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老人との会話

 薄暗い路地裏を少女が走っていた。その姿を見ながら、メアリーは意味深な笑みを浮かべた。

 メアリーの声が聞こえてきた。



「どうやら、フラグが立ったみたいね…」

「何だよ、フラグって?」



 アレックスは首を傾げた。

 その時、メアリーは既に歩き出していた。



「さあ、行くわよ!!」




 そう言うと、メアリーは荒くれた街のはずれにあるぼろぼろの小屋へと向かった。

 アレックスは、彼女の後を追いかけるしかなかった。




 小屋に入ると、薄暗く、埃っぽい空気が充満していた。


 粗末なベッドには老人が横たわっていた。

 老人が咳き込みながら、二人の姿をじっと見つめていた。




「お前たちは何しに来たんだ!」



 老人の嗄れた声が聞こえた。

 頑固そうな老人がメアリーを睨みつけたが、その時、メアリーは無邪気な笑顔を返していた。



「おじいちゃん、元気そうで何よりね~。私は、おじいちゃんを助けに来たのよ~」


「それは嫌味ですかな? 私はもう長くはない…」


「そっか。ただ、私はあなたを助けに来たの!」


「なるほど、あなたはまるで神にでもなったような気持ちでいるんでしょうな…」


「まあ、そうかもしれないわね~」



 その言葉を聞いて、メアリーは自信満々に微笑んだ。


 老人が咳をした。

 彼の病が進行しているようだった。



「大丈夫? 本当に、私はあなたも救うつもりなのよ!! ただ、聖女ではないけどね~」


「なるほど…」



 メアリーの言葉に老人は眉をひそめていた。

 老人は困惑した様子を見せた。




「1つ、お聞きしますが…、どうしてそんなことをするんです?」



 老人の問いかけていた。

 メアリーは少し考え込み、いたずらっぽい笑みを浮かべた。




「うーん、悪役令嬢だって人間ってことかな~」


「はははっ、この町に人間がいるとは思っていませんでしたよ…」



 そう言うと、老人は笑みを浮かべた。



 その時、ドアが開いた。

 ぼろぼろの小屋に、リンゴを売っていた少女が入ってきた。





  ◇  ◇  ◇





「おじいちゃ~ん、帰ってきたよ~」



 少女の明るい声が薄暗い小屋に聞こえてきた。

 直後、メアリーとアレックスの姿を目にして、少女はその場に足を止めた。




「あ、あなたたちはさっきの…。どうして、ここにいるんですか!?」


「言ったでしょ、私はパンダマンを探しているの!」



 メアリーは、いつものように無邪気な笑顔を見せた。

 それを聞いた少女は、メアリーの手を掴み、小屋の外へと引っ張り出した。




「あの…、パンダマンの話なんてしないでくれませんか!!」




 少女の目は怒りで満ちていた。



「あら、ダメだったかしら?」


「ダメに決まってるじゃないですか!! あなた、もしかして、私たちのことを全て知っているんじゃないでしょうね!!」



 少女はアンリという名前らしい。祖父と二人暮らしで、彼らはこの村にて隠された秘密を持っていた。

 もちろん、メアリーはそのことを知っていた。




「え、何のことかしら?」


「怪しいですけど…」


「ごめんなさいね。別に、怒らせるつもりはなかったのよ~」


「謝っても許されないです!! だって、あそこには祖父もいたんですよ!!」



 アンリは腹を立てていた。

 それを見ると、メアリーはポケットから小さな袋を取り出した。



「そじゃあ、お詫びに薬草を渡しておくわ…。きっと、あなたの祖父の病気に効くと思うのよ…」



 薬草の袋をアンリに手渡した。

 それを受け取ると、アンリの目を丸くしてメアリーを見つめた。




「え、どうして、何で、祖父の病気を知っているんですか?」




 アンリの声には驚きと困惑が混じっていた。

 メアリーは得意げに笑った。




「それはね、私が悪役令嬢だからよ!!」


「悪役令嬢って何ですか!?」



 メアリーは笑みを浮かべた。

 ただ、アンリはますます混乱していた。




「まあ、いいじゃない。これで、おじいちゃんの体調は良くなるのよ~」


「はあ…」


「ねえ、この町に宿屋があるわよね。そこまで連れて行ってくれないかしら?」




 アンリは、まだ状況を飲み込めない。

 ただ、少女はメアリーに導かれるように歩き出すしかなかった。



「もう、何を言っているのかがわかりません…」




 アンリは困った顔をしていた。

 メアリーは、そんなアンリの反応を楽しんでいるように笑った。



「「そうよね、普通だったら予定通りには進まない。それが人生というやつなんでしょうからね~。でも、私は宿屋で一日を過ごさないといけないの~」




 そう言うと、メアリーはアンリの手を優しく掴んでいた。

 その温もりに、アンリは戸惑っていた。



 ただ、仕方なく、アンリはメアリーとアレックスを宿屋へと案内することにした。





 ◇  ◇  ◇





 宿屋の前に辿り着いた。

 その時、アレックスは不満そうな顔をしていた。




「おいおい、待ってくれよ。どうして、こんな街に泊まらなくてはならないんだ!!」


「あら、私と一緒は嫌なの?」



 メアリーはそう尋ねていた。

 すると、アレックスは顔を真っ赤にした。



「そ、そんなわけじゃないけどさ…。ただ、家族からも了承を得てるわけじゃ…」


「あなた、変なことを考えてるんじゃないでしょーね!!」



 メアリーはからかう。

 それを聞いて、アレックスは自分を正当化しようとした。




「そ、そんなことを考えてねーし。オレは勇者の子孫なんだぞ!!」


「ホント、男って、いつもそんなことしか考えてないのかしらね。ねえ、アンリちゃん、どう思う?」



 メアリーは視線をアンリに向けた。

 アンリは、突然の質問に驚き、顔を真っ赤にしていた。



「な、なんで、わたしにそんなことを問いかけるんですか? わ、わかるはずがないじゃないですか!!」


「あら、かわいいこというのね~。ただ、そんなんじゃ、この荒くれた町では生きていけないわよ~」




 メアリーの声がした。

 それを聞いて、アンリはメアリーの言葉に反発した。




「あ、あなたには言われたくありません!!」





  ◇  ◇  ◇




 3人は宿屋に入ることにした。

 愛想のいい太っちょの店主がいて、彼らに小さな部屋を用意してくれた。

 ベッドが1つしかない。



 その部屋に、アレックスとメアリーが一緒に泊まることになった。

 夜が訪れ、部屋には静寂が広がった。



 明かりを消された部屋の中で、アレックスの声が聞こえてきた。




「うわぁあぁぁぁ、全然、眠れねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

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