011 思い出作りと罪悪感 ~ユルシュル・シュミット子爵令嬢side~
ユルシュルちゃんの心情が最近でてきておりませんでした!
今日はユルシュルの心中心のはずです。
周りが濃くなる・・・(困)
「カディア様のご用事は何だったんでしょうか・・・」
カディアに呼び出されたお茶会から辞し、帰路の場所のなかでユルシュルが独りごちる。
ガタンガタンと石畳を走る馬車に揺られながら、ステファンとの数々のデートを思い出す。あの【嘘】告から2ヶ月しかたっていないのに、色々な場所へ赴き、学園でも逢瀬をかわした。
「そろそろ、潮時なのかしら・・・・」
誰にも聞こえない、誰も答えない言葉が、ぽつりぽつりと零れる。
「卒業式まで・・・・では・・・・駄目かしら」
先ほどのお茶会のご令嬢は、誰もが高位貴族で婚約者がまだ決まってない方なのだろう。彼女たちの敵意と焦燥に罪悪感を覚える。
当代の皇帝の長子はユルシュルたちより、8歳年上。しかも、正妃様のご懐妊は婚姻から少し時間が空き、正妃様の第一皇子と第三妃様の第一皇女は同じ年となった。正妃の婚姻時期に皇子や皇女の婚約者や側近にするために高位貴族は挙ってその頃に婚姻し子を産むのが貴族の慣習というものである。
しかし、正妃様のご懐妊は三年ごとに召上げられた。第二妃、第三妃の第三妃が懐妊した時期より少しばかり早いだけで、婚姻からは6年経っていた。それからは、正妃様は第一皇子、皇太子になった第三王子、ユルシュルのお仕えするウルリーケ第二皇女、さらに四年後には第三皇女を賜った。
オクタヴィアン第五皇子は、第二妃様の二番目の御子で同母の兄弟としては第二皇子の兄がおり、母は辺境伯令嬢で竹を割った性格の持ち主で皇帝や正妃の補佐の立場。臣下として寄り添い兄もそれに倣った。オクタヴィアンは、陽気な伯父である辺境伯に気性が似ている。
第三妃様は、皇宮に不和を良しとしなかった皇帝に寄り第二妃様と同じ年ではあったが2つ上で学園を共に通ったことがある正妃様の強火の崇拝者であり、第二妃とも仲が良かったご令嬢が選ばれた。第三妃として選ばれ第一皇女、第四皇子、第四皇女を賜っている。
様々な要因が重なり、今の高位貴族の嫡男は第一皇子たちより6〜3歳年上が多い。ユルシュルたち世代よりは一回り年上となっていた。
若年の頃に婚姻となった夫人を持つ貴族たちの第二子、第三子は少し時を置かれてやっと第一皇子や、その4つ下で立太子された第三皇子の年齢に近しい者が多く産まれることになった。
現皇帝は兄弟が姉と皇帝の二人しかおらず、姉は海の向こうの国へと望まれ嫁いだ。貴族院は王族の少なさを危惧しており、仲の良い妃たちならばと多くの御子を求められていた為、その後も御子を賜ることが叶った。
王族しか第二夫人を認められていない帝国で、子を産むにも多大なリスクを伴う。家政も滞る。高位貴族の子供たちが第一皇子に近しい時期に集中するのは致し方なかった。
少し年齢の下の者達に子供たちは少なく、いわゆる下の子第四皇子や第五皇子、皇女達の婚姻相手や側近は貴族間のバランスも加味されて他国か伯爵家が多く指名された。
嫡男が、第一皇子よりも少し離れた高位貴族は数が少なく、他家から婚姻を多く望まれる立場になる。しかし、多くの貴族に望まれる場合。危険が多くなるのは考えられることであり、争いを危惧する家々は皇家へと相談をし、皇女殿下の降下先として婚約が多くなった。
そこで困るのが高位貴族の令嬢方である。
「ステファン様は、お立場もお人柄も素晴らしい人だもの・・・」
