アレックスの覚醒イベント 恋愛イベントへの誘い
月明かりに照らされた草原の上で、メアリーとマーガレットの二人は楽しそうに話していた。近くではドラゴンが座っている。この世界で、ドラゴンは信仰される存在である。人間に従うことなどないと思われているのに、2人の楽しそうな会話をしているのを見つめていた。
その時、メアリーの大きな声がした。
「ねえ、マーガレットさん、私たちって同じよね!? だって、私たちはフランソワを応援していると思うのよ!!」
それを聞いて、マーガレットが否定した。
「全然違うわ…。あなたは悪役令嬢なんでしょ。さっき、その話をしてたじゃない。私はフランソワを助けたいと思っているの…」
「じゃあ、一緒じゃないですか~。私、マーガレットさんが大好きなんです!」
「なんだか話が通じないですね…」
マーガレットは困った顔をしていた。
ただ、メアリーは笑っていた。
どうやら彼女は全く気にしていないようであった。
「いったい、どうしたらいいのかしら…」
「じゃあ、フランソワに聞いてみませんか?」
「そう言えば、明日、フランソワさん、勇者の子孫のアレックスさんとモンスター退治に行くんじゃなかったかしら…」
「じゃあ、そこに行きましょう!!」
◇ ◇ ◇
次の日、フランソワはアレックスと一緒にモンスター退治に出かけていた。馬車に乗り、2人はモンスターが出る草原へと向かっていた。ずっと、アレックスは不安そうな顔をしている。
「どうして、オレがこんなことを…」
アレックスはぶつぶつ呟いていた。
その姿を見て、フランソワはすっかり困惑しているようであった。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だよ…。フランソワ、君はぼくが助けるからね!!」
「ありがとうございます…」
「君は、何も気にすることはないよ…。ちょっと、辺りを見てこよう…」
そう言うと、アレックスは不安から馬車を下りていた。
ずっと、草原を歩いていた。
乙女ゲームでは、これがフランソワとアレックスの初めてのモンスター退治ということになる。
モンスターは最弱であり、簡単に倒すことはできるはずである。
ただ、アレックスは不安そうな顔をしていた。
その時、上空からメアリーの声がした。
見上げると、ドラゴンに乗ったメアリーは楽しそうに手を振っていた。
ドラゴンが馬車の近くに降りてくる。
ドラゴンの上には、もう一人、進行役のマーガレットの姿があった。
地面に降りるとメアリーが馬車に向かっていた。
それに気が付くと、アレックスは不満そうな顔をしていた。
「メアリー、どうして君がここにいるんだ!」
「あら、アレックスもいたのね…」
「当たり前じゃないか、これからぼくとフランソワはモンスター退治に行くんだからな!」
「そうよね。その話は聞いたわ…」
「もしかして、メアリー、君がぼくの手伝いをしに来てくれたのか?」
「そんなことじゃないわ…」
「え、手伝ってくれないのか…」
「だって、私は悪役令嬢なのよ!」
えっへん、メアリーは自信満々な顔をしていた。
その声を聞くと、馬車からフランソワの笑い声が聞こえてきた。
メアリーが手を振る。
すると、フランソワは笑顔で手を振り返していた。
「フランソワ、聖女ってのも大変ね…」
「そんなことはありません…」
「まあ、良いわ。どうせ、あなたならモンスターなんてすぐに倒してしまうんだから…」
メアリーはアレックスを見つめていた。
その時、アレックスの体はガタガタと震えていた。
「アレックス、あなた、どうして震えているの?」
「モンスターがいるんだ。当然じゃないか…」
「大丈夫、どうにかなるわよ!!」
「メアリー、君にはぼくのことなんてわからないんだよ…」
しばらくして、馬車が荒野に辿り着いていた。
たくさんの兵士たちが集まっていた。
戦うつもりはないらしい。兵士たちは勇者であるアレックスの雄姿を見たいと思っているようであった。その姿を見ると、アレックスは青ざめた顔をしていた。
メアリーはアレックスに声をかけた。
「さあ、行きましょ!!すぐにモンスターを倒してしまいましょう!!」
しかし、アレックスは動かなかった。
立ち止まったまま、ずっと青い空を見上げているようであった。
アレックスはペンダントを握りしめていた。
小さな声が聞こえてきた。
「おじいさま、ぼくはあなたのようになれるかな…」
アレックスは兵士たちの前に立ち、モンスターたちが現れるのを待っていた。
荒野には激しい風が吹いていた。
突然、モンスターたちの声が聞こえてきた。
森の中から、逃げ惑う動物たちが飛び出してきた。鳥たちは空に飛び立ち、たくさんの動物たちが逃げ出そうとしていた。一匹の小鹿が倒れていた。どうやら足を怪我してしまったらしく、逃げることができなくなっていた。小鹿の鳴き声がする。ただ、誰も助けることはできそうになかった。
「あの小鹿を助けてあげましょう!!」
メアリーの声がした。
しかし、アレックスは返事をしなかった。
アレックスは震えていた。
「もう嫌だ…」
モンスターたちの足音が迫ってくる。すると、アレックスは逃げ出したいと思っていた。動物たちが逃げているのに、どうして戦わなくてはならないのか…。違う、ぼくは勇者の末裔であるんだ。動け、オレの体、どうして動かないんだ…。アレックスが泣きそうな顔をしていた。その時、彼の肩にいたキタノカピラ(キツネの亜種)が飛び出していた。
「サラン、ダメだ、そっちに行くんじゃない…」
アレックスは困惑していた。
ただ、キタノカピラ(キツネの亜種)は小鹿の方に向かっていた。
それを追いかけるように、アレックスも走り出していた。
「くそっ、やってやろーじゃないか!!」
アレックスは剣を抜いて、モンスターたちの方に向かっていた。
◇ ◇ ◇
アレックスの姿を見ると、メアリーは笑みを浮かべていた。これはアレックスの勇者の覚醒イベントだと思う。乙女ゲームはちゃんと進んでいる。
そう思うと、メアリーはフランソワを見つめていた。
メアリーの大きな声が聞こえた。
「ねえ、フランソワ、これから、私と一緒に恋愛イベントに行きませんか!!」
それを聞いて、フランソワはきょとんとした顔をしていた。
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