侍と異世界
ものすごい勢いだけで載せちゃいました。
当分は週一投稿になるかと思います。
基本的に日曜日に投稿する予定です。
暖かい日差しが顔に当たっている。周りからは鳥のさえずりも聞こえてくる。
「……んん。どこだここ」
確か俺は、自分の部屋で1ヶ月ほど前に発売されたVRMMOをしていたはずだ。
『Freedom World』。FWと呼ばれるこのゲームは、日本で4番目に発表されたこのゲームの売りは、その世界内の自由度にあった。冒険者としてモンスターと戦うもよし。軍人として他国との戦争に参戦するもよし。果ては盗賊として道ゆく人から金目のものを奪い取るもよし、というハチャメチャな内容で、操作のほとんどがプレイヤースキルに依存している為、玄人向けのゲームとして有名であった。
そんなFWで俺は上位の戦闘職として活躍していた。FWにはランキングがあり、戦闘職、生産職の2つあり、俺は戦闘職で7位。FWのプレイヤーの総数は約10万人と言われている。トッププレイヤーとも言われたが、今は木漏れ日の差す森の中で倒れている。
自分の格好を見ると、ゲーム内の俺のアバター。takaの装備と同じである。ボスの素材から作られた着物は布とは思えない強度である。また頭には笠を被っており、初期から愛用しているので端が欠けていたりする。そして、腰には刀が差してある。FWでtakaのジョブは侍として戦っていた。
「……この森って、始まりの森か?」
木と木の間が広く、ウサギなどの小動物も多く見られるが、木の陰からこちらを伺っているのは、RPGの定番。スライムだ。体の色が青いので最弱のブルースライムだろう。そして、FWの世界でブルースライムが出るのは始まりの森だけである。
瞬時に思考が回ったあたりは、混乱はしていないようだな。と、自分の状況を冷静に分析した。周囲からは目立った音は聞こえない。ひとまず周囲に危険は無いと判断してもいいだろう。
しかしなんでまた、こんな自分とはかけ離れた場所にいるんだ。もしやバグか? そして、バグならステータスにも変化があるのでは。と確認して見たが、変わったところはないように思う。そのときふと気付いた。ログアウトの項目が無い。普通ならば、ゲームから抜ける為にメニューの右端にはログアウトと書かれた項目がある。だがその場所には黒く塗りつぶされた項目が鎮座している。バグかと思い、何度も押して見たがログアウトできない。
「おいおい……小説じゃねぇんだから。ログアウト不可のデスゲームに飛ばされたなんて、冗談でも笑えねぇよ」
とりあえずさっきまで一緒に行動していた、ギルドメンバーのタケユにコールしてみた。が、一行に出る気配が無い。冷や汗が背中を流れたときに、突然声が聞こえた。
「もしもーし。タケユですがどーしたの?」
とてつも能天気な声が聞こえてきたことに安心して、質問してみた。
「タケユ。今どこにいる?」
「んー。なんかねぇ。始まりの平原にいる」
タケユも飛ばされていたということは、やはりバグだったか。ひとまず合流することにした。
「俺は今、始まりの森にいるんだが、とりあえず始まりの街で集まるか?」
「そーだね。アリスちゃんもコトちんも飛ばされたみたいだったから、みんなに連絡して、始まりの街に来るように言っとくね」
「あぁ。俺はカルマ達に連絡しとくよ」
そーいって、コールを切る。もしかして、全プレイヤーが始まりの街周辺に飛ばされたのか? そう思い、ギルド以外のプレイヤーにコールをしてみたが、誰も出ない。否、コール自体がされない。確かに俺は無愛想なイメージが着いているが、コールを無視されるほど嫌われてはいないはずだ。
そもそも、コール自体を拒否するなんてコトはできないはずだ。始まりの街に向かいながら、様々なプレイヤーにコールしてみるが、誰にもかからない。にもかかわらずギルドメンバーは全員かかった。混乱しながらも始まりの街の門の前に着いた。だれも周りには居ない。どうやら俺が最初に着いたようだ。
しばらくして、ギルドメンバー全員が集まった。ヒラヒラの服を身につけたアリスと、鎧を着こんでいるカルマはいつものように仏頂面をしている。白いローブに身を包んだタケユと、学者のように白衣を着ているコトちん、もといコトコトは2人で座り込んでいる。赤いシャツにオーバーオールという、マ⚪️オのような格好のヨシ、白いシャツに黒の作業着を着ているkanna、盗賊のような格好のミョウ、ヨシと似たり寄ったりな服装のカミルと俺は、様々な可能性を考えていた。
様々な可能性。つまり、これがバグなのか、それとも小説のようにデスゲームになったり、異世界に飛ばされたのか。などの可能性だ。
しばらく、話していると、始まりの街の門が開いた。そして中から、甲冑姿の人物が出てきた。そいつは、俺たちを見るとこう言った。
「ん? あんたら冒険者か? 珍しいねぇ。マーシャ国の中でも随分と端の田舎町に来るなんて」
そいつの頭の上には、プレイヤーであることを示すプレイヤーネームが無い。つまり、NPCだということだ。が、NPCはこんな風に、話しかけたりはしない。せいぜい話しかけられたら、決まったセリフを繰り返すだけだ。俺たち全員が驚いて固まっていると
「俺はこのナイレ村の北門の門番をしてる、シュタードってんだ。短い間かもしんねぇけどよろしくな」
「ちょ、ちょっと待て。お前名前があるのか? いや、それ以前になぜ話しかけてくる? 門番は立ってるだけじゃないのか?」
堪えきれなくなった俺は、質問をぶつけた。門番、シュタードは不機嫌な顔をして言った。
「俺は王都の門番を知らねぇから、なんとも言えねぇけどよ、少なくともこの村の住人には名前があるし、門番の立場でも俺は話しかけるが。冒険者は偉いなんて言い放つ馬鹿な連中もいるにはいるが、そこまで邪険に扱わなくてもいいだろうに…」
確証は無いが、なんとなくわかってしまった。だが、頭がそれを受け付けなかった。俺たちは異世界に飛ばされたということを……
読んでくださってありがとうございます。
まだまだ幼稚な文章ですがよろしくお願いします。
誤字などがあった場合は教えていただけたら幸いです。