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第1話 新たな始まり

前作『War Pretend ~白華学園銃撃譚~ 』をご覧いただいているとより楽しむことができます。

「もう一本行くぞ~!」


 今日今日とて戦場(フィールド)で賑やかな声が響く。

 『トイ』という名の特別な武器達を手に取り駆け回り、身を潜め、撃ち合い、斬り合い戦う五対五の戦場シミュレーターゲーム『War Pretend』略して『ワープリ』。

 宇宙(そら)よりもたらされたUCI。それは飴細工よりも簡単にあらゆる形へ変化し鉄以上の強度を有することができる特殊物質。

 この万能素材によって作られた現実に模した風景の中で戦う競技。もちろん撃たれたからってケガをすることは滅多に無い。だからこそ世界中、老若男女に愛されている。

 俺はそんなワープリの指導者として活動している。まぁ、プロという立場ではなくアマチュアだが。

 そんな夢追い人にしか頼らずを得ない位追い詰められていた白華女学園ワープリ部。全国大会優勝校との練習試合に何とか勝利し、OG様方の期待を受け取ることができ何とか廃部危機を乗り越えた。

 今日は白華ワープリ部復活初日の部活となる。


「こっちに釣ることができたよ! 今のうちに攻めて!」


 明るい声で皆を引っ張る、やると言ったらやる頑固者。

 俺をこの白華に引き寄せた張本人。高等部一年、部長の槿蘭香(むくげらんか)


「ノリノリで攻めていきマース!」


 攻めっ気マシマシアメリカンな金髪レディ。

 たまに目のやり所に困ってしまう。中等部三年、セイラ・アキレーア。


「蘭香、前に出すぎ。引き込むのよ」


 冷静沈着、小柄ながらも頼り甲斐は部内一。

 しかし、距離感というか心の壁を感じてしまう。高等部一年、八重菫(やえすみれ)


「射線通りました……う、撃ちます!」


 部内最高身長、まだ成長途中のオドオド系な超パワー。

 男が苦手らしいので細心の注意が必要不可欠。中等部二年、南京向日葵(なんきょうひまわり)


「後詰はウチの役目っしょ!!」


 将来が想像不可能、無限の枝分かれな天才ギャル。

 一ヵ月で俺との歴代メッセやり取り数トップに君臨。中等部二年、野茨鈴花(のいばらすずか)


「よし! もうこのレベルだと安定して突破できるようになってきたな。次からは敵ユニットのレベルを一段階上げていく。連携の意識を高めていけば難なく突破できるはずだ」


 そんな子達を導く役目を担っているのがこの俺アマチュアコーチの鉢谷達也。

 全国屈指のお嬢様学校のこの子達に比べると明らかに釣り合っていない、格が何段階も下がってしまうのが玉に瑕だなぁ……。


「……──よし、今日はここまで!」

「あれ? いつもと比べて短くないですか? それに大分軽かったですよ」


 蘭香は熱の篭った顔でまだまだやれると言わんばかりに腕を振り上げている。

 時計が指している時刻は17:00。普段より30分近く早くて疑問を浮かべているようだ。

 声を出した蘭香だけでなく他の皆もそんな感じだ。一ヵ月前だったら体力ギリギリでへばっていたのに大きな成長だと感慨深い。

 白華女学園はお嬢様学校、18:00の完全下校は厳守するのは絶対。それでも普段は17:30で着替えやシャワーも含めると結構ギリギリになる。

 そんな皆の疑問への答えはコレ──


「昨日の練習試合の疲労が溜まってるだろうからな、昨日の感覚を忘れない程度に身体を動かしてもらうことにしたんだ」


 廃部という追い込まれた状況──その中での練習試合は皆のレベルを上げることになった。

 自分達よりも強い存在にぶつかることで生存本能のような闘争心が刺激され蓄えられた知識や経験から最善最高を肉体が選び続けた。

 それはつまり研ぎ澄まされた動きへと繋がっていく。

 ただ、負担も大きいのも当然。休息を疎かにすればあの経験は身体に染み込むことは無い。


「なるほどぉ~さっすがコーチーっしょ! そーゆーことなら遠慮なく休むし」

「そうね。散々休憩の大事さを教えてくれたのだから従うべきね」


 皆、納得してくれて大人しく着替えに向かってくれた。

 ──この一ヵ月で確かに皆のレベルは上がった。全員頭が普通以上に良いこともあって教え甲斐もありすぎる。乾いたスポンジのように戦術戦略をガンガン吸い取って記憶してくれる。彼女達の成長には俺がどんな(技術)を与えていくかにかかってくる。

 ただ、個としての問題は無くとも現在白華ワープリ部はこの五人しかいない。試合の際のフルメンバーと同じ。控えがいない問題がある。

 練習試合で生徒のどなたかが興味を持って入部してくれないか期待していたが増えることはなかった。まだ試合が終わった次の日で気が早いかもしれないが……。

 昔は白華ワープリ部は一世を風靡したが時代が変わってしまったのだろうか?

 このまま控えもいない状況で戦い続けるのは中々厳しい。一人ができる動きには適正や性格で限界がある。だから人数が多い方が選べる戦略も増える。

 何より疲労、病欠、万が一のケガ。365日無病息災で全員が過ごせていると考えるのは都合が良すぎる。せめて一人か二人──新しい風が入ってこなければ夏の大会『流星祭』で本戦まで進むのは難しいだろう。

本作を読んでいただきありがとうございます!

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