表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/265

28 ジン! 静かにしなさい

 午後になり、雨は止んだ。

 三限と四限、いずれも三年生の授業である。

 心理的提案技法論と先鋭色彩技術論。

 ジン、ラン、メイメイ、そしてアイボリーが出席。


 ハルニナの姿はなかった。

 昼休みの部活にはいたのに。

 最近、出席率が低い。

 単位が危ういというのに、とミリッサは思ったが、すぐに忘れた。

 出席は必須ではないが、出席してくれないことには救いようがない。授業に集中。


 いずれも、論という名が授業名についているが、デザイン演習要素を含んでいる。

 学生たちがプチ演習に取り組んでいる机の間を歩き回り、その場でアドバイスを与えていく。

 時には、自ら学生たちの演習用紙に書き込んでいく。

 例えば、こういう形状はどうだい、こういう構成の方がよくないかい、ほら、こうやって描くとテクスチャーが、というわけだ。

 前から横から後ろから、年頃の娘に接近するわけだから、身体に触れないよう、いらぬ方向に目がいかぬよう、気をつかう。

 胸元を押さえる学生もいるが、概して無頓着だ。


 もちろん、私語は禁止。

 しかし、演習ともなると、互いに見せ合ったりして会話が生まれる。

 少々のことは大目に見ているが、殺人事件、という声が聞こえた。

 抑えた声だが、聴きなれない言葉だけに、幾人かが振り返る。


「ジン! 静かにしなさい」

 発言の主はしおらしく謝ったが、話しかけられた方のアイボリーは少し驚いたような眼をして親友を見ていた。


 仲良しの二人である。いつも並んで座っている。つい、話してしまったのだろう。

 ミリッサは、至急、かん口令を敷かねば、と思った。

 ただでさえ白い目で見られがちな競馬サークル。その上に、殺人事件の捜査に首を突っ込むなど、大学当局に知れたら印象悪化は免れない。




 四限終了のチャイムが鳴った。

 デザイン演習のプリントを回収し、教室を出ていく学生たちに挨拶を返し、少しづつ後片付けを始めながら、教室に居残る学生たちを眺めた。


 演習は決められた時間内に終わること。

 これがモットーであるし、それが実社会に出た時にも役に立つ。

 しかし、あと少しだけやらせて、もう少しで完成するから、と言う学生からプリントを奪い取るわけにもいかない。

 テストであれば別だが、日々の訓練なのである。


 今日の居残りには、珍しくランがいた。

 いつもは終業のチャイムともに、プリントを投げ出すように提出して教室を飛び出していくのに。



 ははあ、一緒に駅まで帰ろうという気だな。

 ランはくりくりした目を向けてきては、プリントに目を落とす。

 手はもうあまり動いていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