古着屋アップル 第2話 短編版
月曜、古着のコートを着て学校へ向かった。すれ違う人がちらっと見る。その視線が少し嬉しい。
「早速、着てきたね」
凛が笑う。放課後はそのまま塾へ。十二月に入り、毎日塾の生活が始まった。
本当は、塾で湊に会えるのが一番の楽しみだ。
塾に着くと、教室をぐるっと見渡す。湊は最前列。右に彩葉、左に蓮。三人は同じクラスで仲がいい。
彩葉はきっと湊が好き。あたしには分かる。
席につくと、何人かがあたしのコートをちらっと見た。湊も一瞬だけ。
「地味じゃね? そのコート」
凛が小声で言う。
「二十年前に流行ってたんだって。チドリコーシ」
「へー」
興味なさそうな返事に少しむっとした。
授業が終わると、
湊・蓮・彩葉の三人が並んで歩きながら志望校の話をしていた。
最初に 蓮が湊に聞く。
「湊は青学?」
湊がうなずく。
「うん。蓮は?」
蓮が答える。
「青学か中央かな。彩葉は?」
彩葉が少し照れたように言う。
「上智に行きたいけど、どうかな。模試しだいだね」
蓮が笑ってまとめる。
「みんな現役で受かりたいよな。浪人は避けたいし」
駅が近づくと蓮が手を振る。
「じゃ、また明日」
蓮が離れると、
残った 彩葉が湊の自転車の腕にそっと組む。
「私も青学にしようかな。一緒に行きたいし」
湊は少し困ったように笑う。
「彩葉なら上智行けるよ。そっちがいいって」
彩葉が不満そうに顔を寄せる。
「一緒の大学、いやなの?」
凛と別れた帰り道。
今日、コートを見られたことを思い出してニヤニヤしていた。
そのとき、自転車が横を通り過ぎる。湊だ。
その瞬間――
あれ、動かない。
足が前に出ない。誰かにコートをつかまれているみたい。
パニックになっていると、湊がUターンして戻ってきた。
「詩、第一志望決まった?」
心臓が跳ねる。
「んー、多分、青学」
「そっか。俺も青学。彩葉は上智かな」
「彩葉、頭いいもんね」
「だね。じゃ、帰るわ」
湊が去った瞬間、体がふっと前に進んだ。
……なに? 今の。
まるで湊が来るまで止められていたみたい。
怖い。でも、それ以上に嬉しい。
湊と第一志望が同じ。それだけで胸が熱くなる。
明日、帰り道でまた会えたらいいなと思った。
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