service
いうほどサービスでもないです。ごめんなさい。
その日の夜、僕は愕然とした。
「な、なんだこれは・・・。」
白い肌に細長い手足。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んで、まさに理想の体なのではないだろうか。下ろした黒髪が何とも言えない雰囲気を作り出しているが、見た目は美しいというより可愛いに近いと思う。微かに青い目が白い肌によって際立っている。
さて、只今絶賛お風呂タイムである僕。病院ではちゃんとした風呂には入れなかったので、今こうして風呂に入れることに喜びを感じてはいるが、そこにある大きな鏡を見てしまった僕は変わり果てた自分の姿に衝撃を受けていた。入院中はまともに自分の体を直視することはなかったので実感があまり湧いていなかったが、こうして自分の全身を鏡で見てしまうとやるせない気持ちになるのであった。
さらに、風呂から上がると、そこに置いてあるのは、女物の下着と、パジャマ。いずれもお母さんが準備してくれたものだ。
「これを・・・着るのか・・・。」
「悠入るぞー。」
「え!?ちょ、ちょっと待って!」
「ん?」
そこで入ってきた翔と目が合った。どうやら洗濯機を回しに来たようだ。右手に服やタオルの入ったかごを持っている。
「ぬわぁあっと!悪い!」
咄嗟に振り返り後ろを向く翔。見ると耳まで真っ赤になっていた。
「なななな何赤くなってんだ!男の裸見て!変態か!ホモか!ホモなのか!」
「どこが男の体だ!大体見てない!ぎりぎり見えてなかった!」
「死ね変態!」
僕の怒号とともに翔は脱衣所を出ていった。足音が遠ざかり、リビングの方でお母さんから「あんたわざとでしょ?」って言われて「んなわけねえだろ!」と返す翔の声を聞きながら置いてあった服に着替えた。リビングまで戻ると翔とお母さんはソファに座ってコーヒーを飲んでいた。
「あら、悠ちゃん、髪乾かしてないの?」
「え、うん。なんかまずかった?」
「当たり前じゃない!ちょっと来なさい!」
そう言って僕は洗面所まで連れて行かれ、ドライヤーで髪を乾かされた。
「髪は女の命なんだから大切にしないとダメよ?」
という言葉を聞き飽きるぐらい言われた。耳にタコができる感覚を初めて知った気がした。
そんなこんなで再びリビングに戻ると、見慣れない人影を見つけた。
「あら。お父さん、おかえりなさい。こうは早かったのね。」
お母さんがその人の下へと駆け寄っていく。
「ああ。今日は悠くんがうちに来ると聞いてね、早めに上がらせてもらったよ。悠くん、いらっしゃい。」
そう言ってお父さんは僕に笑いかけてくれた。翔の両親は二人共優しく、こんな僕を快く迎えてくれて感謝してもしきれない。僕も精一杯の笑顔で、
「よろしくお願いします!」
と言った。
「いやー、それにしても翔にもついに春が来たか。」
とお父さん。
「そうね。今日はできなかったけど、明日は赤飯にしましょうか?」
とお母さん。
「あほか。」
と翔。
「あのー僕は男なのでそれは厳しいかと・・・。」
と勿論僕。
「「「いや、女にしか見えないから。」」」
と三人共に言われてしまった。やはりこの事実は覆ることはないのだろう。ちょっと寂しくなりながらも暖かな空気に包まれて幸せな気分でもあった。
「それにしても悠、お前なかなか可愛らしいもの着てるな。」
と翔が値踏みするような目で僕を見てきた。
「しょうがないだろ!これしかなかったんだから!」
確かに今僕が来ているのは白地に水玉模様のパジャマで、とても男の精神では着れないような代物だ。だが、僕は、男の時の容姿があれなので小さい頃、どころか、大きくなってからもよく女装をさせられたためこういう服に対する耐性はある方なので、まだ着ていられる。
「うん。いいと思うぞ。」
「黙れ変態。」
「てめ、まだ根に持ってんのか!」
「うるさいうるさい!変態!スケベ!ホモ!」
「ホモじゃねえ!」
「それ以外は認めるのか!」
「そりゃな!なんてったって男子高校生だからな!」
「まだだろ!入学式してないからまだだ!」
「じゃあ中学生でいいよ!男はしょうがない!」
「・・・・。」
「・・・・。」
「不毛な争いだね。」
「そうだな。」
とりあえず、一時休戦という形にして、今日はもう寝ることにした。自分の部屋に入り、ベッドに横になると、さっきの翔の言葉を思い出す。
『なんてったって男子高校生だからな!』
これを聞いて、4月から僕は女子高校生なのだと思うと悲しくなってきた。なんとか元の体に戻りたいな・・・。
今回はいつもより地の文が多いような?気がします。これが普通なのかも?よくわかりませんが、楽しんでいただければと・・・。