ユルシュルは、【嘘】の告白を利用して思い出を享受している。これからの人生を一人で生き、自身を見い出してくださったウルリーケ皇女殿下に捧げると誓っている。
だから、思い出がほしかった。たとえ、ステファンに悪し様にされようともかまわなかった。いやいやでもユルシュルの成績を下げる為にたくさんデートに連れて行って貰えると浅ましくも期待した。
しかし、ステファンは優しく、慈しむように対応してくれた。まるで本当にユルシュルの事を愛おしむように振舞うステファンの演技力に感嘆するばかりだった。
きっと、仕事にストイックな方なのだろう。ユルシュルはますますステファンのファンになった。
お慕いしている俳優がお仕事で自分に恋人という夢を魅せて下さっていると・・・幸せに浸っていた。
でも、その幸せは・・・・
同世代の誰かの伴侶としてだけ教育を受け、自立の道を示して貰えなかった令嬢たちの苦しみの上にいるのだとユルシュルは気が付いてしまった。
私の時間は、長い人生の中の6ヶ月だけなのだと開き直りたい自分と早くステファン様の隣を彼のお嫁さんになれる立場を誰かの為に空けなくてはいけないのでは無いかとユルシュルは自責の念に押しつぶされる。
学園とユルシュルの住む叔母の家はさほど離れていない。学園は皇宮の『夜明けを表す』東側に建てられており、その近くには領地を持たない城勤めの貴族たち用の小さなタウンハウスがあり、城の女医として働く叔母の家もその一角にある。
20分ほどでは何も考えがまとまらず、家に到着する。スルリと馬車は止まり、一時待つと御者が扉をあけ手を差し出す。ありがとうと手を借りておりると玄関でいつもの笑顔のいつもの侍女に出迎えられ少し心が緩む。
「只今帰りました」
「おかえりなさいませ。ユルシュルお嬢様。お手紙が届いておりすよ」
弾むような侍女のマーヤの声に、緩んだ身体が少し固まる。ここ半月はウルリーケ皇女殿下のご予定に合わせあわただしくしていたが昨日より学園を楽しめとウルリーケ様よりしばしの余暇を与えられている。
時にふれ暫し生まれる罪悪感が、今日また顔を出したところでステファンからの誘いを断る理由を失っている事にユルシュルは溜息をついた。
部屋に入ると、先ほど別れた侍女がいつものようにサルヴァに乗せ1通の手紙を持ってきてくれた。それは、いつも見る青緑の便箋では無くなんの装飾もないクリーム色のよくある無骨ともいえる便箋だった。
先ほどまで憂いを帯びていた表情はみるみるうちに喜色に変わり、手紙を開いてぎゅっと抱きしめる。
「マーヤ!明日のお休みは出かけるわ!馬車の用意と!うんと!可愛くしてもらえないかしら?」
「あらあら!お嬢様。お迎えでは無いのですか?」
「噴水広場で待ち合わせですって!ユリスのやりそうな事だわ!」
にこにこと幼いほどに嬉しさを隠さないユルシュルの珍しい顔にマーヤはあらあらまあまあと一層優しく微笑みを返し承りましたと答える。
拝読ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます!
もう、本当にあんなにたくさんのお手間と、文章に集中出来なかったであろう申し訳なさでいっぱいです。
基本迂闊な人なので、是非今後ともよろしくお願いしたいです!いやっ!無いように努めます。はい。
ユルシュル・シュミット子爵令嬢(16)今年で卒業で成人
髪型:ストレートロング一つ三つ編み 髪色:シアン 瞳:スカイグレイ
マーサ・バシュ元男爵令嬢(38・現在貴族籍なし・現ウルズラの家の侍女)
髪型:ウェーブセミロング。編み上げ 髪色:チョコレート 瞳:オレンジ




