魔力測定イベント②
「とやっ!!」
炎の魔法の実技検査である。メアリーは的に向かって小さな炎を当てていた。
どうしてこんな小さな炎なんだろうか…。
あ、怪しい…。
エルムの不審は募っていた。
もしかしたら、本当の実力を隠そうとしているのだろうか…。いったい、何故だろうか…。
「ふっふっふっ、エルム、私の魔法はどうだったかしら?」
「え、いや…。まあまあかなと…」
エルムは返事ができなかった。こんな自信満々であるということは、やはり、何かしらの意味があるということなんだろうか。メアリーがドラゴンを付き従えているのだから、何かしらの考えがあるような気がしていた。エルムは自分のことを考えることなく、ただメアリーの行動を確認していた。
◇ ◇ ◇
「エルム、あなたは凄いわね…」
魔力測定が終わると、メアリーの声がした。
気が付くと、エルムは最後の検査を終えて、フランソワの次に高い値を出していたらしい。
エルムは嬉しそうな顔をしながら、メアリーの顔を見つめていた。もしかしたら、メアリーはぼくの能力を最大限に出せるようにと、魔力検査でふざけていたのではないか。ぼくのためにふざけているのではないか…。いや、そんなことがあるのだろうか…。エルムはそんなことを考えていた。
その時、エルムはメアリーが世界最高の魔法使いであるゼクトの妹であることを思い出していた。昨日、エルムはそのことを知った。ゼクトに憧れ、エルムはこの魔法学院に来たのである。やはり、メアリーには何かしらの考えがあるのかもしれない。
そう思っていたが、メアリーの魔力は最下位に近い数値であった。
◇ ◇ ◇
全ての検査が終わると、英雄の子孫であるアレックスはメアリーの魔力検査を確認しに来ていた。
メアリーの前に来ると、冷たい目を向けていた。
アレックスの怒った声がした。
「一体君は何を考えているんだ。こんな結果だと、魔法学院を上位クラスには入れなくなってしまうぞ!!」
「いいのよ。私はフランソワを一緒のクラスに行きたいのよ!」
「フランソワ? ああ、聖女と呼ばれている女性のことだろうか…」
「そうよ、フランソワちゃん。きっと、あなたも好きになるはずだわ!」
「そんなるわけがないだろ…。まあ、いいが…。それで、お前はフランソワと同じクラスになって何をしたいんだ?」
「フランソワちゃんをイジメたいのよ!!」
「はあ!? おかしなことを言わなかったか? イジメたい? それは冗談なのか?」
「冗談じゃないわ。そうね。これは愛と言ってもいいかもしれない…」
「愛だと?」
「そう、悪役令嬢としての愛なのよ!!」
アレックスは沈黙していた。
すう~と息を吐くと、メアリーを見つめていた。
「何を言っているかはわからない。ただ、仕方がない。ぼくが何とかしようじゃないか。エルム君だっけ、後のことは君に頼んでも大丈夫だろうか?」
「はい、もちろんでございます!!」
エルムは嬉しそうな顔をしていた。
それから、アレックスは裏工作をするため、この場所からいなくなってしまった。
すると、一人の係員の声が聞こえてきた。
「メアリーさん、次はテニスの検証をすることになります。魔法訓練場に来てください!!」
その時、メアリーは喜んでいた。
「やっと来たわね。まあ、見てなさい。私がフランソワをコテンパンにしてあげるわ!!」
◇ ◇ ◇
テニスラケットを持つと、ふっふっふっとメアリーが笑みを浮かべていた。
その姿を見て、フランソワは呆然としていた。
「お、お手柔らかにお願いいたします…」
フランソワの小さな声がした。
お辞儀をすると、奇麗な髪がゆらめいて、草原のような匂いがしていた。
「フランソワさん、あなたの家って町はずれの小屋でしたっけ?」
「ええ、そうです…」
「羊でも飼っているのかしら? あなたからは草原の優しいにおいがしてくるわね…」
「はい、4頭の羊を飼っております…」
「なるほどね…」
そう言うと、ふっふっふっとメアリーが笑っていた。
フランソワは心配そうな顔をしている。
「何か、ご不快な思いをさせてしまいましたか?」
「そんなことはないわ。あなたらしくて良いと思うわね。ただ、紫外線の影響かしら肌が荒れているみたいね…」
「はい?…」
「それも、あなたらしくて良いわよね…」
「申し訳ございません…」
「あら、謝る必要なんてなくってよ…おっほっほほほほ~」
メアリーは興奮していた。
ゲームと同じ、フランソワは同じである。
そう思うと、高揚していた。
だけど、悪役令嬢として優しい言葉はかけられないなと思っていた。できることなら、兄のゼクトから貰ったUVカットのコスメを渡してあげたいが、そんなことをしたら悪役令嬢ではなくなってしまうだろう。ただ、そんなメアリーの笑みを見ると、フランソワは不安そうな顔をしていた。
「あの、何か悪いことをしましたでしょうか…」
「いいえ、何もなくってよ。さあ、テニスの模擬試合イベントをしましょう!! あなたのことをコテンパンにしなくてはならないのですから!!」
メアリーはテニスラケットをフランソワに向けていた。
テニスの試合が始まろうとしていた…。
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