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【完結】憧れの人が期間限定の恋人になってくれるそうです。  作者: 島城笑美


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016 苦労性の従者の楽しみ ~ケヴィン・エチエンヌ伯爵子息視点~

オデットに続き、ケヴィン視点のお話です。

ヒロイン、ヒーローが放置されてて申し訳ない。



「ケヴィン様。またいらしたのですか?」


オデットが、レノー商会の倉庫に直接続く裏口を開けながら発した言葉に、少し首を傾げる。


「君が、倉庫整理の時なら少しお喋りできますよと言ったので無いですか?」


「言いましたけど・・・・まさか、本当にこんなに来るとは・・・・」


オデットとは、あの話し合いの後にも2回ほどお茶をした。だが、卒業式まで3ヶ月と迫ると商会が忙しくて時間が取れないと言われてしまった。


なら、何か手伝いをする事は出来ないかと名乗りを上げるとかなり悩ませてはしまったと思うが、倉庫の作業中なら話を出来るというのでこうやって押しかけて3回目となる。


「ケヴィン様。忙しくないんですか?」


「一応、僕たちにも休日というのはあるんです。僕とステファンはオクタヴィアン様と同学年で産まれた時からの付き合いで、殿下にも友人と言って頂いているので休みの日も共に過ごすことが多いだけです」


「産まれたときからですか・・・」


今日は、倉庫の品物の数量を確認してるとの事でオデットが手に持っていた紙の束を取り上げ記入は僕がすると伝えながら話を続ける。


「僕の母上が、オクタヴィアン殿下の乳母なんです。第二側妃様専属のね。第二側妃様の従姉妹に当たる人なんですよ」


「はぁ~。それでは幼少期から殿下に侍っていたということですか。大変ですねぇ」


「あぁ。本当に大変ですよ」


オデットは、男爵令嬢だがマナーはユルシュルと合わせて高位貴族用の講義を補修で受けていたと言っていたので全くの無作法が無く心地いい。

基本的には礼儀正しいが、仲を深めると遠慮ない指摘や先ほどのような砕けた物言いが増える。その砕けた感じも悪くないと思う。それは、彼女の人好きする性格と話し方が成せる技なのだろうとケヴィンは感じていた。


自分は言ったらきっと不快にさせてしまう言動でも小気味のいい会話になる事を凄いと思う。それに、他の人に話したことない自分の事も多く話してしまう。商人としてはかなりの武器だろうなと考えながら疑問を投げかける。


「これは、何をしているんですか?」


「今日は倉庫の在庫の確認ですよ」


「それは、分かります。何故、倉庫の在庫確認をするのですか?今、倉庫はいっぱいに見えるので不足したら補充するでいいのではないのですか?」


ケヴィンの不躾な質問にも、オデットは指を顎に当てて斜め上を見上げる。彼女の思案している時の顔だ。


「ケヴィン様は、商人は仕入れて品物を売るだけの役割だと思っています?」


「そうではないですのか?」


ケヴィンは素直に質問を続ける。オデットは数回話をして、ケヴィンは温和な人だと知ることができたが、高位貴族というものは下位の者に指摘されると激高するものだと思っていた。


オデットの話を聞いてくれる姿勢のケヴィンに続けて説明する。


「商人というものは、市場で出る物、顧客が好むものを調査し提供したり、お客様が求める物を的確に提供する面白い職業なんです!」


オリーブ色の瞳をキラキラと瞬かせて、ケヴィンに力説した。


「例えば?」


ケヴィンはほとんど表情は動かないが興味が無い事に質問をするタイプではない。オデットは先ほどキラキラさせた瞳を今度はパチパチと瞬いた。わざわざケヴィンが詳しく聞いてくるとは思ってなかったのだろう。


「例えばですか?」


「そう、オデット様はどんな時に商人が面白いと感じるのですか?」


「知りたいんですか?」


「あぁ。だから聞きました」


「まぁ~そうだとは思うんですが・・・何故知りたいんですか?」

(話したあとで馬鹿にされると、私はキレてしまう・・・この短気の性格治さないとは思うけど・・・機嫌を悪くされたかしら・・・?)


