setting
ちょくちょく視点かわってごめんなさい・・・。混乱しないようによろしくお願いします。今回は翔視点です。
一旦病室を出て、人気のないところに隠れる。ポケットから携帯を取り出し電話帳から『花宮』という名前を探し、電話をかける。
『・・・はい。清水くんか。そろそろ結果が出たのかな?』
「ちょっとどういうことですか!何か悠が女になってるんですけど!」
『女に?なるほど・・・。いや、実はそうなるかもしれないとは思っていたんだ。』
「・・・え?なんでですか?」
『奥田くんを初めて見た時、女の子かと思ったんだが、病院のカルテを盗み見たら男と書いてある。しかし、ほかの検査結果を見てみると、どう考えても男とは思えなかったんだ。それで、もしかしたらこの子は体の内部が女性で見た目が男性なんじゃないかと考えたんだ。普通ではありえないがな。しかし、この薬、『NC‐012』を打って女性になったということで納得がいく。この薬は前にも言ったが、自然治癒力を高め、破壊されてしまった組織を元通りにする薬だ。恐らくその時に一番戻しやすい体、つまり内部を構築している女性の体にしたのだろう。あくまで憶測だがそう考えると辻褄が合う。』
「いや、ちょっといまいち何言ってるかわかんないんですけど、何病院のカルテ盗み見てるんですか!」
『そんなことはどうでもいいじゃないか』
そう言って花宮は笑っていた。笑えねえだろ・・・。
「それよりこのあとどうするんですか!?」
『どうするもこうするも、そのあとのことは私たちは責任が取れないといったはずだ。』
「ぐっ・・・。」
『いい実験結果が取れたよ。協力感謝する。』
「ちょ、待っ・・・・切れたか。」
携帯を畳んで悠の部屋に戻ると、悠は横になって外を見ていた。
「悠、体の調子はどうだ?」
「皮肉なことになんともないよ・・・。」
悠は窓から目を離さずに言った。その言葉に悲しみは含まれていなかったが当然、喜んでいるようにも聞こえなかった。
「僕いっつも女子に間違われてたから、この姿が本当の姿だったりして。」
悠がこっちを振り向き苦笑いでそんなことを言った。花宮の言ったことが頭をよぎる。
「まあどうでもいいんじゃねえの?お前はお前だよ。」
悠と目を合わせたまま答えた。しばらく二人のあいだを沈黙が流れた。すると、悠はいきなり涙を流し始めた。
「お、おい?悠?どうした!?なんか痛いか?」
「ううん・・・。そうじゃないんだ。キモいって思われたらどうしようって・・・。」
「はあ?」
「さっき自分の姿見たときに、僕はこれが自分だって信じられなかった。でも、今ではそれを受け入れるしかない。元に戻す方法がわからないってお医者さんも言ってたしね。でも、今まで男だった奴が急に女になるとか、気持ち悪いよね・・・。それで翔に嫌われたら・・・どうしようって・・・。」
「ばーか。俺がお前を嫌いになるわけないだろ?いっつも一緒だったんだから。」
「・・・本当に?」
「当たり前だろ。っていうかそもそも見た目ほとんど変わってねえからな。変わったのは髪の長さと目の色くらいだぞ?」
「・・・ばか。」
これは嘘だった。本当は今まで残っていた男の部分が完全になくなって女の体、顔になっている。でも、少しでも悠を安心させたくて笑いながらそんなことを言った。すると悠も久しぶりに笑顔を見せてくれた。
「・・・!」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない・・・。」
何故か悠の笑顔を見た瞬間体に電撃が走ったような感覚だった。俺はその正体をさがす気にはなれなかった。
「それで、悠。お前このあと退院してからどうすんだ?今まで通り暮らすのか?」
「そうしたいんだけど・・・。大丈夫・・・かな?」
「どうだろうな。」
悠の両親は海外で仕事をしていて、悠は家で一人暮らしをしている。だが、中学生にひとり暮らしは大変なので、うちでよく一緒に夕飯を食べたり、一緒に遊んだりしていた。しかし、女の体になった今、ひとり暮らしは危険である可能性が高い。
「正直女の体でひとり暮らしはやめたほうがいい。戻れるまで、うちで一緒に暮らすか?」
「・・・いいの?」
「当たり前だろ。大体お前の親さんが出て行く時からずっとうちで一緒に暮らそうって言ってきたのにお前それを意地張ってずっと断ってたじゃねえか。この機会に一緒に暮らそうぜ。」
「・・・ありがとう。」
「準備はしといてやるよ。とにかく今はお前休んどけ。」
「うん・・・。」
そのあと母さんと医者が戻ってきた。悠は検査が始まるらしく、検査室に連れて行かれた。俺たちは悠にまた明日来る旨を伝え、家に帰った。
ありがとうございました。主人公は一応悠ですが、今のところ、ほとんど翔視点なのでわかりにくいですね。はい。精進します。