68 大方の日本人なら、好感度大
間近でまじまじと見るのは初めてだ。
着ぐるみはよく見かけたが、こちらの展示は金属と樹脂をベースにしたハードタイプ。
身長二メートル。実物大。
細かい部分まで作りこまれてある。
その名が表すように、とてもチャーミングな女の子。
顔の造作に少々漫画的な表現もあるが、おおむね実際の人間の女の子に近い表情。
かすかに微笑み、大方の日本人なら、好感度大だ。
足元にまで及ぶ長い金色の髪。スリムな長身。この点は幾分、現実離れしている。
肩幅ほどもある大きなつば付き帽子。
黄色やオレンジ色、水色と、色とりどりの無数のリボンが白い帽子に結んである。
これがケイキと呼ばれる所以だそうだ。
スリムなクリーム色のコスチューム。
アイコンがちりばめてある。リボンや花、蝶やハート形。女性ぽいエレメント。
短めのフレアスカートに、ラメ糸で花鳥が刺繍されたワインカラーのブーツ。
解説文によれば、高齢者に親しみ慈しんでもらえるよう、なじみのある七十年ほど前に人気を博したアニメキャラを参考に、このキャラを創造した、とあった。
競馬場で見る着ぐるみのケイキちゃんと構成はほぼ同じ。
ただ、着ぐるみの方は人が入って操作するため、かなり寸胴。
その太めのケイキちゃんが全国各地のイベントで活躍している写真やポスターもたくさん掲示されていた。
自画自賛の美辞麗句が被せられた写真の数々。
もちろん、その中に京都競馬場も。
京都の写真に目を凝らしたが、見知った顔は発見できなかった。
ケイキちゃんからのメッセージが音声として流れる仕掛けもある。
聞いてみたい気もしたが、警備員の視線が痛すぎて、そのボタンを押す気にはなれなかった。
高齢者の話し相手ロボットの実物展示のコーナーも。
ケイキちゃん以外にも多くの種類がある。
見て回りながら、ハルニナからの連絡を待った。
ごめんなさい、もうちょっと待ってて。
なんとか話が聞けそう、という連絡がきたのは、剝製かとさえ見えるネコ型ロボットに見入っているときだった。
一時間以上も警備員の目に晒された挙句、ようやく落ち合ったハルニナは、幾分冷めた目をしていた。
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やっとこの退屈な仕事から解放されるかと思うたが
解放どころか、新たなチョイ仕事まで頼まれてしもうた
別口からじゃ
こちらは絶対に断れぬ
あのお方の依頼を断ろうものなら……
なぜ、ワレばかりが
わけもわからぬことに手下を使うわけにもいかず
三つも掛け持ちでは、まどろんでもおれぬ
芸人の家を探し出せ、の次は
来春の新卒内定者リストを手に入れろ?
なんじゃというのか
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