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だいぶ間隔があきましたが、続きです。楽しんでいただけたらと思います。
「シャバの空気はうまいぜえ~!」
伸びをしながら叫ぶ。
「あほか。さっさと帰ろうぜ。」
後ろから翔がチョップを仕掛ける。
「いたた・・・。いやー、久しぶりに外に出ると気持ちよくって。」
僕は一週間の検査入院を経て、晴れて自由の身となったのだった。
「悠ちゃん、必要な荷物はうちに移動してあるから、今日からうちで生活してね。」
翔のお母さんが優しく言った。僕が入院していた間に僕の部屋を作ってもらったり、そこに必要な家具を移動したり、その他諸々をしてもらった。そして、退院したらすぐに清水家に居候させてもらえるようになっていた。
「ありがとうございます。しばらくお世話になります。」
翔のお母さんの方を向いてお辞儀をする。
「いやー、まさか悠ちゃんがお嫁に来てくれるとは思ってなかったわ~。」
「お、お嫁!?」
「ちょ、母さん!何言ってんだよ!」
二人で激しく反論するが翔のお母さんは聞く耳を持たない。
「でも翔、あなたはまだ結婚できる年齢じゃないんだから、もうちょっと待ちなさいね?」
こんなことまで言う始末だ。その後、翔のお母さんの運転で家まで帰ったが、その間もずっと同じようにからかわれ、否定をするという繰り返しをしていた。家に着いたのは11時頃だった。
「悠ちゃんの部屋は二階の翔の部屋のとなりよ。翔、案内してあげて?」
「うーい。悠、ついてこい。」
翔の後をついていき、部屋へ通してもらった。そこには、今まで僕の部屋にあったものがそのまま移動されていた。とりあえず病院に持って行っていた荷物を置いて、再びリビングへと戻った。リビングでは翔のお母さんがソファの前に座っていた。僕たちは正面に座った。
「えと、それでは、改めまして、翔のお母さん、これからよろしく・・・」
「ちょっと待って!悠ちゃん。私のことはお母さんって呼んで?これから一緒に暮らすんだからあなたは家族の一員なの。」
「え、でも・・・。」
「嫌?なんならママって呼んでくれてもいいのよ?」
そう言って翔ママはウィンクをして僕に星を飛ばしてきた。
「丁重にお断りさせていただきます!!・・・お母さん、これからお世話になります!」
「敬語も使わなくていいからね?私たちは家族なんだから。」
「ありがとうござ・・・・ありが・・・とう。」
すごく違和感があるが、家族と認めてもらえるのは素直に嬉しかった。これからは少しでもこの家族に役に立てるようなことをしていきたい。
「ふふふ・・・。さて、これからについてだけど、悠ちゃん、学校へは行くのよね?」
「うん。こんな姿になっちゃったけど、学校へは行きたい。」
「そう、それじゃあお父さんが帰ってきたら色々話しましょうね。」
「うん!」
「あのー・・・お話の最中大変申し訳ないんですがー・・・。」
と、翔がおおるおそる手を挙げる。
「どうした?」
「いや、悠、お前入学手続きってか戸籍とかだけど男のままだろ。どうすんだ?」
「え、女に変えろって?やだよ。戻れるかもしれないんだから。」
「でも、戻れる保証はないだろ?大体、おそらくその体で通うことになるんだから結局今のままじゃダメだろ。」
「う・・・で、でも、戸籍変えるなんて・・・。」
「できるわよ?」
「ほら、できるわけな・・・ってええ!?」
お母さんが割ってはいる。突然のことに驚いてしまった。
「できるわよ?」
「いや、二度言わなくていいから!っていうか、変えるにはいろいろ条件があるんじゃ・・・。今の僕じゃ満たしてないよ?」
戸籍の性別を変えるにはまず、20歳以上であることが前提となっている。ちなみに、そのほかには医者による診断が必要だったりするらしい。
「そうね。問題ないわ。」
「ええええええ!?でもどうやって!?」
「具体的には教えられないけど、私に任せなさい!国の情報を操作するなんてお茶の子さいさいよ!」
「できるかああ!」
この母親、恐るべし。僕は、この人だけは絶対に的に回さないことを誓った。
「なあ悠。急だけどさ、お前体本当になんともないのか?」
翔が心配そうに僕を見ていた。なにか思うことでもあるのかその目は不安に揺れていた。
「大丈夫だって。心配しないでよ。」
「そうか・・・なら、いいんだ。」
「変なやつー。」
「うるせえ。お前には言われたくねえよ。」
今までと同じ生活が戻ってきたことに今は心から嬉しく思う。日常の大切さを噛み締めていた。
「あ、そうそう、悠ちゃん。あなたの部屋にあった家具は持ってきたけど、服は全部処分させてもらったわ。」
「・・・・え?」
お母さんは今なんといったんだろう。
「服は処分させてもらったわ。」
「・・・・。」
「服は処分させて・・・」
「もういいです!分かりました!でも、じゃあ僕は何を着ればいいの!?」
今僕が来ているのは、今は県外へ出ていて家にいない、翔のお姉さんの服、パーカーとジーパンを借りて着ていた。僕の服をすべて処分したとなれば僕は着るものがなくなり、毎日裸で過ごさなくてはならなくなるだろう。
「大丈夫。ある程度は買っておいたから。」
「え?・・・まさか・・・・。」
急いで自分の部屋へ駆け込み、クローゼットとタンスを開く、するとそこにはきちんと下着や服が入っていた。勿論、女物だが。
「・・・・。」
「ごめんね?悠ちゃんのサイズよく知らなかったから合いそうなのを何種類かかっておいたから、合うのを見つけてね?」
気がつくと部屋の扉のところにお母さんが立っていた。顔はというと不敵な笑みを浮かべていた。
「これは・・・何?」
「見てわかるでしょ?服よ?」
「なんで女物・・・?」
「そりゃああなたが女の子だからに決まってるじゃない?」
「そう・・・ですよね・・・。」
がっくりと膝を落とす。下着や、スカート、ブラウスなど、女の子特有の服が目に入り、余計に肩を落とす。僕はこれ以上、この衣類に目をやることはできなかった。今までは女の子が来ている下着に興味がないわけではなかった。と思う。しかし、今こうして自分が付けることになると、どうしても受け入れがたい。僕は最早ため息を付くことしかできなかった。
ありがとうございました。これからもこんな感じでゆっくりと投稿していくと思いますので気長に楽しみにしていただければ嬉しいです!