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白い結婚のまま、さようなら ~女好きな夫との離婚は決定事項です  作者: 白まゆら


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20/30

えっと、あれからね

 離婚まであと半年を切りました。

 もう半年すれば離婚が成立して、私はエイワード国へと帰る事ができます。

 ウキウキする私の足取りとは別に、城内の雰囲気はあまり良くないものになっていました。


 それもそのはずです。

 一年以上前のあの日、廊下で私と夫の馴染みの愛人クラウディア様と新参者の愛人カロリーナ様が顔合わせしてしまったあの時、運悪く鉢合わせした第二王子のカミュウ殿下にカロリーナ様があろう事か無礼を働いたのです。

 その際、夫に助けを求めた彼女が叫んだ言葉が、第一王子と第二王子の仲を決定的にしてしまいました。


 夫が弟を自分の手駒だと、閨で愛人に囁いたのです。

 確かに王太子である兄がこのまま王位を継いだら、弟が手駒として兄の力になる事もあるでしょう。

 ですがそれは、信頼あってこその話です。

 愛情があるからこそ、手駒などと侮辱した言葉を使われても許せるのです。

 しかしこの場合は、愛情の欠片もございません。

 兄に使われない道を選ぶ事だってできるのです。

 傲慢な言葉を聞かされた弟が、兄を許せるはずがありません。

 すぐに会議が開かれました。



「これは一体どういう事でしょうか? 父上、母上」

「陛下と呼ばんか、馬鹿者」

「カール様、助けてください!」

「貴方は少し黙りなさい」


 仕事から戻った夫はすぐに会議室へと連れて来られ、以前に愛人とのアッハンウッフン現場を見られた時に集まった面子に加えて、弟王子のカミュウ殿下と筆頭愛人のクラウディア様、そして今一番可愛がっているカロリーナ様とその友人、更に護衛騎士を交えた全員の視線を一身に集めておりました。

 カロリーナ様は泣きべそをかきながら、必死で夫に手を伸ばしています。

 そんな彼女をクラウディア様が押さえているという、不思議な状況。

 首を傾げる夫はつい陛下を父上と呼んでしまい一喝されて、泣き喚くカロリーナ様は王妃に一喝されています。

 う~ん、カオス。

 ちょっと面白くなってきました。

 ええ、私にとったら所詮は他人事ですから。


「そこの者はお前が今、関係を持っている令嬢か?」

 陛下の声が低くて、夫がビクッとしています。

 視線をキョロキョロと彷徨わせ頬をポリポリと掻いた後、夫は歯切れの悪い口調で答えます。

「関係を待つというか、まあ、そうですね。可愛がってはいますよ」

「ハッキリ言ってください、カール様。昨夜も私を愛していると言ってくれたではないですか」

 カロリーナ様の叫びに、周囲は白い眼を夫に向けます。

「カロナ、ちょっと黙ってろ」

 いたたまれなくなった夫が、カロリーナ様を注意します。

 けれど半べそのカロリーナ様は、まるで駄々っ子のように首を横に振りました。

「嫌です。皆して私を虐めるんですよ。私何もしていないのに、どうしてこんな場所に連れて来られないといけないんですか?」

「それは俺も同じだ。どうして俺が呼ばれているんだ? 俺は仕事をして帰って来たところなんだぞ」

 まるで夫婦の会話のようですね。

 あら、夫の妻は私でした。


 夫とカロリーナ様が叫ぶのを、宰相が一喝します。

「静粛に! 今から説明をします」

 宰相の剣幕に、夫とカロリーナ様がやっと静かになりました。

 そして何故か夫が私を睨みつけてきます。

 ですが、その表情には少し驚いた感じが見受けられました。

 あれ? というように首を傾げ、すぐに首をフリフリと横に振って、それから暫く何かを考えるように腕を組み俯いて、その後宰相に顔を向けました。

 今の不審な動きは何だったのでしょうか?

