その暑い暑い日の 早朝九時の 熱い 熱い熱い 銀行の前
【作者からの挑戦状】
さて、これは とある、見た目は平凡な ロートル老人の、ある日の ある、已むに已まれずした蛮行の物語
この物語で、老人はとある一瞬だけ とある『なにか』をしました
それで街は 救われました
問題:彼は何をしたのでしょうか?
彼が何をしたのか? それは何処にも書きません
このシリーズをこれから展開したとしても、シリーズの別の話の中でも
仮にこの物語が他の物語の中で話題にとりあげられたとしても
二度と蒸し返される事は ないでしょう
さて、それでは、本篇です
最後に お や く そ く
この物語は虚構です
たとえ
何処かに 何処かで読んだような ネタが出て来たり
何処かで 何か見たことがあるような 家族が
登場したとしても
この物語は フィクションです
フィクションです
フィクションです
フィクションです
2024年 8月15日 埼玉県和奈美市某所 午前8時30分頃
〇簡素な寝室
冷房の効いた薄暗い部屋
何処かのワンルームマンションの様だ
部屋の入口から覗いた左側に
シングルサイズのベッドマットの様な物が置かれている
他には何もないようだ
〇 △ □
「はぁ…なんじゃこの最近の暑さは? マジで私らみたいなか弱い老人をKOROSU気かえ?
のぉ…地球さんや?」
そう呟いた瞬間、だけ、気温がマイナス30度にスウッ と 下がった気がしたが、気のせいだろう、たぶん…
この毎日の、この物凄まじい、超殺人的と言っても過言では無い酷暑の中、
この手狭も手狭、超手狭の超格安賃貸ワンルームマンションの室内、冷房だけは最新型を入れた(ただし自費)のでとってもギンギンに効いている
老人は独り言ちた
「中銀の金庫室に昔の契約書を見つけに行かねばならなくなるとは…はぁ、我ながら『まったくご苦労様』なお話だねこりゃ」
しかし、自分が持ってる筈の『旧契約書』が、海外在住の、疎遠だとは言え、実妹の娘である姪の為に必要だと言われたら?
「前回の住み替えの時に私の荷物に紛れ込んだのかねぇ。書類なんか無かったとは思うんだが」
酷暑の中、この『文明の砦』から、いざ出陣 する 時間が 近い しんどい
(今年で実妹も、もう57歳…よくそんな元気にキャンキャン吠えるだけの体力が残ってるもんだよなぁ。とは思わないでもない…思うのはワシだけか?)
さて、探しに行くしかない
よなぁ
熱いけど、しゃあないよなぁ~。
出たくないけど
実妹の為だ、し(ため息)
太陽惨惨 おは…よう さ ん・・・(暑暑熱熱)
「ぐぅ…」
いや…本当に出るものなんだな、『ぐぅの音』って…笑えないけど
ってそういや今まで、屋外は見とらんかったけど…なにこれ?
これって文字通り『灼熱の劫火吹き荒れし、煉獄すら温ぬるく感じるが如き世界』って感じや。ってそれどこの廚二病?
…と、ぽちぽち銀行が開く時間や
スマホで、タクシー会社で 銀行 これ一択やな
んんん? なんかどっかで誰かがなんか呟いとる
『なんでスマホで、ここら辺りではどマイナーなタクシー会社なM社を呼ぶんですか?』
そんなんな、実際に和奈美市来て、他の店呼んだら、一発でわかるわ!
真の『百聞は一見に如かず』案件ってヤツやで?
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お、来た来た。タクシー来よった
おう、運ちゃん、悪ぃな
『埼玉中央銀行』まで。A.S.A.P.で
ん、何鳩が豆鉄砲喰ろうたような顔しとんの?
解説したる、したるからクルマ出し
(ぶっちゃけ『出来る限り早よ行けや』って意味)
…まぁ道交法違反まではすんな、その限りで
ん? んんん? なんやあの自動車、前面ほぼ全損やないか?
速度は…なんちゅう!
