start
ようやく学園っぽくなってくると思います。多分。だといいね!
「うっわこの格好で外歩くのかよ・・・。」
時が過ぎるのはなかなか早いもので、気がつくと四月も中旬へと差し掛かっていた。
「お隣さんが卒業生で貰えたって言ってたけど、娘がいないはずのところからそんなこと言われたらびっくりしただろうなー。」
そして、僕たちは今日から高校生としての道を歩んでいくことになるのであった。
「っていうかこの高校の制服、スカート短くね?膝までないんだけど。」
そんなわけで僕は今鏡の前で、お隣さんからもらった学校の制服がどんなものかを見ているところだ。いや、いいんだよ。黒地に白い線でチェック模様の入ったスカートに、茶色のブレザーで可愛いんだよ。この制服目当てで入学する生徒も多いらしいし。そこは問題ないんだよ。問題は、僕が、その制服を着なくてはいけないという点だ。
「悠準備できたかー?」
そんなことをしていると翔が部屋に入ってきた。
「ちょっと、ノックぐらいしてよ。」
「あぁ、悪い。って、お?なかなか・・・。」
そう言って翔は僕をジロジロと見ている。
「翔、一回死んどこうか?」
「わ、悪かったよ。それより、そろそろ朝飯食って行こうぜ。」
「あ、もうこんな時間か。分かった。」
時計を見ると7時半を指していた。高校は電車で二駅ほど行ってすぐなのでそんなに時間がかからない。だから朝の時間にこうしてゆっくりしていられる。下に降りると、既にお父さんもお母さんも仕事に行っていていなかったが、朝ごはんが用意してあったので、それを食べ、片付けて、軽く準備をして家を出た。
朝の通勤ラッシュで電車は混んではいるが、それなりに空いていて、座ることはできなかったが、あまり窮屈せずに乗ることができた。駅に着くと、改札を抜けて外へ出る。そこからほんの数分で学校へと着いた。今日が入学式ということで、親と一緒に来る生徒が多く、校門から学校へと続く桜の並木道は多くの人がひしめき合っていた。
「人多いね・・・。」
隣にいる翔に話しかける。
「まあな。それなりにでかい学校だし、今ちょうどいい時間だからな。無理もないだろう。」
「あれ?翔じゃん!」
不意に後ろから元気な女の子の声が聞こえた。驚いて振り返ると、そこには僕たちの幼馴染、浅井 水希だった。彼女とは幼稚園からの付き合いだが、翔と変わらないくらい大切な友達だ。
「よう、久しぶりだな。卒業式以来か?」
「うん!本当久しぶり!っていうか・・・その子誰?」
水希が怪訝な目で僕の方を見てくる。
「まさか、翔の彼女!?あんた悠というものがありながら!」
翔の胸倉を掴みぐわんぐわんと揺さぶる水希。
「いや、ちょ、意味、わかん、ねえっ、よ!」
揺さぶられているせいでうまくしゃべれていない。解放されると、喉を押さえながらゆっくりと話していく。
「水希、信じられんかもしれんが、落ち着いて聞いてくれ。コイツは、悠だ。」
「あー、ホントだ悠だ、久しぶり!なんか変わったね!あ、髪伸ばしたのか!」
「うん、疑いたくなる気持ちはわかるけど・・・って、は!?」
水希は僕の手を取り、ブンブンと上下に振り回していた。
「お前、順応早すぎるだろ!疑えよ!」
「いやー、よく見たら悠じゃん。ほら、顔とか。でもなんかもっと可愛くなった感じ!まるで本当に女の子になったみたいな!制服も女子用だし!・・・あれ?なんで女子用の制服着てるの?」
「いや、だからな、水希。悠はな、女になったんだ。」
「へー」
「お前へーって・・・。」
「だってもともと女の子みたいだったし、私も悠のことは女の子として接してたというか。だから別に、あ、そうなんだー。ってぐらいにしか・・・。」
「お前な・・・・。」
「ほら、そんなことよりさっさと受付済ましちゃお!」
「ったく、ほら、行くぞ悠。」
「あ、うん。」
とことこと翔の後をついていく。さっき翔と水希が大騒ぎしたせいか、周りの人の視線を集めていた。
「ねえ悠。」
「何?」
水希が後ろを振り返り、僕の方を見る。僕が返事をすると翔の隣から後ろの僕の隣までやってきた。
「わ、声まで女の子だね。すごい!でもどうして女の子になんかなったの?好きな男子でもできた?」
「そんなわけ無いだろ。大体好きで女の子になったわけじゃない。」
「じゃあなんでー?」
「まあそのうち話すよ・・・。」
「まあいいけどね。」
そう言って水樹は笑ってくれた。おそらくあまり触れて欲しくない話題なのだと理解したのだろう。
「なんかあったらすぐに言いなさいよ?」
それだけ言うと水希は受付のとこまで走っていき、早くしろと叫ぶ。
「だとさ、悠。」
「そうだね。」
二人で水希の方へと走った。これから始まる高校生活に胸を躍らせながら。
もうちょっと一話を長くしたほうがいいのかなー。とか思いつつ、それがなかなかできずに困っております。すいませぬ。