「なぜ?・・・・・そうですねぇ。私は、第五皇子の側近として幼少期より傍にいます」


「はい。先ほど仰っていましたね」


「なので、オクタヴィアン殿下の世話と共に過ごす事が日常であり、仕事なんです」


「幼いときからお仕事をされているという事ですよね!尊敬します!」


「え?尊敬ですか?殿下と共に過ごしているだけですよ?」


「そうですけど、それはケヴィン様のやりたいようにしているわけでは無いでしょう?お勉強のお時間もご一緒にお勉強されてると思いますが、余暇のお時間も殿下の傍にいてお世話をされてるっていう事ですよね?すごいと思いますよ?」


「あぁ。そうなのかな・・・自分の時間を割いて殿下の世話をしている。そうですね。ステファンと殿下は剣の打ち合いや、弓の練習を率先してやりたがりますが、私は本が読みたかったですね」


「ですよね!殿下の生活を共にするっていくことはご自分の好き勝手は出来ないじゃないですか!私もいつも私の趣味や仕事につきあってくれる侍女には感謝してますよ!」


ケヴィンはふふっと笑い。その様な主人は素敵ですねと微笑む。オデットと一緒にいると自分の表情筋は良く動くなとぼんやりと思いながら話を続ける。


「なので、他の仕事をしている方や、目指している方の話を常々聞きたいと思っていました。本は色々な知識を与えてくれますが、何故そこに向かったかなどの話は無いのです」


「そうですね。本は成果の集大成を書き記し広める為に作成されるものですからね。そういう事を知りたい方もいらっしゃるのですか。主観的な内容の物は少ないですけど、以前に読んだ冒険者の旅の日記は興味深かったです。


まだまだ、紙は貴重品ですから仕方がないのでしょうけど、大量生産が可能になったら色々な職業の方の自伝みたいなかたちで出すと読む方もいるのかしら・・・・」


オデットは最初は同調を示した返事をしていたが後半には自分の思考に入るようにぶつぶつと呟いている。また、商品の事を考えているんだろうと笑いがこみ上げる。だが、このままでは彼女の思考は戻ってこないし僕も質問の答えがほしい。


「オデット様。それで、この作業の意味は?」


「あっごめんなさい。すみません。素直に答えれなくて・・・・」


ケヴィンの声かけに、吃驚したように顔を上げたオデットは申し訳なさそうにオリーブ色の瞳に困惑をのせ、眉を下げる。あまり見たことない顔だ。


「いいですよ。また、新しい事を思いついたんでしょ?その話も後で聞かせて下さい。僕も何かお役に立てるかもしれませんし」


「あっ。ありがとうございます!ケヴィン様にそう言って貰えると心強いです!」


きらきらとしたオリーブ色の瞳は、楽しそうだなと思う。僕は殿下といてこんな瞳をすることはあるのだろうか・・・・。


「えっと、倉庫の確認の話ですよね!在庫の確認をしています。いつ、いくつ仕入れて今はいくつ残っているか、何処に納品したかなどもまとめている書類もあるのですが、数字として商品の動きは倉庫が1番最新を知ることができるんです」


「あぁ。そうですね。倉庫から品物が動いてることが納品になるんですね」


「そうです。なので、仕入れの日からずっと残っている物、仕入れたばかりなのにもう数の少ないもの。などを知ることで、当商会を利用して下さってるお客様の趣味や趣向、今の流行りなどが分かります。


それを元に、今後の仕入れの品物を選定するんです。もちろん、珍しいものや新しいものを仕入れますが、これは、あのお客様が好きそう。これはこの世代のお嬢様方が好みそう等色々考えるのに参考になるんですよ!」


「あぁ。僕が殿下とカディア様の好みや趣向、性格、得意・不得意を覚えてお二人に対応をするのと同じですね。しかも、不特定多数ですか・・・それはすごいですし、楽しそうですね!」


「楽しいですよ!その楽しさが分かるケヴィン様が殿下の側近でなければ商会にお誘いしたのに!残念です」


ふふっと笑うオデットの言葉にケヴィンも胸のあたりがきゅっと締め付けられる思いを覚える。胸の痛みを不思議に思っていると、笑いを治めたオデットが真っすぐな目でケヴィンを見つめた。


「ケヴィン様。素敵なお話相手、ありがとう存じます・・・・でも、ケヴィン様は何か他にも私にお話があるのではないのですか?」


ケヴィンはビクッと身体を震わせた。図星だった。小さく深呼吸をすると意を決して話始める。


「オデット様にお声がけしたのは・・・・ステファンの件で助言を頂けないかと思いまして・・・でも、すぐにこの件を出すのは不躾では無いかと・・・貴方のお話や僕のお話をしました」


