014 何をいっているんでしょう? ~オデット・レノー男爵令嬢視点~
ここ2日は、ユルシュルの親友オデット視点になります。
<オデット・レノー男爵令嬢視点>
丁度良かった。と内心オデットは心の中でつぶやく。
ユルシュルとは別の経済学の講義を終えた今日。突然、ユルシュルの恋人である青い顔をしたステファン・トリュフォー侯爵子息とうんざり顔をしたケヴィン・エチエンヌ伯爵子息に声をかけられた。
先週聞いた噂を問い詰めたいとは思っていたが、如何せん彼らは高位貴族だ、しがない男爵令嬢に声をかけられる存在ではない。どなたに紹介してもらい、話をしようか思案していた。
本人が、自ら来たのであれば男爵令嬢の私には断ることが出来ない.。正直ありがたかった。あからさまな不敬な事は言えないけど、何かしらの事は言ってやろうと息まいていると、王族専用地区へと歩みを進めている。
流石にまずいと思い、意を決して二人に声をかける。
「大変申し訳ございません。私ではこれ以上足を踏み入れることは叶わないかと思います」
オデットの声に、二人は振り返り何故?というように不思議な顔でオデットを見る。なんで、そんな顔で見られるのかオデットの方が知りたい。
「ここより奥は王族専用サロンの区間になります。王族に招待もされていないような側近でも無い他の貴族が侵入することは許されておられません」
あぁとケヴィンが納得したように声を出し、失礼しましたと言葉を続ける。
「今回は、オクタヴィアン第五皇子殿下からのご招待になります。一応、召喚では無く招待ですのでお断りすることは可能です」
「おいっ!」
ケヴィンの断ることも可能であるとつけ加えた説明にステファンはそれは困るというように遮る。ケヴィンはそのまま説明を続けたのだがオデットも断るつもりはないが断れることでもないだろうと心の中でつっこむ。しかし、1つ懸念が出てきた。
「有難くご招待をお受けしたいのですが、いくら身分差がありましても男性しかいない密室に入るような教育を受けておりません」
「申し訳ございません。自ら声をかけると言っていたのに何の説明もなくお連れしたこと深くお詫びします」
私の言葉に少し慌てたように深く礼を取りケヴィンが謝罪した。伯爵の子息であるケヴィンの姿勢にオデットが吃驚しているとケヴィンはさらに続ける。
「今回、オクタヴィアン第五皇子殿下の婚約者のカディア・ニコラ様も同席されます。侍女も数人部屋の中に待機しますのでご安心下さいませ。他に気になることはございますでしょうか?」
完全に敵地に赴くような状態ではあったが。オデットも引くことはできない。この場を逃したら、あの噂のこともこの人たちが何でオデットを呼び出したのかもわからない。
オクタヴィアン殿下の応接室へ入り、殿下とニコラ伯爵令嬢に挨拶を済ませると席に着く。
最新の注意を払い、商談の場に役立つかと思いユルシュルと一緒に受けたマナーの講義の脳をフル回転して思い出しながら淑女の微笑みを装備し、お茶に口をつけソーサーにカップを戻した瞬間。ステファンが縋るように切羽詰まった様に勢い込んで話始めた!
「シェルには、彼女には、本命の恋人がいるんですか!?」
「はぁ?」
急に、本題。というか斜め上からの質問に総動員した淑女がポロっとはがれる。慌てて取り繕うが、声が少しばかり上擦ってしまうのは許してほしい。絶対私の責任じゃないしとオデットは泣きそうになりながら言葉を返す。
「トリュフォー侯爵子息。何のお話でしょうか?貴方様はシュミット嬢の恋人ではないのですか?私も妙な噂を伺ったのでお聞きしたいと思っておりました」
きりっとした顔を取り作ったオデットの言葉に、ステファンは真っ青になりながら小刻みに震えている。そういえば、なんか頬がこけている。顔色も良くないし、目の下にはクマがくっきりある。いつものキラキラとした皇子より皇子然とした風貌は見る影もない上に、話しかけてきているというよりは一人ぶつぶつとつぶやくようにステファンは言い募る。
「だが、昨日の休みの日も先週の週末も予定があると断られんだ。しかも先週は・・・夕日色の髪の男と・・・・はぁ~」
そんな、ステファンを放置してニコラ伯爵令嬢がオデットに向き話始める。
「会話の初めからトリュフォー卿が失礼致しました。レノー嬢へは事実確認とご相談をしたくてお呼び立てさせて頂きました。突然のことで驚かせたかと存じます。
二人は説明できていたかしら?