 思わず後ろにいるモナを振り返りましたが、モナも分からないと首を横に振りました。

 うん、夫の行動を私が理解しようとするのは無茶な話ですね。

 私は潔く諦める事にしました。


「まずカール殿下にお聞きします。貴方様はここにいるカロリーナ・ナロス男爵令嬢に弟であるカミュウ殿下の事を自分の手駒だと侮辱したのは、間違いありませんか?」

 宰相にそう言われて、夫は顔を引きつらせました。

「な、何を言っている、宰相⁉ 俺がそんな事を言うはずがないだろう」

「ですが、そこに居るカロリーナ嬢が叫ばれました。私もそうですが、そこに集まっている令嬢や騎士たちも証人です」

 そう言って、私たちの方を手で示しました。

 あまりにも沢山の証人に、夫の体は揺れました。

 眩暈でも起こしたのでしょうか?


 頭を抱える仕草に、思いもよらぬ事を言われたと錯乱しているのが分かります。

「ちょ、ちょっと待て。なんでそんな話が……。一体、何をしていたらそんな言葉を叫ぶ事になるんだ?」

 夫の言う事は最もですね。

 宰相が、まずはカロリーナ様のカミュウ殿下への無礼を説明しました。


「先程、廊下で初めてお会いしたカミュウ殿下に向かって、カロリーナ嬢が鼻を突くという不敬な態度を取られたのです」

「は?」

「それを注意したところ、閨でカール殿下がカミュウ殿下の事を優秀だが単純な手駒だと話していた事を叫ばれたと、そういう訳です」

「いや、待て待て待て。そんな説明で分かるものか⁉」

「ですがこれが全ての状況です。正直、カロリーナ嬢の行動は私どもには一切分かりませんでしたので」


 最小限にまとめた宰相の説明は、本当に意味が分かりませんでした。

 悩む夫に、カロリーナ様が自分の口から説明いたします。

「だって、カール様の弟が子供なのに偉そうな言葉を吐くから、未来の姉としては今のうちに注意しておこうと思ったのよ。でも叩く訳にはいかないから、鼻をツンと突いただけにしたの。そうしたら不敬だとか何とか言って怒るから私、我慢できなくなってついカール様が言っていた事を話したの。弟のクセに兄に逆らっては駄目だって。いずれはカール様の手駒として働かされるんだから、今のうちに傲慢な態度は改めなさいって躾しただけよ」


 そのあまりの言葉に周囲はもちろんの事、夫も愕然としております。

 シンと静まり返る部屋に、陛下の低い声が響きました。

「……カロリーナ嬢といったか。貴様がカミュウの未来の姉とはどういう事だ? カミュウがカールの弟だからといって、どうして貴様が王族を躾する?」

 怒りを含んだそのお声には、誰もが固まってしまいました。

 カロリーナ様と一緒に居た令嬢などは、カタカタと震え始めています。


 それでもカロリーナ様は、陛下の怒りに全く気付く気配がありません。

 フンと顎を上げて鼻息荒く答えます。

「だってカール様はいつも私に愛してると言ってくれますもの。クレインなどは、ただのお飾りだ。クラウディアももう少しできる女だと思っていたが、体だけだった。あれでは年ばかり取ってその内自慢の体も崩れてしまう。やっぱり女は若い方がいいな。カロナは俺より二つも年下だから肌もピチピチだ。クレインと別れたらカロナを次の王太子妃にしてやるよって、体中にキスしながら言ってました。まあ正直、私としては王太子妃なんて面倒なので、側室でいいかなと思ってるんだけど」

「……………………」


 彼女の力説に、部屋中が何とも言えない雰囲気になりました。

 カロリーナ様の説明は、ただの睦言です。

 調子のいい夫の甘い言葉をそのまま、まるっと信じたカロリーナ様を私たちは信じられない思いで見つめてしまいます。

 ある意味、純粋、ある意味、馬鹿、ですね。

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