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誘拐犯を追いかけて②

「ザック!! 久しぶりね~!!!」


 メアリーが手を振りながら叫んでいた。


 ザイール村には日焼けした小麦色の肌と切れ長の目の男性が立っていた。

 ザックである。


 幼い頃の面影はほとんど残っておらず、すっかり大人の男性に成長していた。フランソワとの関係はどうなったのだろうかと、メアリーは一瞬考えたが、今はそんなことを言っている場合ではなさそうねと思っていた。


「お前、魔法学院に行ったんじゃなかったのか? どうしてこんな場所にいるんだよ!?」


 メアリーの姿を見ると、ザックは驚きを隠せずにいた。

 それを見て、メアリーはいたずらっぽく笑った。



「ごめんね、フランソワちゃんのことできたのよ」


「アイツがどうかしたのか?」



 ザックの表情が一瞬険しくなった。

 彼は真剣な顔をしていた。



「そうよね。あの子、この村出身だものね~」


「そんなことはどうでもいいんだ。アイツに何かあったのか!?」


「誘拐されてしまったのよ…。なので、ザイール村の近くにいる彼女を助けに来たってことなのよ」


「誘拐だって!?」



 ザックの瞳が大きく見開かれた。

 確かに、困惑した表情を浮かべているのも無理はなかった。ザックは主人公のフランソワの攻略対象の男性なのだ。まあ、主人公は死なないだろうけどねと、メアリーは一言声をかけたかった。しかし、冒険の前にそんな話はできなかった。



「だから、あなたにも手伝ってほしいのよ!!!」


「わ、わかったよ…。俺も、アイツを助けたいからな…」


 ザックは言葉を絞り出した。

 彼は不安そうな顔を見ると、メアリーはすべてを話したくなっていた。その時、メアリーは乙女ゲームのことを考えていた。この誘拐にはカンダータと青い月の結社が関係していたと思う。友人がそんな話をしていた。ただ、テニスイベントばかりしていたせいで、メアリーは詳しい内容を思い出すことはできなかった。



 そのため、メアリーは誘拐の話をすることにした。



「なるほど、きっと、犯人は古代の森にいるのではないか…。最近、あの森が騒がしいという話があったからな…」



 ザックの声がする。真剣な顔をしていた。

 さらに、ザックの声が続いていた。



「ただ、古代の森には大きなモンスターたちがいっぱいいるんだ。だから、村の人たちは誰もあそこにはいかないようにしているし、きっと、隠れるならあの場所で間違いはないと思うんだ」



 それを聞いて、メアリーは返事をした。



「わかったわ。じゃあ、古代の森へ向かいましょう!!」




  ◇  ◇  ◇




 月明かりに照らされた巨大な森は怪物が眠っているかのような異質な空間である。天に向かって、たくさんの巨木がそびえ立ち、森からは不気味な唸り声が聞こえてきた。それは、古代の森に棲む古代のモンスターたちの咆哮に違いない。その声を聞いて、アンリはメアリーの腕にしがみつき、不安そうに周囲を見回していた。ドラゴンは空高く舞い上がっていた。どうやら、ドラゴンは古代の森に入ることを嫌がっているようであった。上空から見ると、森の中には点々と灯りが見え隠れしていた。誘拐されたフランソワがその灯りの方にいるかもしれない。




「さあ、古代の森へ行きましょう!!」



 ドラゴンに声をかけると、ドラゴンは森へと降下していく。

 巨大な翼が空気を切り裂いていた。



 ドラゴンの不満そうな声が聞こえてくる。




「なんで、こんな場所に来なくちゃならないんだ…」


「別に来なくたっていいのよ」


「そ、そんなことは言っていない…」



 ドラゴンが返事をした。

 その姿は、まるで拗ねた子供のように見えた。


 その時、メアリーは森の中を見つめて答えた。アンリはドラゴンの背中にしがみつき、恐怖に震えていた。アレックスは大きな口を開けて空を見上げ、巨大な鳥たちに圧倒されていた。




「うわぁぁ~、でっかいな~~~~」



 アレックスの声が聞こえてきた。



「おい、巨大な鳥たちには関わらない方が良いぞ…」



 ドラゴンは低い声で警告をする。

 アレックスは驚きを隠せない様子で質問した。




「あの巨大な鳥は強いんですか?」


「まあ、そんなところだ…」


「そうなんですね。気を付けます…」


「わかっただろ、こんな場所に来るべきではないんだ…」



 そう言うと、ドラゴンは見知ったような表情をしていた。その時、メアリーの周りには無数の小さな妖精たちが群がっていた。キラキラと光る翅を羽ばたかせ、メアリーの冒険を応援しているかのようだった。たくさんの妖精を見ると、アンリが驚いた顔をしていた。



「こんなにたくさんの妖精を見たことがありません!!」


「へえ、そうなんだ…」


「きっと、この森には人間の姿をしている上位の精霊がいるんでしょうね。ああ、一度でいいから会ってみたいです!!」


 

 嬉しそうにアンリが妖精たちを見つめていた。

 メアリーはドラゴンに問いかけた。




「どらちゃん、あなたは上位精霊がこの森にいるかわかるの?」


「さあな…」




 ドラゴンはあくびをした。どことなく投げやりな返事をした。



「なんか、怪しいわね…」


「何だ。オレがおかしなことでも言ったというのか?」



 ドラゴンは不機嫌そうにメアリーを見つめていた。

 メアリーは食い気味に問いかけた。



「絶対、あなた妖精のこと知ってたでしょ?」


「知らん。アイツらのことなんてな…」


「やっぱり、知ってるんだね~。上位精霊ってどんな姿をしているの?」


「ふんっ、どうでもいいことだ。あんな奴に関わらない方がいい。さっさと終わらせて、この場所から離れたほうがいいぞ。これはワシからの忠告だと思ったほうがいい」



 ドラゴンは厳しい表情でメアリーを見た。

 メアリーは悪戯っぽく笑った。



「ふーん、そんなことを言われると余計、気になってきたわね…」


「そんなことは考えない方がいいぞ…」



 そう言うと、ドラゴンは古代の森の奥地へ向かっていった。




  ◇  ◇  ◇





「ねえ、どらちゃん、この森の何処に犯人がどこにいるかわかる?」



 メアリーはドラゴンの大きな耳に語り掛けた。

 ドラゴンは深い溜息をついた。


 しばらくの間、ドラゴンは大きな髭をゆっくりと回転させていた。



「そうだな…。東の方、たくさんの人が集まっているようだな…」


「じゃあ、そちらに行きましょう!!」


「待て、どうも怪しい…」


「どうしたの?」


「待ち伏せをされているかもしれない…」



 そう言い、ドラゴンはメアリーの行動を止めようとした。

 しかし、メアリーは少しも恐れなかった。




「大丈夫よ。そいつらを倒してフランソワを助けるんだから!!」


「まったく、お前には計画というものがないのか…」



 ドラゴンはメアリーの無謀さに呆れていた。

 そんな会話をしていると、周囲が暗闇に包まれていた。

 次の瞬間、無数の光が森の中を照らし出した。

 気が付くと、メアリーたちは、何十人もの人間に囲まれていたらしい。




「ほら、言ったことじゃない…」



 ドラゴンは不満そうに笑っていた。

 アレックスは剣を手にすると、警戒しながらメアリーたちの前に立ちはだかった。



「どうやら、囲まれてしまったようだ。それも100人はいそうだな…」



 アレックスの声が聞こえてきた。

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