フェンリルとの契約
「フェンリルさん、質問ですけど、その子を食べようとしているの?」
「もちろんだとも…」
フェンリルが返事をした。
それを聞いて、メアリーは手を左右に振りながら言った。
「いやいや、そんなことはない。だって、あなたはこの子と一緒に魔法学院に行くことになっているはずでしょ。そのぐらいのことはちゃんと覚えているんだから……」
メアリーが呟いていた。
それを聞いて、フェンリルは困った顔をしていた。
「お前は何を言っているのだ?」
すると、森の中からドラゴンが顔を出していた。
フェンリルに語りかけていた。
「フェンリルよ。まあ、落ち着け。こやつは頭がおかしいのだ。ずっと、変なことばかり言っている。ただ、よくわからないのだが、こやつはワシの秘密を知っていた。下手にかかわらん方が良いぞ。むしろ、お前が頭もかみ砕いてしまっても良いんだがな…」
「今日はおかしな日だな…。ドラゴンが来るとは珍しいこともあったものだ。なるほど、確かに、この女からは異質なものを感じるな。まるで、この世界にはないような匂いがしている。異物と呼ばれるような存在なのかもしれないな。そんなものを食ったら腹を下すに違いない。そんなこと、ドラゴンであるお主だってわかっていることだろ?」
「それはそうだな、こやつが異物であることは確かだろうな。ただ、ゲテモノの方が上手いともいうじゃないか。どうじゃ、食べてみては?」
「断るね。ワシはそんなもの好きではないからな。さらに、この女、ずっと、ぶつぶつ話しているのが恐ろしい。早く、この女を連れ帰ってもらいたいものだよ…」
そう言うと、フェンリルはフランソワを見つめていた。
早く食べたいらしい。
しかし、それができないでいた。
メアリーのせいである。
すでに、メアリーがヤバいやつということにフェンリルは気が付いていた。
その時、メアリーが大きな声を出した。
「ねえ、この子を食べるのは止めてくれない? そうしたら、この子の秘密について教えてあげても良いんだけど?」
「秘密?」
「そうよ。あのね。この子は青い月の使途なの。まだ、その力に目覚めてないけど、しばらくしたら目覚めるわ。あなたはこの子を助ける従魔であり、世界の神と呼ばれるようになるのよ。さあ、それを聞いたら食べることなんてできないでしょ?」
「青い月の使途なんて興味もない……」
すると、ドラゴンの声がした。
「フェンリルよ。青い月の使途の力を得た女を食べれば、お前にも青い月の力が入ることになるかもしれないぞ。それなら今食べるのは止めた方が良いのではないか?」
「なるほど、それは一理あるな……」
「へー、ドラゴンもいいこと言うじゃん。ね、わかったでしょ? お願いよ…」
「なるほど、わかった…。それなら食べるのは止めておこう…」
「ありがとう。じゃあ、従魔契約をしてね~」
「では、契約をしよう…」
「そう、良かった。ありがとう。じゃあ、お願いね…」
「わかった…」
突然、ピカッと光がメアリーとフェンリルを包む。
ふと、右手を見ると、メアリーの手には契約の紋章が刻まれていた。
「あれ? なんかおかしくない?」
「何も問題などないぞ。これで、お前との契約は完了したということじゃ…」
「あー、そっか~。そうそう、私とフェンリルが契約して、全ての問題が解決できましたと…。ってなにしてるんじゃーっ!!!! 何で、私と契約してるの!?!?!?」
「ダメなのか!?」
「あなた、フェンリルでしょ!?」
「そうだが?」
「ああ、ダメに決まっているでしょ…。フェンリルさんね…。今すぐ、この契約を破棄してくれないかしら? そうしてこの子、フランソワと契約してほしいのよ!!!」
「それはできない。一度、契約してしまうとお前が死ぬまで無理だな」
「クーリングオフは無理ってこと!? マジ、悪徳業者みたいなのことしてくれてるじゃん。あー、じゃあ、悪徳令嬢としての私の役割はどうしてくれるのよ!?」
「ドラゴン、こやつは何を言っているのじゃ!?」
ドラゴンは呆れているような顔をしていた。
「こいつの話は無視しても構わない。むしろ、かかわらないのが一番だと思うがな…」
「なるほど、そのことがよくわかったわ…。もう契約をしてしまったが…」
「まあ、どうにかなるだろうさ…」
ドラゴンとフェンリルはメアリーを見つめていた。
ただ、メアリーはフェンリルと契約したことを嘆いているだけであった。
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