侍と狼
1話で週一投稿って言いましたが、あれは遅くてもということにします笑
一週間以内には、次の話を投稿しますのでよろしくです!
では、第2話どうぞ
「とりあえず、今後どうするかを考えよう」
俺たちは門番に謝ったあと、近くにあった酒場に入って、円卓を囲んで相談していた。
おそらく俺たちは、異世界に飛ばされてしまったんだろう。まぁそれはいい。別に元の世界が大好きなわけでは無い。むしろ、こんな世界は滅んでしまえばいいなんて考えていたんだ。異世界なんて突拍子もない世界でも、受け入れようじゃないか。開き直った俺は、みんなに聞いてみた。
「どうするもクソも。元の世界でもこの異世界でも、やることは変わらねぇだろう? 生きて行くんだよ。しぶとくしぶとく、な」
そういって俺を睨むのは、カルマだ。今は上半身の鎧を外して、インナーに着替えているこいつは、いわゆる戦闘狂だ。自分が負けそうな強敵や、大量の敵に囲まれると、異常なまでの笑みを浮かべながら敵を切り刻んで行く。そんなカルマを、俺の隣に座っているコトコトが嗜める。
「そんなことわかってるよ。ひとまず、現状を確認しようってtakaは言ってるんだよ」
「そうだぜ。今はデスゲームになった可能性もあるんだから、無闇に敵に向かって行って、死んぢまったらせっかくの異世界を楽しめずに終わりだぜ?」
そう言って笑い声をあげたのは、kannaだ。彼は、大工として活躍していた。他のゲームとは違い、FWはリアルを追い求めた結果、新たにギルドのホームを作ったり、街道を整備したりするのは、スキルやゲームのシステムではなく、プレイヤーが自分で建てたりしなくてはならなかった。そんなゲームで、kannaのような大工は重宝されたのだ。
「……私は…死にたくないよ」
そう言ってカルマを見たのは、アリスだ。見た目はゴスロリっぽいファッションが好きな、可愛らしくて巨乳の女の子だが、いざ戦闘になると、とんでもなく強い。なんせ戦闘職ランキングでは俺よりも上の3位なのだ。ちなみにカルマは、戦闘狂らしく1位である。
「まぁまぁ。そんなにも悲観的に捉えなくてもいいんじゃないか?」
場を落ち着かせたのは、ミョウだ。ゲームを始めた当初は、暗殺などを主にしていた戦闘職だったが、途中で料理スキルを身につけて、料理屋を出して、大繁盛させていた。ミュウは続けて言った
「当分の間はこの街でゆっくりしながら、様々な可能性を潰して行けばいいんだよ。そしたら最後に残るのは当然…」
「今の現状を示している。ってことか」
ミュウの言葉に続いた俺は、俺たちの武器を作ってくれるメンバー、カミルに話を振った。
「ところで、全員ステータスや装備。所持金なんかに変化はないのか?」
「みんな変化は無いみたいだね。だけど、君たちの装備を整備するだけの道具が今、手元に無いんだよ。だから、普段は手持ちの中で最弱の装備をつけといて、いざって時だけ最強装備を使ってね」
俺たちは全員が普通では無い、少し変わった武器を使っているから、それを作ったり整備するカミルは大変だな。
「あ、でもギルドに預けてた金が無くなってるんだが。いったん全員の所持金を確認してみよう」
そういったのは、俺たちの防具を作ってくれるヨシだ。ヨシは俺のリアルの友達で、このFWに誘ってくれた恩人だ。とりあえず全員の所持金を足してみたところ、17万Gだった。これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは、本人次第だが、俺たちのギルドは生産職が多いため、素材を買う為にバンバン金が飛んで行くのだ。
「……ひとまずは市場の相場でも調べてこいよ。その間に戦闘職はモンスター共に変化が無いか確認してくるからよ」
そういって、俺とカルマとアリスとタケユが門の外に、コトコトとミョウとカミルとkannaとヨシは街の探索に出かけて行った。
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俺は、4人で始まりの平原へ向かった。
「なーんで始まりの街なんてところに出ちまったかなぁ。もっとアドレナリンが噴き出すような場所に出たかったぜ」
カルマがそんな愚痴をこぼしながら、スライムを一撃でぶった切っていた。
「武器使ったら誤差とかわかんねぇだろ。素手で行けよ素手で」
俺はそう言いながら、ワーラビットを蹴っ飛ばす。が、やはり一撃で死んでしまう。ワーラビットはゲームのように素材を残して消えたりせずに、そのままそこに残っている。首を蹴ってしまったのか、ピクピクと痙攣している。
うーむ……やはり生き物を殺していい気分はしないな。まぁ、気にせず着々と殺して行くのだが……
「でもね、倒しても残るっていうことは、やっぱりゲームじゃない所に来ちゃったんだよね?」
今更だが、タケユが確認してくる。やはり、多少なりとも不安はあるのだろう。もちろん俺も不安が無いわけでは無い。現実の俺がどうなってるのかも気になるし、ここで死んだ場合どうなるのかもわからない。正直、不安だらけだ。かといって、止まり続けるわけにもいかない。腹が減って来てるから何か食べないといけないし、お金も何かと必要だろう。物事は最悪の場合を想定して動くべきなのである。
「……でも、このへんでは、私たちの敵にはならないのはわかった。やっぱり、モンスターは、変化がない……」
アリスが呟く。周りをみても、カルマがバッタバッタとスライムやワーラビットを切り倒しているが、全て一撃で終わってしまう。あまり変化がないのも事実だろう。そう思い、俺は街に戻ろうと提案しようとしたその時
「ね、ねぇ。あれって平原には出ないはずだよね?」
タケユが指差す方向を見ると、ヘビーウルフが群れでこちらに走って来ている。その量は恐らく30は下らないだろう。ヘビーウルフは第二の街・リシウムの近くにある、宵闇の森に出てくるモンスターで始まりの街には出現しないはずだ。だが、あの狼の群れは間違いなくヘビーウルフだ。
「おいおい、どうなってんだよ」
「ククク、関係ねぇだろ。突っ込んでくる敵は1匹残さず皆殺しだよ。いくぞ、taka」
「はぁ、タケユとアリスはとりあえず周りを警戒しといてくれ。もしかしたら、想定外の自体はまだ起こるかもしれない」
「うん。わかった。……死んだりしないよね?」
「俺とカルマがそうそう死ぬわけないだろ」
そういって微笑むと、タケユは安心したように笑顔を浮かべる。アリスは無言で頷いている。
「さぁて、弱いもんいじめの始まりだぜ」
カルマはそういうと、舌なめずりをして走り出す。俺はため息を漏らしながら、刀に手を掛ける。
「まぁ、抜刀術の具合を確かめるにはほどよい相手かな」
そう呟きながら、俺は狼の群れに向かって走り出した。
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