こんドアホあんな速度で飛ばしとったら
って向かってる先が埼玉中央銀行って最悪かよ! このままイったら ぐぇ まだ何人か この暑さで ふらふ~らと 彷徨な人で皆クルクルクルルッパ~状態やんか
………
………
………
はぁ…
しゃぁないなぁ…
なぁ、運転手の兄ちゃん、あんた、これから、英雄な。
覚悟決めてくれ
アンタのクルマ。
まだ新車みたいやけど
あの、暴走車止めるんにヤらせてくれ
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そや そこでアクセル踏む! ハンドルは そう! アクセル踏めるきり! 思いっきり踏め!
躱せ! そこで躱せ! そしたらあの暴走車 そこや! そうや! そうそうそう よっしゃ~!
と、止まった!
兄ちゃんは車内でじ~っとしとり
危ない て?
ええねん、今更や
それにな、ワシが、あのどアホに、文句言いたいから、に決まってるやないか!
んじゃな
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バンっ!(どアホ車のドアオープン)
こらこのクソガキ! 一体何フザケタま
「うっせ~クタバレこのヒョロガリ糞ロートルッ」
ぼこんっ!(何か棒状の硬質金属製の長物的物体で殴られる音) がさがさがさっ…カランっ!
…ふぎゅう(意識暗転)
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「お~い、誰か~っ! 無事か~っ! 救急車っ、救急車っ~!」
「AED! 念のためにAEDも持って来~い」
「なぁ…いいのかあっち? ほっといても」
「いいさ、どうせヤツの持ってんのはタマが無ければ只の」
「AEDっ! 持って来ました~っ!」
「ヨシ、まだ使うと限ったワケじゃないけど、最後の備えとしてこれで完璧だ」
「ですね」
………
「…それにしても、流石は『あの方』だな」
「…ええ…最後はああやって単なる『巻き込まれた被害者』として現場から消え」
「野次馬の記憶にさえ『老人が巻き込まれた』程度の記憶しか残さずに去って行く」
「まったく…ホントに…本当に『あの方』らしい」
(活気ある喧噪に埋もれて行く現場)
〇MahooJapan RealTime News(見出しのみ)
2024.08.XX 09:00a.m.
《トップニュース》
・悪夢の華、開花寸前に枯死 埼玉中央銀行
《ニュース》
・『三丁目の田中さん』(コミック)ついに発行累計1億部を突破
〇同日深夜 埼玉県内の小さな診療所の一室
(聞こえるか聞こえないかのちいさなちいさな小声のようなもの)
んん? なに?
『なぁ、なんでこんなムチャやんの? ヤッタの? どうせニンゲンなんて』って?
いつもの自論やね
ん~、となぁ
そりゃな、オレもな、元々は「一人のニンゲン」やからや
ナニビックリしとんねん?
オマエ、オレのことナンヤと
…まぁエエけど
確かにな、あのスカタンどもにラチられ、あっちこっちツレまわされたかと思うたらソラにトばされ、ツカまれ、ハがされ、キりきざマれ、タマにマジコロされ、ブレスにケされ、プレスにツぶされ、ナぐられ、ケられ、またナグられ、してきたケドな、それでもな、それでもオレは…人間やねん
地球人やねん
だからな、還りたかってん、地球に
最期の、最後に、な
ん?…なんか考え込んでしまいよって、オマエみたいなちっこいのんが考えすぎると良ぉない、早よ寝え
眠られへんようなら久々に子守歌…
消えよった、相変わらず早いの、逃げ足だけは
☆ ☆ ☆
さて、読者の皆さんに最後の質問です
彼は一体何をしたのでしょうか?
回答はコメント欄に
返答は「〇」か「×」のみ
「ヒントくれ」なんて妄言に応じる親切心など持ち合わせておりませんのでご了承下さい
だそく
実は妹さんの探していた契約書は、貸金庫の中じゃなく、彼女の部屋の2つ並んだ書類保管庫の隙間にはまり込んでる書類袋の中に入っていたのでした
それを識ったロートルさんは、先ず銀行の自分の貸金庫に、妹さん宅の、書類保管庫の下の、無記入の、無地の、封筒の中の、ブツを「引き寄せ」、銀行の貸金庫から取り出して、書留速達で、彼女に、郵送した、のでした。
めでたし めでたし