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そしてうんこは復讐する  作者: お布団
31/43

第31話 対峙

ロストタウンの宿屋の一室。


部屋のベッドで眠っているセレナを見つめ、キャロラインが言う。


「セレナが目を覚ましたら、マイキー様たちを探しに行こう」


「シラキはマイキーと一緒にいるのか?」


ビッグマンがキャロラインに尋ねた。


「うん…。マイキー様の後をつけるよう言ったから、一緒にいると思う」


キャロラインが不安そうな表情で大男の方を見る。


部屋の窓辺に立つビッグマンの隣にはメルシーが立っており、男の腕に抱きつくように自身の腕を絡ませていた。


それを見たキャロラインがあきれた声で尋ねる。


「メルシー、勇者様一筋だったのに、もう気が変わったの?」


「えぇ。だって、勇者様は私を見放したんですもの」


「見放した?」


「そうよ。彼はキッドを信じるって言って、私のことを見放した。今はただ、彼が憎くてたまらない」


「メルシー、わかってると思うけど、それは偽物だよ。本物の勇者様はそんなこと言わない…」


「……」


メルシーがビッグマンの元から離れ、キャロラインに歩み寄る。


「キャロライン。あなたは何も分かっていない」


「え?」


「私はね。勇者様の外見と中身。そのふたつを愛していたの。どちらかひとつでも欠けていたら、それはもう私の愛する人ではないのよ」


「そんな…、ひどいよ。勇者様は姿が変わっても、私たちを想ってくれているのに!」


キャロラインが眉をひそめ言った。


口に手を当てながらメルシーが笑う。


「じゃあ、あなたはあの茶色いモンスターと結婚できる?」


「っ…」


キャロラインが唇を噛みしめ声を絞り出す。


「今はあの姿でも、私は元に戻れるって信じてる」


「無理よ。本物の勇者様はずっとあの姿のまま一生を終える。

誰もあの赤髪女を説得できるはずがない。あの女は自分の欲の為なら何だってする、そんな女よ」


瞳を潤ませる青年を見て、メルシーが言った。


重たい空気が流れる中、ビッグマンが口を開く。


「キッドって女を説得する以外に何か方法はないのか?」


少し考え込んだ後、メルシーが言う。


「あるわ」


「っ…本当?」


キャロラインが涙を拭い、言った。


瞳の中に光を灯すことなく、メルシーがキャロラインの肩をつかみ、青年の耳元でささやく。


「キッドを殺せば魔法は解ける」


「!!……」


みるみるうちに青ざめていく青年を見つめ、ビッグマンが尋ねる。


「どうした?」


キャロラインがうつむき、目から涙をこぼし始める。


どんな理由があれ、一緒に旅をした仲間であるキッドを手にかけるなんて、できるはずがない、そうキャロラインは思った。


「…キッドを殺すなんて…そんなの、したくない…」


「……」


ビッグマンが息を呑み、メルシーの方を見る。


「仲間を殺せばいいなんて。お前、正気か!?」


大男の怒鳴り声に、唇を震わせ、メルシーがその場に崩れ落ちる。


「私はあの女が憎い…。私から愛する人を奪ったあの女が…。

だけど、私にはどうすることもできないっ…それがつらいの…」


ガチャ。


突然、部屋の扉が開き、メルシーたちが肩を震わせる。


「やっぱり、ここにいた」


キッドの声。


開かれた扉の前、キッドが満面の笑みで立っている。


赤い髪の女が着ている白いシャツは所々血で汚れており、時間がたったからなのだろう、赤黒く変色していた。


「っ…」


怒りのまま、メルシーがキッドを睨みつける。


キッドの後ろからツキが顔を出し

「ここにいるみんな、マイキーの仲間なの?」と尋ねた。


ビッグマンがうなずき

「あんたは?」

と金髪の少女に訊き返す。


「私はツキ。この街でアクセサリーを売ってる商人だよ」


重苦しい空気を断ち切るように、ツキが明るい声で言った。


「そうか。俺はビッグマンだ。そこのベッドで寝ているのはセレナで、その隣にいるのがキャロライン。で、こいつは…」


「メルシーよ」


キッドと視線を合わせることなく、メルシーが言った。


「自己紹介はその辺にして、セレナを起こしてよ、キャロライン」


怯える青年を見つめ、キッドが指示を促す。


キャロラインは、血で汚れたキッドのシャツから視線をそらし、

「セレナ、起きて…」

と白髪の女性の体を優しく揺さぶる。


「んっ…」


眠たい目をこすりながら セレナが上半身をおこす。


「おはよう、セレナ」


キッドが言った。


「キッドさん?どうしてここに…」


セレナがキッドを見て訊ねた。


「話せば長くなるから簡潔に言うよ。 マイキーっていう茶色いモンスターと白髪の吸血鬼男は魔王のところに飛ばされた」


キッドの言葉に辺りが静まり返る。


「ちょっと、待った!」


ツキがキッドの横を通り、 部屋の中に入ってくる。


「何をする気だ?」


ビッグマンがセレナをかばうように ツキの前に立ちふさがる。


「警戒しないで。私はあなたたちの味方だから。何があったのがちゃんと説明させてほしいの」


「ふざけないで!」


メルシーがツキに掴みかかり声を荒げる。


「あんたがキッドの味方である以上、信用できないわ! あの女と同じ、あんたも黒魔術師なんでしょ?マイキー様とキャロラインの次は私たちの姿を変えるつもり?」


「それは、彼女が望んでやったことじゃない!キッドは偽の勇者に命令されて…」


「違う!あの女は自分の意思でやった…。マイキー様を裏切った裏切り者よ!」


「…聞いてた話と違う。どういうこと?」


ツキが血相を変え、キッドの方に視線をむけた。


困惑する少女をみて、 赤い髪の女がケタケタ笑う。


女はそのまま 部屋の中に入り、部屋の扉を閉めた。






読んでいただき

ありがとうございます!

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