第2話 全ての始まり
深い深い森の中。
パチパチとした音が辺りに響き渡る。
アユの塩焼きだろうか、
木の棒の先に美味しそうな魚が突き立てられ、
それがたき火の元で調理されていく。
魚の油がしたたり落ちていくのを見て、金髪の勇者がつぶやく。
「毒キノコ、腐りかけの肉、枯れかけの雑草・・・じゃない。
ふっふっふっふ・・・。
そうだ、これこそが食事!みんな、そう思わないか!?」
ぐうううう~~~。
華奢な体に似合わない重装備をした可愛らしい黒髪の少女、
キャロラインの腹が鳴った。
キャロラインは恥ずかしがることも無く、
澄ました顔で、焼かれていく魚をまじまじと見つめている。
「その通りですわ!勇者様!
これからの時代はキノコでも肉でも雑草でもない。
美味しい魚の時代ですわよ!」
勇者に体を密着させながら紫髪の美女、メルシーが言った。
メルシーは大きな胸を周囲に見せつけるように、
胸元が大きく開いた服の襟を
グッと上へと押し上げる。
「ちょっと、おばさん。
いい年してそんな恰好をして恥ずかしくないの?
ねぇ、勇者様!私と一緒にお散歩にでも行きましょう?」
赤髪短髪の美女、キッドが勇者とメルシーの間に入り、
二人を引き離そうとする。
「ちょっと!やめてよ!あんたみたいな小娘、相手にされるわけないでしょ?」
メルシーが声を荒げる。
「ふざけんなババア!もうあんたの賞味期限はとっくに過ぎてんだよ!」
キッドがメルシーの長い髪をつかみ、それをグイッと引っ張った。
「いっ・・・・!何すんのよ!このメスガキがぁぁぁぁぁ!」
「かかってこい、年増!私が相手してあげる!」
メルシーとキッドが髪をひっぱり合い、喧嘩を始める。
それを見ていた白髪の美女、セレナがおろおろとした様子で
二人の間に割り込もうとする。
「ちょっ、ちょっと、二人とも、落ち着いてくださ・・・きゃ!」
二人に強く押されたのだろう、
ドサっという音と共にセレナがその場で尻もちをついた。
やれやれといった表情で勇者はセレナに手を差し伸べる。
「セレナ、大丈夫か?」
「はい・・・。勇者様・・・」
セレナは勇者の手をとり、ゆっくりと立ち上がった。
その姿を見て、
今まで興味なさそうにしていたキャロラインがつぶやく。
「・・・・むかつく・・・」
「?何か言ったか?」
勇者がきょとんとした表情でキャロラインの方を見る。
キャロラインは
「別に・・・。何でもない・・・・」
そう言ってふいっと横に視線をそらした。
深いため息をつき、勇者がセレナに耳打ちする。
「・・・魚が焼けるまで、まだ時間がある。
今から少し、二人だけで話がしたい・・・いいか?」
予想もしていなかった勇者の言葉にセレナは驚きながらも
「はい・・・」
と、答えた。
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