魔法学院に辿り着く
ずっと空を見上げていた。
真上には太陽が輝き、渡り鳥たちが上昇気流に乗って飛んでいる。世界が広いことを確認し、どこまでも先に進むことができると感じていた。
「ああ、この景色をゼクト兄さまにも見せたかったな……」
独り言を呟きながら、メアリーは日が暮れるまでドラゴンと一緒に空を飛んでいた。
夜になると、メアリーは城下町を歩いた。雑踏の中で興味のある店を眺めたりしながら、いろいろな場所を歩き回った。町は平和の象徴のようで、たくさんの人で賑わっていた。階段を上ると、たくさんの男たちが芝生の上に集まっていた。
その時、1人の男性の声が聞こえた。
「海の町にて闇の精霊が現れたという話がある。私たちはその闇の精霊を従魔にするため、これから海の町の探索に向かうことにしようと思う。勇士たちは一緒に付いてきてほしい!!」
うぉ~と、たくさんの男たちの賛同の声が聞こえてきた。
メアリーは一人の男に声を掛ける。
「何かあったんですか?」
「ああ、海の町に闇の精霊が出たんだよ。その闇の力を手に入れようという話をしてたんだ!!」
「闇の精霊!?」
「なんだか、右腕だけ巨人のように大きいみたいなんだ。何かしらの特異な能力を持った変異体であるのかもしれない。それを聞いて、みんな気合が入っているんだよ!!」
「へえ、なんか面白そう……」
「君も、一緒に来るかい?」
「行きたい。でも止めておくわ。今日はもう戻らないと…」
そう言うと、メアリーが自分が住むことになるアパートに向かうことにした。すると、部屋では既にお手伝いの女性が食事の準備をしていた。フランソワーズ家に雇われている老婆で、名前はアンナという。父親のウィリアムが心配だったため、彼女がメアリーの世話役として魔法学院に来ることになったらしい。若い頃、彼女は騎士として名を馳せていた。
今でも、彼女は怒ると怖い存在でしかなかった。
アンナがメアリーを睨みつけていた。
「メアリーさん、あなた、いったい、何をしてきたの!!!」
彼女の大きな声が響いた。
その声を聞くと、メアリーはしゅんと体を縮こませた。
「あなたが乗った列車はずっと前に着いているのに、どうしてあなたは乗ってないのかしら? 本当に、どれだけ心配したかわかりますか?」
「ごめんなさい…」
「まあ、元気そうでよかったですけど…」
「はい、私は元気です!!」
「そういうことを言っているんじゃないんですよ!! 入学式までまだ3日あるのですから、それまで町の様子を確認しなさいね!!」
「町の様子ですか?」
「そうです。今日、近くにある宿屋の店主と仲良くなりました。そこに、あなたと同い年の息子さんがいるみたいで、明日、町の案内をしてもらえるように頼んでおきましたからね」
「えー、自由に町を歩きたかったのに…」
「どうせ、よからぬことでも考えていたんでしょ。私にはわかるんですからね…」
「そ、そんなことはないですよ…」
「怪しいわね…。明日はちゃんと私の言うとおりにしなさいよ!!」
「はい、わかりました…」
「では、お食事でもしましょうか。メアリーさん、お腹がすいているでしょ?」
「そうですね…」
メアリーは先ほど大きなタコを食べたことを言えなかった。やはり、アンナはメアリーの天敵とでもいうべき存在であった。お父さまに文句を言わなくちゃ、そう思いながら、メアリーは食事をすることにした。次の日のことを考え、その日、メアリーはベッドで寝かされることになった。
◇ ◇ ◇
次の日が昇る前、メアリーは起こされた。まだ朝の4時ぐらいだろうか。アンナは目を覚ましており、メアリーは服を着替えなくてはならなかった。
焼いたパンを手に持つと、メアリーは無心で食事をしていた。
眠っていたい。ただ、どうすることもできそうになかった。
こんな生活は堪えられない。
そう思うと、メアリーは部屋を飛び出した。
「じゃあ、いってきまーーーす!!」
そう言いながら、メアリーは走り出した。魔法学院の制服を着て。
まだ、予定の時間までには時間がある。ただ、どうしても彼女は走り出したい気持ちがしていた。
宿屋まで来ると、既に明かりがついていた。
店主の声が聞こえてきた。
「エルム、この子に町の案内をしてやれ!!」
そこには小さな少年が立っていた。
メアリーは弟のビルのことを思い出したが、それよりも小さいような気がした。
「え~、ぼくは闇の精霊を捕まえたいよ~」
と、エルムの声がした。
「馬鹿言え、お前が捕まえることなんてできるわけがないじゃないか。昨日、アンナさんに頼まれたんだ。この子に町の案内をしてやれ、エルム、お前は父さんの命令が聞けないというのか?」
「わ、わかったよ……」
エルムは渋々ながらメアリーを食堂に案内することにした。メアリーは後を付いて行く。
「あなたも大変ね…」
「仕方がないんですよ…。じゃあ、魔法学院の町について説明をしていきますね!!」
魔法学院にはたくさんの建物が並んでいた。
エルムは建物の説明をしていた。
ただ、それが新しいイベントの前触れであるとは誰も知らなかった…。
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