おんながおとこに抱かれるということ。 たまごサブレ。
その人と会うのはもう何回めかになっていた。
柱のあるへやで、暖かいひかりがつよくなる。
闇がおだやかに遠ざかりシャワーに向かってわたしはあるく。
まどのないこの空間でバスルームだけは正気を保っていて、
律儀にひるまのひかりに照らされている。
よくあらう。
いつかはほろびる、ほろびつつあるからだを、
ようやくじぶんのもとに帰ってきたじぶんのからだを、よくあらう。
買ってきたんだと、いいながら袋をやぶるせなかをみる。
足音。とおくから水音がきこえる。
へやにある、隠されている開かないまどをみながら たまごサブレをたべる。
あたまをなでられている。わたしは気づかないふりをする。
てをつかまれる。
めのまえにさしだされるたまごサブレをわたしはかじる。
あたまをなでられている。わたしは気づかないふりをする。
へやはふたたび闇をむかえる。
いまの、いまだけのわたしのからだの持ち主の、
くちのさきにあるたまごサブレを持つその指が、闇にとけていくのをみる。