「そうですね。私も身構えていたのですが、普通のお茶会でした」


「・・・・・ですが、お会いする度に・・・・楽しかったのです。貴方との会話は。今迄こんなに楽しく話が続いたことのある女性はいなかったんです。姉や他の令嬢方との上辺賛辞や流行りの身に纏う物の話が多く。カディア様とは執務や公務の話しかしません」


ケヴィンの話に、オデットは目を見開いている。オリーブ色目はくりくりと大きく、ラズベリー色の癖のある髪は柔らかそうだなと会話と関係ない事を思ってしまったケヴィンは視線を下げてしまいながら話を続ける。


「なので・・・・貴方に嫌われたくなくて・・・」


「え?私が?ケヴィン様を嫌うのですか?」


「はい。貴方の友人に無体な事をしたステファンを貴方は許せないでしょう?」


オデットは思案する顔になっている。嫌悪では無く困惑の顔をするオデットにケヴィンはそんなにも嫌悪を抱いていないのだろうか?と希望を見出しつつ言葉を出す。


「ですので、ステファンの肩を持つ私も一緒に嫌われてしまわないか・・・と」


「そうですね!ステファン様というか殿下のあの事についてはかなり嫌悪を抱いています!でも・・・・・シェルが、ユルシュルがデートの報告をするときすごく幸せそうです・・・しかも、すごくかわいくて・・・シェルは今迄かっこいい女の子だったから、シェルの可愛いを出したステファン様を嫌っているわけではないんですよ?それに、私の話に怒ることなくつきあってくれるケヴィン様を嫌うなんてあり得ません」


オデットの言葉に、ケヴィンは今度は胸のあたりはほっこりと暖まり顔が緩むのを感じた。でも、今はまずステファンの事だと自分に言い聞かせる。


「そうなんですか?・・・不躾ですが、僕の相談とステファンの力になってもらうことは可能ですか?」


「ステファン様の力ですか?」


「はい。ステファン、シュミット嬢と最近会えていないらしくて!新年の式典に向けて僕らも忙しいんですが余暇はあります。オデット様のところに僕が来てるように。でも、シュミット嬢にデートを断られているみたいで・・・」


「あぁ。今、お兄様も領地からいらしてますからね。でも、全く会えないのも・・・おかしいですね?」


「そうですよね。ステファンの落ち込みようが凄くて、やはりシュミット嬢も噂を知ってしまって避けているんでしょうか?」


「・・・・私。その話はシェルと話してないんです。ステファン様がなさる事かと思いまして・・・ステファン様はシェルを本当にお好きなんですよね?」


「はい。あれで、懸想してないって言われたら・・・人間不信になります・・・」


「そこまで、酷い落ち込みなんですね。ん~1回、私がステファン様とお話します!」


そう言うと、テーブルに置いた手帳をめくりオデットはブツブツと独り言ちてぱっと視線をケヴィンに戻し提案する。


「三日後のお茶の時間は、ステファン様のお時間空ける事できますか?」


「え?・・・・・・・今はあまり使い物にならないので・・・改善する為なら仕事は調整可能だと思います」


「いい助っ人がいるので、この日うちの提携のカフェに来てほしい事を伝えてほしいです!」


「分かりました。オデット様ありがとうございます。よろしくお願いいたします」


その後、ケヴィンは律儀にしっかりと在庫確認に全て付き合って殿下の執務室に戻り、側近たちの調整をリューイとしてステファンとケヴィンの三日後の午後を空けた。

拝読ありがとうございます。


いつも、誤字脱字を報告ありがとうございます。

なんで、そう書いた?私。ってのも多々あって読むのに邪魔ですよねぇ~申し訳ないです。そして、報告してくれる方お一人なんですがたくさんチェックしてくれて!本当に感謝です!

お名前出していいのかわからないのでこちらでお礼を!



ケヴィン・エチエンヌ伯爵子息(16)

髪型:くせ毛・ミディアム 髪色:ボトルグリーン(深緑) 瞳:グレープ

オデット・レノー男爵令嬢(16)

髪型:くせ毛ロング・ハーフアップ 髪色:ラズベリー 瞳:オリーブ



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