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そしてうんこは復讐する  作者: お布団
42/43

第42話 記憶を無くさなかった若者達

「…白木から話は聞いたよ。

黒崎…、お前は魔王なんかじゃなく、キッドだったんだって…」


事故を起こした 大型トラックがとまった空き地。


学生服姿の青年が地面に横たわる黒崎を見下ろし言った。


「何いってんだてめぇ!ちくしょう、誰か!来てくれ!救急車!今すぐ呼ばねぇと黒崎さんが!」


パニック状態の白髪の青年、金田が頭を抱え叫んだ。


黒崎にぶつかったであろう大型トラックのフロントガラスにはヒビが入っており、

車体はコンクリートブロックの壁にぶつかった状態のまま停止していた。


事故を起こしたトラック運転手の男は朦朧とした意識の中、震える手で携帯を手に取り、119番に電話をかける。


「も…、もしもし…、今すぐ救急車を…場所は____」


トラックにはねられたであろう黒崎の長い黒髪は血で汚れており、

青年は地面に仰向けのまま何とか呼吸しているようだった。


「…まだ、息はある」


学生服を着た茶髪の青年、白木が黒崎の脈を手で確かめ言った。


白木の言葉に金田がほっと胸を撫で下ろし、

その場に膝をついた。


「よかっ…た…」


「なんだろう…。前はあんなに恐かったのに…、今は全然こわくない…」


山本が無表情のまま、黒崎を見下ろし言った。


異世界の記憶があるであろう山本を見て、白木が再度、口を開く。


「山本…。君は知らないと思うけど、黒崎は吸血鬼である可能性が高い。

君が黒崎と同じ町にいる以上、黒崎は何としてでも君の血を手に入れようとするだろう。彼のことは僕にまかせて、君はここから離れた方がいい」


「……」


山本が無言で地面に膝をつき、地面に倒れている黒崎の胸ぐらをつかむ。


「てめぇ!なにやってんだ!!!」


激高した金田が山本の腕をつかもうとした、その時。


「やめろ!!!!」


パトカーから降りてきた本田が叫んだ。


そのまま本田は金田の手を掴み、青年を山本から引き離す。


「っ…、てめぇ!!!警察官なら、あそこにいるトラック野郎を逮捕しやがれ!」


本田は興奮する金田を落ち着かせようと、彼の両肩に手を置き、

「何があったのか、教えてくれ」

と冷静な口調で訊ねた。


警察官の言葉に金田が小さくうなずき、

「あそこいるトラック野郎がいきなりつっこんできて、黒崎さんをはねやがったんだ…。だから、早く…病院に…」

と涙ながらに答えた。


「救急車なら、トラックの運転手が呼んでくれています。

それより、山本を止めないと…」


不安そうな顔で、白木が本田に助けを求める。


本田は小さく頷き、山本の方を見た。


額から血を流している黒崎の胸ぐらをつかみ、その体を強引に起こそうとしている青年。


恐れをなさない山本の様子に本田は驚きつつも、

彼の方に足を進め、青年に声をかける。


「一体…、何をしようとしているんだ?」


声を震わせる警察官の方を見て、青年が小さく笑った。


「何がおかしい」


本田が訊ねた。


「あっちの世界と同じ…、外見は変わっても、あんたはあんたのまま…。

ただ、すごいなって、そう思っただけだよ…」


山本がため息まじりに言った。


異世界転生をして変わってしまった青年を前に、本田は戸惑いを隠しきれない。


しばらくして、遠くの方から救急車のサイレンが聞こえてきた。


その音を聞くや否や、金田とトラックの運転手がほっと胸を撫で下ろす。


「っ…」


意識を取り戻した黒崎が顔を歪めながら、ゆっくりと瞼を開き、

山本の顔と本田の顔を交互に見る。


「お前ら…、見たところ…、あっちの世界の記憶…、あるっぽいな…」


「お前らってことは…、黒崎、お前も覚えているのか?」


警察官の質問に黒崎がゆっくりと頷いた。


そのまま、黒崎が呼吸を整え

「その…、山本…、いろいろ…、悪かった…」

と小声でつぶやく。


「許すわけない」


山本が言った。


物々しい雰囲気に本田がゴクリと息を呑む。


「お前が俺を許そうがどうしようが、俺はもう死ぬんだ…。

俺には分かる…。身体に力が入らないし、視界もぼやけてきてる…」


黒崎が弱弱しい声でつぶやいた。


そんな青年の胸ぐらを両手でつかみ、山本が

「死ぬ前に罪を認めて、自分が楽になりたいだけだろ」

と声を震わせた。


「あぁ、そうだ。じゃあな…、クソ野郎」


黒崎が消え入りそうな声でつぶやき、すっと目を閉じた。


意識を失っているであろう吸血鬼に向かって山本が言った。


「まだ、復讐は終わってない」




読んでいただき

ありがとうございます!

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