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白い結婚のまま、さようなら ~女好きな夫との離婚は決定事項です  作者: 白まゆら


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あああ、宰相の苦悩

 とうとう、やりやがったあの色ボケ王子‼


 侍従が「カール殿下が問題を起こしたようです」と陛下と重鎮たちが揃った会議室に飛び込んできた瞬間、そこにいる全員が心の中で叫んだ。


 実は最近のカール殿下は「俺の嫁は子供だから何もできない。あいつが大人になるまで俺は待たなければならないのか?」と、あちらこちらでしきりにぼやいていたのだ。

 ほとんどの者が「まあまあ、子供の成長は早いものです。四年なんてあっという間ですよ」と嗜めていたが、殿下の悪友などは「カール様は王族なのですから、側室を置けばいいのでは?」と側室制度のない国と知っていて唆したり、もっと酷い者などは「他所で見繕っては如何です? なぁに、黙っていればバレませんよ」と悪い遊びに誘ったりしていた。

 高級娼婦をあてがおうとした者もいて、流石にそれはおイタが過ぎると親を通してチクッと注意はしたが、それでもカール殿下が夜会で女漁りをするのは止められなかった。


 正直、令嬢に手を出すくらいなら己の立場をよく理解した高級娼婦の方がマシではあるが、普通の貴族ならともかく王族では隠し通すのも難しい。

 それにカール殿下は女好きのクセに娼婦は嫌なんだそうだ。

 手練れでは自分の拙さがバレるとでも思っているのだろうか。

 所詮、矜持だけ高い十八歳のガキである。


 そうしてカール殿下の夜会に出席する日が増えて行き、同時に幾人もの令嬢を侍らせるようになっていったのだ。

 そんな姿に親である陛下も頭を抱えていたのだが、それを注意して特定の女に夢中になっても困ると、ある程度は好きにさせていた。

 一線さえ越えなければ問題はない、と思っていたのだが、それも段々と怪しくなってくる。

 夜会でのイチャつき方が、ちょっと目に余るのだ。

 どさくさに紛れて令嬢の体に触れているのを、衆人環視にバッチリと見られている。

 どこの酔っぱらいのオヤジだ、と叫びたくなるのをグッと我慢する日々。


 そんな中での、この報告。

 ああ、とうとうやったかと思うのは当然だろう。

 陛下が目を細めて、報告に来た侍従に話を促す。

 それによると、カール殿下が夫婦の寝室で他の女とやっていたのを、クレイン様と側近のソックス、騎士多数にしっかりバッチリ見られたとの事。

 はあぁぁぁ~~~⁉

 どうすれば、そんな姿を他者に見られるというのか?

 しかもよりによって自分の妻に見られるなど、あってはならない話だろう⁉

 国の中枢にいる優秀な人材が、全員ポカ~ンと阿呆面になる。


 我が子の愚行に陛下がふと、疑惑を持った。

「……ちょっと、待て。夫婦の寝室で、と言ったか?」

「はい」

「……………………」

 あの色ボケ王子は、事もあろうに愛人を夫婦の寝室で抱いたのか?

 全員が頭を抱えて項垂れた。

 そりゃあ、見つかるわ、ボケ!

 だが陛下だけは、半眼したまま侍従に問う。

「何故、そんな所にクレイン嬢が昼日中に現れたのだ? 彼女は愚息の側には近寄らなかっただろう?」

 確かに!


