プロローグ
実はこの話の元になった話を作ったことがあるのですが、諸事情により途中で断念したのですが、こうしてリメイクさせていただきます。
「翔ー!早くしないと学校遅刻するぞー!」
僕の名前は奥田 悠。只今小学6年生が終わろうとしているとこ。つまりは今日が卒業式だということだ。親友の清水 翔は生まれた時からおとなりさんでずっと親しくしている。
「悠、わりー!今何時!?なんだよ、まだまだ余裕じゃん。」
「今日は卒業式なんだから余裕もって着けるようにしないとね。」
「悠は真面目のいい子ちゃんだな~。」
「翔、からかってんの?」
二人で並んで学校に向かう。まだ3月だからか、少し肌寒いが、朝の空気は澄んでいて気持ちがいい。桜の時期にはまだ早いのか、桜の木には蕾が付いているだけだった。
「それで?悠ちゃんの男子に告白された回数は何回なのかな?」
「・・・・・やっぱからかってるでしょ。」
「べっつに~?ただ何回なのかなーと思っただけだよ~?」
「・・・・15・・・。」
「ぶっは!まじで!?すっげえなお前!」
翔は腹を抱えて笑う。そう、僕、奥田 悠は、何を隠そう、身長146cm、体重35kg、中性的な童顔、女の子と間違えられた回数は男の子と正しく認識された回数より遥かに多い。したがって、女子だと思って告白してきた男子が12人、そして、男だと知っていながら告白してきたのが3人・・・。
「大体、女子からは一度も告白されたことないのになんだよこれ!」
「まあまあ、随分とまあおモテになるようですね・・・ぶはっ。」
耐え切れず吹き出す翔。
「あーもー本当、最悪の小学校生活だったよ・・・。」
「そうか?いいと思うけどな?」
「じゃあ今日、『翔くんは彼氏募集中だって~』ってみんなに言ってあげようか?」
「ごめんなさい。」
道端で土下座をする翔。犬を散歩させていた近所のおばさんが不審な目でこっちを見ていた。
「はー。中学校生活は楽しめるかなー・・・。」
中学校でも同じようなことが起こるんじゃないかと思うとため息が出る。
「楽しめるさ。俺が一緒なんだから。」
そう言って翔は白い歯を見せながらこっちに笑いかけてきた。
「・・・・そうだね。」
そんなことをしていると学校が見えてきた。
ーそれからちょうど3年
「ふぁああああ・・・眠かったー!」
腕を上に伸ばし、あくびをしながら翔は言った。
「全く、眠かったって、既に翔寝てたじゃん。」
「だって眠かったんだもーん。そういう悠だってうつらうつらしてたじゃねーか。」
「でも起きてたし。」
「どーだか。」
僕と翔は中学校の卒業式を終え、二人で家に向かっているところだった。
ー3月の夕暮れは明るくも暗くもなく、気が抜けやすい。
「それで、魅惑の女王、悠様は、中学校生活でどれだけ告白されたんですか?」
「・・・・・58。」
「あらまモッテモテ!さて、その実態は!?」
「全員男子だよ!何か文句あるか!?」
「ぶっははははは!お前、それは、くくく・・・。」
「う~・・・・。」
翔は僕の頭をぽんぽんと叩く。翔はあれからぐんぐん成長し、170を超えた。ところが僕は、154cm。僕と翔の間にはありえないくらいの差があった。
「お前もうこのまま女になっちまえよ。」
「ばーか。絶対お前の身長抜かして男らしくなってやる!」
「ムリムリ。っていうかそんなんお前じゃない。男らしい悠は悠じゃない。」
「なんだそれ・・・。あ、翔、信号赤。」
「ん?おお。」
交差点の信号が赤になったため一時停止する。しばらく過ぎていく車を眺めていると、信号が青に変わった。
「あーあ、身長伸びろ!」
僕は伸びをしながら願う。だがその願いは虚空に消えるだけだった。そして、何も声が帰ってこない。
「翔?どうした?」
振り向くと翔の絶望の表情が見えた。何かを叫ぼうとしているが声になっていない。それと同時に僕の意識は途切れた。
「悠・・・?悠ーーーーーーー!」