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パンダマンの正体

「うわああああ!全然、眠れねぇよ!!」



 アレックスが声を出した。

 その時、メアリーに蹴られて、アレックスはベッドから転げ落ちていた。

 


「いてててっ、いったい、どうしてこんなことになるんだよ…」



 夜空を見上げ、アレックスはため息をついた。

 背中に激痛を感じていた。

 起き上がってベッドを見ると、メアリーがすやすやと眠っていた。

 天使のように無邪気な寝顔である。




「どうして、メアリーは俺と一つのベッドで寝てんだよ!」



 彼は不満そうな声を出した。

 すると、メアリーは眠そうな目をこすりながら、アレックスを見つめた。



「あなたさ~、寝ぼけているの。明日も早いんだから早く寝なさいよね…」


「くそっ、何も考えてないんだな…」



 アレックスは言葉を失い、ベッドの下で眠ることにした。

 すると、宿屋の下の階から声が聞こえてきた。



 太っちょの宿屋の主人が、誰かのことを話しているらしい。

 アレックスは息を潜めた。

 彼らの会話を盗み聞くことにした。



 男たちの声がした。



「この宿に、パンダマンを探している二人組が来てるらしいぜ」


「ああ、そうらしいな」


「何か知っているか?」


「どうやら、町のはずれに住む老人が何か知っているらしい」





 パンダマン……?



 アレックスはその言葉にハッと我に返った。メアリーを起こさなければならない。

 しかし、彼女は深い眠りに落ちていた。


 目を覚ます気配は全くなかった。

 宿屋の外で数人の男たちが動く気配を感じていた。



 アレックスは決意を固めた。メアリーを背負い、男たちを追いかけることにしたのだ。メアリーもこのことを知っているはずなのに…。




 アレックスは闇夜に飛び出していた。





  ◇  ◇  ◇




「おい、起きろって!」



 何度声を掛けても、メアリーは目を覚まさなかった。


 荒くれの街は誰もいないかのように静まり返っていた。荒くれ者が多いという噂があるが、誰も家から出てこようとはしなかった。それだけ危険な場所なのかもしれない。



「あー、くそっ、俺はパンダマンが誰かも知らないのに、どうしてこんなことをしなきゃいけないんだ!」



 アレックスは苛立ちを隠せなかった。

 男たちを追いかける。

 気が付くと、男たちは小さな小屋の前に立っていた。



 見覚えのある小屋だ。リンゴを売っていた少女の家だった。

 男たちが小屋に入る。




 すると、怒声と叫び声がした。



「お前たち、パンダマンについて知っているみたいだな!! 俺たちはパンダマンに恨みがあるんだ!! さあ、居場所を言え!!!」




 アレックスは息を潜めて、事態の成り行きを見守るしかなかった。

 周辺は緊迫した空気に包まれていた。



「知らないわけがないだろ!! 痛い目にあいたいのか!!」



 アレックスはその声を聞くと、ためらうことなく小屋へと駆け込もうとした。



 しかし、男たちの悲鳴が聞こえてきていた。

 小屋のドアが開くと、慌てふためいて一人の男が飛び出してきた。



 その時、メアリーの声が聞こえてきた。




「やっと、パンダマンが現れたみたいね…。さあ、行きましょう!!」




  ◇  ◇  ◇






 気が付くと、メアリーが目を覚ましていた。

 まるでこの出来事を予期していたかのように、彼女は小屋の中へと入っていこうとした。



 アレックスは戸惑いの声を出していた。



「おい、いったい何が起きているんだ!?」



 メアリーの後を追って、小屋の中に入るとそこには蒼白な顔の老人が立っていた。

 その近くにはの男たちが倒れていた。


 メアリーは老人に向かって話しかけた。



「こんにちは。パンダマン、あなたにお願いがあるの。一緒に、王子を探してくれないかしら。まあ、悪役令嬢の私が言うことではないんですけどね…」



 メアリーの言葉を聞くと、老人は静かに微笑んだ。

 老人は問いかけた。



「ほう、私のことをご存じなのですね。あなたはいったい誰ですかな?」



 老人はメアリーを見つめていた。

 その時、メアリーは溜息をつき、面倒くさそうな顔をした。



「まだ、その状態なのね…」


 彼女は続けた。


「じゃあ、私が説明してあげる。あなたの使えるクサナギ一族のお姫さまを助けてあげたの。だから、あなたは私に手伝ってほしいのよ!!」


「なるほど、あなたはクサナギ一族のことをご存じなのですね…」



 メアリーはゆっくりと頷いた。



「お姫様が病にかかって、その薬をヒカゲさんにあげたの…」


「この老いぼれには詳しいことはわかりません…」


「まあ、そうよね…」


「ただ、私もシノビであった身、あなたが嘘をついているとは思いません。どうして、あなたのような方がどうしてこの場所に来られたのですか?」


「ホント、そうよね~。悪役令嬢である私が来るところじゃないわね~」


「悪役令嬢とは!?」


「ただね、どうしようもないのよ…。悪いけど、私の野望の手伝いをしてほしいの!!」


「野望とは!?」



 老人は困惑した様子でメアリーを見つめていた。

 メアリーは大げさに両手を広げた。



「私はこの世界の悪役令嬢になりたいの!!」



 メアリーは満面の笑みを浮かべた。

 それを聞いて、老人はメアリーの言葉に大きく笑っていた。



「なるほど、あなたが面白い人だということがわかりましたよ」


「そうでしょ。私は面白いのよ!!」



 老人は納得したようであった。

 そして、老人の目は鋭くメアリーを見つめていた。



「わかりました。あなたたちの依頼を受けることにしましょう…」


「ありがとう!!」


「あなたの推察通りです。私がパンダマンと呼ばれる存在です。ただ、今はパンダの白と黒は、私の死に装束でしかないのですが…」


「あら、そんなことはないわよ。アンリちゃんに渡した薬を飲めばあなたは元気になるわよ…」


「なるほど、そこまで考えていられたんですね…」




 老人は少し驚いた様子を見せた。

 メアリーは得意げに胸を張った。



「そうよ。私は悪役令嬢ですからね!!」


「悪役令嬢についてはよくわかりませんが…。きっと、あなたたちは誘拐された王子を探しているんですよね?」


「よくわかったわね。そうよ…」



 老人はそう告げると、静かに椅子に座った。

 その時、メアリーは倒れているアンリの手を優しく握っていた。



「では、これから調査をいたします。明日の朝、この小屋まで来てください…」


「わかったわ。アンリちゃんも大丈夫みたいだし。じゃあ、今日は宿に戻るわね~。さあ、アレックス、帰りましょう!!」



 メアリーはそう言うと小屋から出ていこうとした。

 アレックスは慌ててメアリーを呼び止めた。



「待てって。この町は一人で歩くのは危険だ。オレがいないと…」


「大丈夫よ。だって、私は悪役令嬢なんだから!!」



 メアリーは振り返らずに歩き続けていた。

 諦めたように、アレックスはメアリーの後ろを追いかけていくことにした。

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