 カール殿下が彼女を相手にしなかったのもあるが、彼女自身もまた殿下には近付こうとはしなかった。

 しかも寝室に訪れた事など、ただの一度もない。

 結婚式の日でさえ、十歳に初夜をおくれるはずもなく当然、別々の部屋で就寝された。

 お二人の部屋は王族の居住区にあるとはいえ、一番離れた場所にある。

 間違っても問題が起こらないようにとの配慮だったのだが、今ではお二人の心を表すかのような距離だ。

 そんな彼女が、そんな場に居合わすなど作為しかないではないかという事だ。


「それが、クレイン様の仰るにはカール殿下より手紙をいただいたそうなのです」

「手紙? あの愚息がわざわざ妻に? ありえないだろう?」

 全員が首を傾げるが、侍従はカール殿下の側近のソックスが確認したと報告する。

 すぐにソックスが召喚された。

 ソックスは暗い顔をしながらも、呼びつけられるのは分かっていたのだろう。

 頭を垂れ、心得たように報告した。


「カール殿下、直筆の手紙で間違いありません。クレイン様に夫婦の寝室にその時間に来るよう命じてありました。クレイン様は直には向かわず、まずはカール殿下の執務室に問い合わせしてきたのです。そこにカール殿下が居るのなら、何用かと? 寝室に行くには流石に抵抗があったそうです」

 ソックスの言葉に、皆が頷く。

 確かにあの二人の距離感で寝室に来いと言われても、素直に行く気にはなれないだろう。

 クレイン様の行動に問題はない。


 そこでカール殿下の執務室に居たソックスが、手紙を見せられて一緒に行く事になったそうだ。

 寝室の前にはカール殿下の護衛騎士が二人、扉の前で警護していた。

 ソックスを先頭に近付くと、二人はクレイン様の顔を見て少しだけ首を傾げた。

 後から二人に確認したところ、カール殿下と寝室に向かった際に、何となく中に人が居る気配がしたらしい。

 しかしカール殿下が中に入るなと命令したので気のせいか、それともクレイン様かとそのまま命令通り、外で警護していたそうだ。

 クレイン様が目の前にいるという事は、やはり気のせいだったのかと二人は何も疑問に思わず、ソックスが扉を開けて中に入るのを止めなかった。

 もちろん、ソックスは何度も扉をノックして声もかけた。

 しかし返答がなかったため、彼はその扉を大きく開いたのだ。

 するとそこに広がった光景は……。


 全員が頭を抱え込む中、私はソックスに訊ねた。

「鍵はかけていなかったのか? そのような行為に発展する恐れがあるのなら、普通は鍵をかけるものだろう」

「それがあの後、狼狽えるカール殿下に確認したところ、殿下自身はかけたと仰いました。しかし私は鍵など持ち合わせておりませんでしたし、扉は壊れてもいません。あいていたからこそ、私は軽い力で扉を開いたのです。その結果、全開にしてクレイン様にそのお姿を見せたのは、私の不徳の致すところです」

 萎れるソックスに、私も項垂れる。

 カール殿下はその行為を、一糸まとわぬ姿で寝台の上で頑張っていたそうだ。

 十二歳の無垢な少女であるクレイン様の眼に触れさせてはいけないものを触れさせた、その場にいた大人の心境はいかなるものか。


「……しかし、それでは誰かの作為を感じませんか?」

 外務大臣が眉を顰めた。

 誰か、と言っているが、中から鍵を閉めた殿下の後にまた鍵をかけられる者など、一人しかいない。

 全員が顔を見合わせる。


「そのような者に、カール殿下のお心を掴ませて良いのでしょうか?」

 何となく、一連の犯人が浮上したところで財務大臣が声を上げるが、それは皆が頭を抱える事だった。

「掴ませるも何も、本当にカールはその者を気に入っているのか?」

 陛下の言葉に、ソックスは首を傾げる。

 普通なら夫婦の寝室に引き入れてそのような行為をしていたのならば、好意があると思うものだが、あの女好きのカール殿下だ。

 相手の女性には悪いが、どこまで本気なのだろうと疑うのは当然だろう。


 そこで法務大臣が呟いた。

「相手は誰だ?」

 そうだ、相手にもよる。

 皆の視線がソックスに注がれる。

 ソックスは言いにくそうにしていたが、思い切って声を振り絞った。

「クラウディア・イブニン伯爵令嬢です」

 アレか―――――‼

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