誘拐犯を追いかけて④
古代の森の深奥へと足を踏み入れた。生い茂る古木の葉が大地を覆い、上空からの月明かりが差し込むこともなかった。
メアリーたちは深い闇の中を走っていた。
幼い少女アンリはメアリーの腕をしっかりと掴んで離さなかった。
後方から、トラ猫のけたたましい咆哮が響いていた。
「トラ猫ちゃん、頑張っているみたいね…。それに比べてさ…」
メアリーはドラゴンを見つめた。
視線を感じると、ドラゴンは大きくため息をついた。
「何か言いたそうだな…。ただ、こちらだっていろいろ頑張っているんだからな…」
「はいはい、そうですね…。ただ、辺りが暗いわね…」
メアリーは呟きながら、前方に視線を戻していた。
その時、アンリが魔法の光を灯していた。その小さな光はホタルのようにほんのりと照らしていた。
「アンリちゃん、ありがとうね~」
メアリーはアンリをぎゅっと抱きしめた。
アンリは照れている。
「さあ、行きましょう!!」
しばらくして、メアリーたちは大木の根元に開いた大きな穴を発見した。
大地が切り裂かれたかのような大きな穴である。
「きっと、ここね…」
そう言うと、メアリーは大きな穴へと飛び込んでいた。
「うきゃあぁぁぁぁぁぁ~、落ちる~~~~~~~!!!!!!」
アンリの絶叫が洞窟内にこだました。
メアリーはその小さな体を両手でしっかりと抱きしめていた。
闇の中へと落ちていく。
「大丈夫よ!!」
メアリーは不安そうなアンリを見つめていた。
深い闇に落ちていく。
見事な着地をして、舞い上がった塵の中にメアリーの姿が現れていた。
恐怖に震えながら、アンリはメアリーに抱きついていた。
「あの、メアリーさんは平気なんですか?」
「このぐらいの高さならね。まあ、ちょっと高いけどさ…」
「いえ、高すぎですよ…」
アンリは落ちてきた穴を見上げていた。
20メートルはあっただろうか…。その深さを見ると、アンリは恐怖がよみがえっていた。
◇ ◇ ◇
メアリーたちは地下に辿り着いていた。
天井から水が滴り落ちていた。その場所は人工的な壁に覆われていた。壁には装飾が施されており、人が生活している空間であることがうかがえた。
その時、メアリーはドラゴンのしっぽをぎゅっと掴んでいた。
「何故、お前はワシのしっぽを掴んでいるんじゃ?」
ドラゴンの声がした。
「どらちゃん、アンリちゃんに何かあったら困るから守ってくれないかしら?」
メアリーはドラゴンに頼んでいた。
「仕方がない、そのぐらいなら手伝ってやろうか…」
「ありがとう。じゃあ、お願いね~」
そう言うと、メアリーはアンリをドラゴンの背に乗せた。
アンリを乗せると、ドラゴンの声がした。
「この先に、フランソワがいるようだ…」
「そうなんだ…。ただ、フランソワがいるのに、どうして王子は捕まってしまったのかしら…。強い相手がいるのかが気になるわね…」
洞窟の奥は迷路のように入り組んでいた。
メアリーの声が聞こえた。
「ほら、地底の底まで辿り着きそうよ!! さあ、王子とフランソワを助けに行きましょう。ただ、その前にマスクを付けないといけないわね…」
そう言うと、メアリーはポシェットからマスクを取り出した。
アンリは不思議そうな顔をしていた。
「どうしてマスクをつけるのですか?」
それを聞いて、メアリーは得意げに言った。
彼女は笑っていた。
「だって、私は悪役令嬢なのよ。ヒーローになんてなれないわ。だから、私のことは青い月の上位精霊のメルンと呼んでね!!」
「え、メルン…」
「良い名前でしょ…」
「え…、はい、そうですね…」
その時、洞窟の奥から声が聞こえた。
エルムがそこに立っていた。
「あれ、どうしてここにメアリーさんがいるんですか!?」
◇ ◇ ◇
洞窟の奥に、エルムが立っていた。
エルムは魔法学院の同級生であるはずなのに、なぜこんなところにいるのだろうか。その傍らには、安らかな眠りにつくフランソワの姿があった。彼女の表情は安らぎに満ちているようだった。そして、フランソワまで一緒にいるなんて…。
「え、エルム、何であなたがここにいるの!?」
メアリーの声がきこえてきた。
その時、エルムは恍惚とした表情をしていた。
「ぼくですか…。ぼくは青い月の女神からの啓示を受け、フランソワさんの記憶を呼び覚ますための儀式を始めようとしていたんです…」
その笑顔を見て、メアリーは一抹の不安を感じた。
メアリーはエルムに声をかけた。
「ドラゴンの丘からいなくなったと思ったら…。あんたさ、フランソワに何かしたらただじゃ置かないわよ!!」
メアリーが詰め寄ろうとする。
すると、エルムの表情が一瞬曇っていた。
「そんなことはしませんよ…。これは女神さまの願いなんです!!」
エルムの瞳には、狂信的な光が宿っていた。
メアリーは不安を感じた。
エルムが続ける。
「ごめんなさい。ぼくは青い月の女神のためにしているだけです…」
彼は迷いなく、一つの信念に身をゆだねているようだった。
「そんなことあるわけないじゃない。ゲームでも聞いたことがないわ…。仕方がないわ。あなたの計画は私が止めてあげる…」
「もう遅いですよ。ぼくは『龍の牙』を手にしているんです!!」
「『龍の牙』?」
「そうです!! フランソワさんの中にある青い月の力を目覚めてもらうんだ!!」
エルムは、龍の牙を掲げた。
その刃がフランソワの胸の上に置かれていた。
青白い光が、まるで生きているかのように洞窟内を這い回り、古代の壁画を幻想的な影で彩っていた。
青月の夜のように洞窟全体が神秘的なオーラに包まれていた。
エルムの背後には、カンダータとその仲間たちが無残にも倒れていた。
きっと、青い月の民の仕業だろう。
「さあ、女神様、目覚めてください!!!!」
エルムは高揚した声が聞こえ、空に向かって両手を広げていた。
その姿は、狂信的な信者のようだった。
その時、フランソワが目を開いた。
蒼白だった顔色に、わずかな紅が戻り始めていた。
「フランソワ、大丈夫!?」
メアリーは駆け寄ろうとする。
その時、フェンリルがフランソワを乗せて現れていた。
フランソワの声がした。
かすれた声で、メアリーに微笑みかけた。
「大丈夫です…。どうやら、こちらの世界に来ることができたみたいですね…」
フランソワの元気な姿を見て、メアリーはホッと胸を撫で下ろしていた。
しかし、フランソワの表情に違和感を覚えていた。
フランソワがゆっくりと口を開いた。
「私は全てのことを理解しました。メアリーさん、あなたを元の姿に戻してあげましょう!!」
「フランソワ、いったいどうしたの?」
メアリーの声がした。
その時、フランソワは冷たくメアリーを見つめていた。
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