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誘拐犯を追いかけて③

 メアリーたちはたくさんの男たちに囲まれていた。その時、薄暗い森の中には月の光が木漏れ日となって差し込んでいた。じりじりと迫ってくる男たちの姿を見ると、アレックスは剣を握りしめた。




「囲まれてしまったようだ。それも100人はいそうだな…」


 アレックスが呟いた。


「思ったよりも多いわね…」


 メアリーが応じる。


「そうだな…」



 アレックスは同意しながら、周囲を見渡した。

 メアリーがドラゴンを見つめていた。


「どらちゃん、手伝ってくれないかしら?」



 ドラゴンは大きくため息をついていた。

 ゆっくりと返事をした。



「無理だな。この場所で魔力を使えば、精霊たちに察知される可能性が高い。面倒なことに関わりたくはないからな…」


「そんなの、どうでもいいじゃない!」



 メアリーは不満そうであった。

 ただ、ドラゴンはあっさり拒否していた。



「オレはそうは思わない。これ以上の面倒はごめんだ…」


「良いわ。私がアイツらを倒してあげる!!」




 そう言うと、メアリーは前に進もうとした。しかし、少女のアンリが彼女の足にすがりついた。

 アンリはメアリーの足を強く握りしめていた。




「ちょっと、アンリちゃん、その手をどかしてくれない?」




 メアリーは優しく声をかけた。が、アンリの恐怖は消えなかった。

 アンリは不安そうな顔をしていた。




「ダメです。メアリー様が殺されてしまいます…」


「大丈夫だって…」



 そう言っても、アンリは受け入れなかった。


 その時、周りを取り囲んでいる男たちの声が聞こえてきた。

 メアリーに向かって声をかけてきた。




「おい、ドラゴンを知らないか? ここらへんに降りてきたと聞いて調べていたんだがな…」


「さあ、私たちは知らないわ~」


「本当か!?」


「ホントよ~、迷子になってしまったのよ~。ねえ、あなたたちのアジトまで連れて行ってくれないかしら?」



 メアリーは、そう尋ねた。

 その言葉を聞いて、男たちは警戒を解いていた。



「おい、ドラゴンのことを知らないってよ~」



 その声がすると、一人の男が茂みの中から飛び出してきた。

 威嚇するように刃をちらつかせていた。



「じゃあ、何したっていいんだよな~」


 男の声がした。


 すると、背後にはたくさんの男たちが姿を現していた。

 手に武器を持ち、殺気立っていた。

 それに気が付くと、アレックスは剣を握りしめた。



 アレックスは現状を打開する方法を考えていた。人数が多すぎる。全員を打破するのは難しいかもしれない。隙をついて逃げるしかないだろうか。いや、無理そうだな。正面から戦うべきか。どちらを選ぶべきか、アレックスは判断できないでいた。



 とっさに、アレックスが男に問いかけていた。




「いったい、お前は誰だ!?」


「オレか? オレはクレハ一族の若頭、セッキ!! いま、お前たちをぶっ殺しに来たんだ!! さあ、首を差し出せ!!!」


「ふっ、ふざけるな!!」


「はっはっはっ、面白い奴がいるじゃねーか。じゃあ、最初にお前からぶっ殺してやるぞ!!!」



 セッキがアレックスに向かっていた。

 2人の剣が衝突する。




  ◇  ◇  ◇





 アレックスとセッキの剣が激突するたびに火花が散り、森の中の空気が震えていた。段々、アレックスの剣はセッキの圧倒的な力に押し返されていく。



「 お前らも俺について来い!!」



 勝利を確信したかのように、セッキは高らかに声を上げた。

 クレハ一族の(しのび)たちが一斉にアレックスたちに向かって進んできていた。



 アンリは恐怖に震えている。

 アンリが離れないため、メアリーは何もすることができないでいた。


 複雑な表情でその光景を見つめていた。

 どうにかして、この事態に対処しなければならなかった。




「面倒なことになったわね…」





 メアリーは呟いた。

 その時、森の中から猫の鳴き声が聞こえてきた。



 大木にはトラ柄の猫が立っていた。



「こんなところで、クレハ一族の者と会うなんてな…。そうなると、クサナギ一族として黙っていられないにゃ~」




 トラ猫の周りには数人の忍びたちが集まっていた。

 その姿を見て、メアリーは喜びの声を上げた。




「あなた!! 電車に乗っていた猫ちゃんじゃない!?」


「うむ…、また会うことになろうとはな…」



 トラ猫は面倒臭そうにため息をついた。

 メアリーはトラ猫の肩に手を置き、満面の笑みを浮かべた。



「やっぱり、あの猫ちゃんなのね!! 手伝いに来てくれたんだ!!」


「パンダマンに言われたからにゃ…」



 トラ猫はそう答えた。

 パンダマンはトラ猫の知り合いであったらしい。



「まったく…、カースドラゴン様は来ていないようだしにゃ…。あのパンダに頼まれてきてみたら、面倒な奴がいるなんて聞いてないにゃ…」



 トラ猫は不満そうにぶつぶつと呟いていた。

 ただ、メアリーは楽しそうに笑った。



「へー、パンダマン、そんなことをしてくれたんだ。やっぱり、良いやつだったのね~」


「パンダマンなど気やすく言うにゃ。あいつは伝説の…。いや、そんな話をしている時間はなさそうだにゃ…」



 話を途中で遮ると、トラ猫は真剣な表情になった。


 その時、木々の間から無数の影が現れた。

 複数のクレハ一族の兵士が武器を携え、メアリーたちに向かって進んできていた。

 メアリーはその光景を見て、悪戯っ子の笑顔を浮かべていた。




「ふーん、私を倒せると思っているんだね~。良いわよ。全員、倒してあげるわ~…」


「まるで、悪魔のようなことを言うんじゃにゃ…」



 トラ猫はメアリーの言葉に顔をしかめた。

 メアリーは返事をした。



「そうよ、私は悪役令嬢なんだからね!!」


「何を言っているにゃ…。いや、お前と話をしても無駄ということはよくわかったわ…」


「そうね。今は戦いに集中しないとね!!」


「いや、そうだな…。ただ、こいつらはワシが対応してやる!! お前は、自分がやるべきことをやるにゃ!!」


「へー、優しいじゃん~」


「頼まれたからにゃ…」


「今度、お魚でも捕まえてあげるわね~」



 そう言うと、メアリーはトラ猫の頭を撫でた。

 トラ猫はその手を振りほどいた。



「止めろ、お前に言われたからじゃないからな。さあ、行くにゃ!!」


「はいはい、ありがとうね!!」



 すると、アレックスの声が後方から聞こえてきた。

 アレックスはメアリーを見つめていた。



「後方のことは俺に任せろ!! お前のために、オレは何だってするからな!!」


「ありがとう!! 猫ちゃんもよろしくね!!」




 メアリーは振り返りながらそう叫んでいた。

 アレックスは力強く頷く。



 メアリーの声を聞くと、トラ猫が大きな声を出した。



「誰が…、猫ちゃんだにゃ!! ワシはクサナギ一族の師範にゃんだぞ!! 今度、きっちりワシのことを教えてやるわ!!」



 そう言うと、トラ猫は唸り声を上げた。

 トラ猫の姿がみるみるうちに変化していく。猫の姿から、巨大なトラの姿へと変身していた。




「ふーん、すごいじゃん…」




 メアリーは笑みを浮かべた。

 彼女は少女のアンリを抱き上げ、森の中を走り出した。



 彼女は古代の森の奥へと向かっていた。


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