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65 どっちの方が好き? あるいは許せる?

 やはり気味の悪い話だと思った。

 メイメイやハルニナに対して持った印象ではない。

 あくまで、話の内容をそう感じただけのこと。


 PHか。

 PHねえ。


 メイメイやハルニナはそのPH。

 話の流れから、そうなるのだが。


「なあ、メイメイ」

「なに?」

「君やハルニナは」

「あ、そうですよ。ハルニナも私も、れっきとしたPH」


 はっきり言われて、後をどう聞けばいいのか。

 俺が、マニフェスト? 蛇が、んん? 

 で、なんなんだ、いったい。



 質問してこないことに安心したのか、あるいは顔に恐怖や嫌悪がないことに安心したのか、メイメイは大人っぽい笑顔を作って、膝に手を置いてきた。

 いつものミリッサであれば、払い除けるが、今はそうはしなかった。

 なぜか、その方がこれから語られることを安心して聞けるような気がした。

 メイメイの掌の温かさがズボンの上からも伝わってくる。



「でね、ここからが大切な話。今までの話も口外無用。先生だから話してる。これはわかってね」


 ああ、そうなんだろう。

 もちろんだ。


「さっきの質問、答えてくれてませんよ。ルアリアンとカニ、どっちの方が好き? あるいは許せる?」


 わからない。

 どっちがと言われても。


 しかし、どちらかを選ぶとなると、カニの方。

 ルアリアンは、完全に意識乗っ取りではないか。


 そう言うと、メイメイはニコリと笑った。

 違うのか。



「よーく、聞いてね」

「ああ、さっきから真剣に聞いてる」

「はい。意識の乗っ取りって考えるから、違う印象になるのよ。じゃ、例を挙げるわね」

「ああ」

「アイボリーがカニだったとします」

「えっ、そうなのか」

「あくまで、例えば、ですよ」

「知らない人を例にしてくれ」

「そうですね。じゃ、えっと、マオちゃんってことにしましょう」


 マオちゃんにユウコちゃんっていう意識が入ってきてカニになったとします。

 マオちゃんはいつもびくびくしています。どんなタイミングで自分の意識がユウコちゃんの意識に切り替わるかわからないので。

 マオちゃんとしてさっき誰かに話したことが、ユウコちゃんの意識に切り替わったことによって、真逆になるかもしれない。

 まるで二重人格。

 超身近なことでいえば、さっきはおうどんを食べたいと思ったのに、今はすき焼きを食べたいと思ってる、とかね。

 Aさんが好きなのに、もう一人の自分はAさんが大嫌い、なんて、絶望的な不幸でしょ。


「なるほど」

「延々と苦しむんです。いつ何時、自分の気持ちがコロッと変わるかもしれず、悩みながら毎日を過ごすんです」

「大変だな」

「人によって、その意識の差異、っていうのかな、振れ幅はかなり違いますけど」

「なるほどなあ」

「カニの連中は、自分たちは相手の意識を尊重して、並列の状態を作っていると主張しています。でも、それって、むごくないですか?」

「本人にとっては、きつい話だな」

「そうですよ。対してルアリアンは、二つの意識を一体化します。乗っ取るって言わないでくださいね」

「ルアリアンねえ」


「はい。さっきの例でいうと、マオちゃんはマオちゃんのまま。ずっとマオちゃんです」


 でも、マオちゃんの意識の中にはユウコちゃんの意識も混じって溶け込んでいる。

 悩むことはありません。溶け込んでいるから違和感もありません。

 コロッと気持ちが変わる、なんてこともありません。

 いつの間にか、グンと大人になったマオちゃんがいる、というわけです。

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