全方向に風の槍が発生して、狼を串刺しにする。すぐに地面に落ちるが、5匹とも動かない。全て倒したのを確認すると、カルマの方に目を向ける。あっちもすでに最後の1匹だった。めんどくさかったのか、長剣を鞘に収めて、強烈なパンチで狼を吹っ飛ばした。
「……終わったか?」
「あぁ、少なくとも襲って来た犬っころは全部ぶっ殺したな」
周りを警戒し直すが、別段モンスターはいない。遠くでウサギが走り回ってるだけだ。
「よし、ひとまず街に戻るか。しっかしなんでこんな所にヘビーウルフが……?」
考えるが、何も手がかりがない今は考えても無駄だと気づいて、さっさと街に帰る。
「おう。モンスター共はどうだった。強くなってたりしたか?」
街に戻ると、すでにコトコト達は酒場で酒を飲んでた。……本当に街中の調査に行ったなだろうな?
「あぁ。別段強くなったりはしてなかった。だが、宵闇の森にしかいないはずのヘビーウルフが群れで襲って来やがった」
「ヘビーウルフ? なんでそんなやつがここにいるんだよ?」
「んなもん俺に聞かれても知らないっつーの。それより、街の方はどうだ? なんか変わったもんはあったか?」
「変わったも何も、おかしい所だらけだよ」
そういってめんどくさそうにメガネを直したカミルは、説明を始めた。
「まず、NPCがおかしいんだよ。普通の人のようにご近所さんと仲良く話してる主婦や、俺たちに話しかけてくる武器屋のおやじに、犬まで自由に走り回ってたよ。それに、ゲームの時と違って、見たことの無い建物が色々とあった。商業ギルドや冒険者ギルド、娼館もあったぞ。それに話を聞いてたら行商人なんてものまでこの街に来ることがあるらしい。訳わからなくなるよ、まったく」
カミルはストレスが溜まってるのか、しきりにメガネをずり上げている。そこで、俺は当分の予定を立ててみた。
「とりあえず今日は休もう。宿屋で3部屋借りれば行けるだろう。金はある程度あるしな。明日は冒険者ギルドに行って、話を聞いて見る。それから、クエストを受ける班と、街を詳しく探索する班に分かれて別行動にしよう。……ひとまずはこんな感じでどうだ?」
みんなは、口々に賛同の声を上げる。
「よし、それじゃあ宿屋に行こう。部屋割りは適当に決めよう。女の子は2人で一部屋な」
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その日の夜、俺はおかしな夢を見た。
真っ白な何も無い空間に俺ともう一人。白い翼が生えた綺麗な女性が向かい合って立っている。
「あなたは、元いた世界とは違う世界にいます。この世界であなた達は、あなた達にしかできないことを成し遂げてもらいます。この世界には、ゲームには居なかったモンスターも出て来ますし、その強さも別物です。それにこの世界で死ぬと元いた世界でも死を迎えることになります」
その女性は、ゆったりとした口調で、しかし淡々と話を続けて行く。質問をしようと思ったが、口は動くのに声が出ない。そんな俺を見た女性が説明してくれる。
「残念ですが、ここであなたは話すことができません。ただ、私の話を聞くことしかできないのです。私があなた達を呼んだのは、あなた達が最も成し遂げられる可能性が高いからです。何を頼むかはまだ言えません。またいつか、そう遠くないうちに私はまた現れます。その時は、必ずお話ししましょう。それでは」
自分の言いたいことを言い終えると、その女性は消えて行った。それと同時に真っ白な世界は、黒く染められていく。その光景を眺めながら、俺は意識を手離した。
ありがとうございました。
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takaは私の好きなアニメがイメージになっています。