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魔法少女の戦い

「で、敵はどこ?」


「北の繁華街。 活気に引き寄せられたみたいだ」


 職員トイレのまどから飛びだしたナナセは近くのマンションの屋上に着地した。


 一口に魔法少女と言っても色んなタイプが存在する。


 万能タイプ。 この系統の魔法少女の魔法は融通無碍に何でも叶える力を持つ。


 女児向けアニメに顕著に見られるタイプで、魔女っ子と呼ばれる事が多い。


 精神操作は不可とか、正体バレは禁止とか、一定のリスクはあるがとにかく強力。


 一定のリスクが解除された場合、魔女っ子と言うよりも神とでも言うべき存在。


 次いで特殊能力タイプ。 この系統は一つの能力しか使えない。


 たとえば変身だけに特化した者が該当し、効果だけでは異能や超能力との境界が曖昧。


 魔法と明言されない限りは後者とされる傾向が強く、魔法少女扱いされない事も多い。


 変身にも動物限定や大人になるだけなど色々系統があるが、長くなるので割愛。


 そして、戦う魔法少女。 近年では魔法少女と言えば戦うものというイメージすらある。


 魔法という言葉をあえて前面に出さない美少女戦士もこのカテゴリに入るだろう。


 使途が戦闘に限定されているが、魔法で出来る事はかなり多い。


 ナナセの魔法少女としてのカテゴリは――言うまでもなく戦う魔法少女である。


「距離はどのくらい?」


「7kmくらいだね」


「となると、テレポート70回分か。 しんどいわね」


 テレポート。ナナセの使える数少ない魔法の一つであり、唯一の移動魔法である。


 他に使える魔法はマーキング、光の刃、電撃、服毒。それから必殺技の5つ。


 魔法少女に必殺技が必要だなんて世も末だが、そんな末が何年も続いている。


「30ターンもあれば余裕だろ?」


「……まあね」


 当然でしょ、とでも言いたげな口調で答えたナナセは再び跳躍した。


 他の魔法、特に索敵や一般市民の保護はマスコットに任せっきりである。




 その頃、繁華街の車道を巨大な亀のような生き物が元気よく逆走していた。


 亀と言っても亀の特徴を引き継いでいるのは甲羅くらいのもの。


 その甲羅もゾウガメよりも大きく、マイクロバス程度のサイズを有している。


 加えて甲羅から生えている足の数は6本。 亀にしてはあまりにも多い。


 トドメに頭部が飛び出している位置に生えているのは真っ白な人間の上半身に近い。


 何やら粘液に包まれた禿げ頭の女性の姿はグロテスク極まりない。


 その進行を止めるべく置かれたパトカーを人間の倍に相当する長さの腕で薙ぎ払う。


 それだけでパトカーは盛大に宙を舞い、近くのビルに突っ込んだ。


 一般市民を避難させつつも、警官たちは必死に銃器での応戦を試みる。


 が、その異形へと放たれた弾丸は一発たりとも威力を発揮する事無く地に落ちる。


「ふぅ、到着……なるほど、あいつね?」


 出動からおよそ140秒。


 特に何のトラブルも無く、異形の下に到着したナナセがビルの上から亀を見下ろす。


 幸いにも警官たちの努力によって民間人の死者は一人も出ていないようだ。


「で、どうするつもりなんだい、ナナセ?」


「そんなのいつも通りにきまってるでしょ?」


「そうかい、せっかくなんだから口上とか決めポーズとか……」


「いつも言ってるでしょ? そう言う無駄な事はしない主義だって」


 言うが早いか、手にした杖から金色の雫が垂れる。


 その液体の正体は彼女の魔力で作り出された毒。


 本来認識さえも不可能な筈の異世界への干渉を可能にする異端の法則、魔法。


 その根源たる力、魔力で作りだされた対象の魔力の精製を阻害する。


 マスコット曰く、魔法のある世界の生物にとってはかなり危険な代物らしい。


 もっとも、ナナセは魔力や魔法が何なのかさえも良く分かっていないのだが。


 ただ、モモンガモドキから魔法についての説明を聞いた瞬間、これに思い至った。


 相手に見えない場所からこれをテレポートで対象の体内に送り込む。


 これが名乗りも決めポーズもしない魔法少女の必勝の戦術。


「だからってその戦い方はどうかと思うけどね。 ただの殺し屋じゃないか」


「実際、殺し屋みたいなもんじゃない」


「愛と夢と希望の使者、魔法少女が言う台詞じゃないね」


「こんな血生臭い世界に愛も夢も希望もあるか。寝言は寝てる時に言え」


 皮肉っぽい口調でそう答えた直後、金色の液体がナナセの視界から消えた。


「もっともだよ。 少女の夢っていうのはもっとこうお花畑の中で育まれるべきだ」


 愛と夢と希望の使者。 その標語は魔法少女に対するイメージ戦略の一環。


 自分達が異世界に出向かず、異世界間犯罪への対応を現地の住人に押し付ける方便。


 モモンガモドキが彼女を、ナナセを魔法少女にしようとした理由はそこにある。


 Yes!ロリータ! No!タッチ!を信条とする彼には許せなかったのだ。


 希望も未来も魅力(無論性的な意味で)もある童女達を死地に赴かせる事が!


 どうせ死ぬなら年功序列でババアから死ねば良い!


 そんな理由で彼は三十路のナナセを魔法少女に仕立て上げたのだッ!!


「おっ、うずくまった……って言うか隠れた」


「大丈夫なのかい? 君にあの甲羅を突破する術はないだろう?」


「そんなの問題ないわよ」


「必殺の魔法でも使う使うつもりなのかい?」


「まさか。 こんな場所で撃ったら危ないじゃない」


 淡々と答えたつつ、再び金色の猛毒を作ってテレポート。


 直後には再び新たな毒が精製されている。


「……死ぬまで毒を盛り続ければ良いだけでしょう?」


 こともなげに言い放つ彼女を見て、モモンガモドキは思わず階下の亀に同情を覚えた。


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