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59 憎しみを抱いている人の話の行きつく先は

 フウカの担当は、警察からの情報収集。


「じゃ、最後に警察から聞き出せたことを話すわね。まず疑問に思ったことは、今頃になってなぜ再捜査ってことになったのか」


 匿名の通報があったらしい。

 通報者の名前、年齢、性別、いずれも不明。今、最も匿名性の高い手紙という紙の形。

 大阪中央郵便局に投函されたらしい。


「リオン自身はペーペーだから、その手紙を見せてもらってないんだけど、あれは事故ではない。調べ直せ。その理由として、ケイキを憎む人間は多数いる、とだけ書かれてあったらしい」


 多数か。

 ケイキを憎む人が。

 ノーウェではなく、ケイキ。

 それはあるかもしれない。

 傾聴ロボットについては、よくない噂が流れている。

 だからこそ、財団は躍起になってPRに努めているのだ。



「どうした?」

 ジンがアイボリーを気遣っている。

「うん……」


 そうか、もしケイキを憎む人がいるのなら、ノーウェではなくアイボリーが死んでいたかもしれないのだ。

 ノーウェがあの日、ケイキの着ぐるみに入っていたのは、例外的なこと。

 いつもはアイボリーが入っていたのだから。



 誰もがそのことに気づいて、神妙な顔つきになっている。

 わかりきっていたのに、今になって、自分たちのやろうとしていることの重大さに気づいた。


 ミリッサにしてもそうだった。

 学生たちがやること、として軽く考えていたかもしれない。

 遊び気分ではないにしろ、ノーウェへの思いに動かされて、言い換えればあの楽しかった思い出を再び思い起こしたいという不謹慎な考えだったかもしれない。



「アイボリー」

「なんでもない」

「顔色、悪いよ」


 アイボリーを参加させて、この会議をするとは、なんという浅慮。

 ミリッサは、どう収拾すればいいのか、すぐには思いつかなかった。

 フウカの責任ではない。

 顧問として、自分の落ち度だ。



 フウカがアイボリーを気遣っている。

「ごめんね。気が利かなくて。あなたに聞かせる話じゃなかったよね」

 首を振るアイボリー。

「いいえ、いいんです。気にしないでください」


 ノーウェの身辺を調査する方向で会議は進んでいる。

 しかし、本当はケイキ、ひいてはアイボリーの身辺調査でもよかったわけだ。


 さすがにこれを口にする者はいない。



 フウカは気付いていたのだろうか。

 気付いていて、ノーウェだけにスポットを当てたのだろうか。

 フウカなら、今語られていたノーウェの振る舞いを知っていたかもしれない。

 だからノーウェを。


 とはいえ、はなはだ片手落ちとしか言いようがない。

 いくらアイボリーが、優秀でまじめな学生だとしても。




「じゃ、話を戻すわね」

 そのフウカは、場の雰囲気を戻そうとするかのように、朗らかに言った。

「警察の捜査の状況は、詳しくは聞けていない。でも、わかったこともある」


 リオンによれば、一から捜査を振り出しに戻したわけじゃないみたい。

 一旦、事故という結論を出したんだから、念のために、という程度。

 関係者への聞き込み、ケイキちゃん着ぐるみの内部構造などは前に調べたわけだし。

 通報に沿って、ケイキちゃんに憎しみを抱いている人の洗い出しを始めてる程度。

 でもこれって、雲をつかむような話だし。


 再びアイボリーの身に危険が迫る。

 ケイキちゃんに憎しみを抱いている人。この話の行きつく先は、ノーウェではなく、アイボリー殺人未遂事件、に繋がっていく。


 本当にそうか。

 ノーウェは財団職員。

 やはり、ノーウェ殺害事件でいいのかもしれない。


 しかし、こんな迷いをここで披露する気はない。

 だれも聞きたくはないだろう。



「最後にもう一つ」

 イベント会社が廃業したそうなんだけど、それにも少し訳があるんだって。


 またもやアイボリーに関係した話だ。

 ミリッサはすでに聞いている。


「あのケイキちゃんの着ぐるみに不具合、メンテ不備? があったらしくて」

 ノーウェの首に絡まったワイヤーの話。

「着ぐるみは元々、形の上では財団からの貸与品。イベント会社は責任を取らされて」

 廃業に追い込まれたという。


 アイボリーの顔が幾分青ざめていた。



「じゃ、今日はここまで」

 とお開きになったが、アイボリーが気にかかる。

 アイボリーをこんな気持ちにさせたフウカは、いつものように、来週はみんなに幸運が訪れますように、と迎えの車に乗り込んだ。


 京阪電車に乗り、京橋まで帰る間、ミリッサはアイボリーの様子を見ていた。

 もう普段通りに振舞っているが、心には引っかかるものがあるのか、やっぱりサークルやめようかな、とジンに話していた。

 ミリッサが引き止めるまでもなく、ジンとランが、気にしない気にしない、と慰めていた。


 スペーシアはとうとう、最後まで何も発言しなかった。

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