トリュフォー卿は先週からあの状態だし、それにつきあっているエチエンヌ卿も疲弊していて貴方に無理を言って連れてきたのではなくて?」
優し気なカディアの口調に少しばかり、心が落ち着いた。でも、彼女は王家に選ばれた殿下の婚約者ただの優しい可愛らしい人では無いのだろうとオデットは気を引き締める。
「お心遣いありがとう存じます。こちらの区域に入る前にエチエンヌ伯爵子息にご説明頂きました。それに、私もお話したいと思っておりましたからお声がけ頂き助かりました」
低姿勢でありながら、堂々と自身の意見を述べるオデットにカディアは目を瞬き、関心するように頷きふわっと微笑むと言葉を返す。
「そう言って頂けると私としても心苦しくないわ」
そうにこやかに話すカディアの横には置物の様に姿勢よく座り、黙りこくっている第五皇子がいる。最初、威厳の為に黙っているのかと思っていたオデットだが。殿下が少しでも話にかかわろうとする素振りをするだけで、カディアの手が殿下の太ももにそっと置かれる。すると殿下の顔はみるみると青くなり、威厳のある風の置物に戻る。
あぁ。発言権がないのね。とオデットは少し遠い目になる。そんなオデットにカディアが本題とばかりに話しかけてきた。
「レノー嬢。先ほど、トリュフォー卿も仰っていたのですが・・・・シュミット嬢には本命の恋人もしくは将来を約束した方がいらっしゃるのでしょうか?」
カディアの問いに、オデットはオリーブ色の瞳に困惑をのせて目を瞬いた。何故、そんな質問が成されるのか。突発的に自分たちはユルシュルを騙しているくせにと怒りが沸いた。
しかし、ここにいる人々が自分より、自分の父よりずっと高位の人間で男爵家の商家など潰すことは容易いだろうと怒りを顕わにしないように周りに気取られないように細く息を吐き心を落ち着ける。
「そんな男性はいないと思われます。ユルシュルとお付き合いしているのはトリュフォー侯爵子息ではないのですか?」
なんとか、冷静に言葉を返し再度ゆっくり息を吐く。そんなオデットの問いかけにステファンはガバっと音がしそうなほど勢いよく顔を上げオデットに詰め寄ってくる。
「本当ですか!ユルシュルの恋人は私で間違いありませんか?では!あの、夕日色の髪の男性は?何故、あんなに心を許しているんでしょう?私は見たことがありません。やっぱり彼の方が本命では・・・」
言葉尻の方が、へなへなと小さくなっていくステファンの言葉をオデットは反芻する。
『夕日色の髪の男』
「その方はユルシュルのお兄様ではないですか?先々週の週末から商談で王都にいらっしゃっておりますよ。私も昨日お会いしました」
拝読ありがとうございます。
オデット・レノー男爵令嬢(16)
髪型:くせ毛ロング・ハーフアップ 髪色:ラズベリー 瞳:オリーブ
ステファン・トリュフォー侯爵子息(16)
髪型:ストレート・ショート・センターパート 髪色:レモンイエロー 瞳:ターコイズ
ケヴィン・エチエンヌ伯爵子息(16)
髪型:くせ毛・ミディアム 髪色:ボトルグリーン(深緑) 瞳:グレープ
カディア・ニコラ伯爵令嬢(14)
髪型:ストレートロング姫カット 髪色:チェリーピンプ 瞳:サファイアブルー
オクタヴィアン・リーヴバレンティ第五皇子殿下(16)
髪型:ストレートロング 髪色:カーマイン(赤) 瞳:ジョンブリアン(黄金色)




