未来人
未来人
時は西暦二〇六四年。世界の情勢は、I T化がさらに進み、ネットを通じて人と人との関わりがさらに濃くなっていた。しかし、その分I T技術を用いた犯罪などが増加しており、世界的に対策が行われていた。その世界に一人、ある青年がいた。彼の名前は井上洋助、十八歳、ごく普通の高校生である。彼は二〇〇年後の未来から来た正真正銘の未来人である。彼がいた二〇〇年後の未来は、海中都市やドローン住居などの未来都市化が進んでいた。また、宇宙では、月面コロニーが完成し、人が住み始めるなど、惑星移住が可能になるほど技術は進歩していた。その中で、最新技術を用いて作られたのがタイムマシンであり、洋助はそれに乗り現代にやって来た。目的としては、任務やミッションのような堅苦しいものはなく、タイムマシンの試運転と、あとは観光程度であった。現代に着き、洋助は初めに、全国の色んなところを見て回った。やはり、過去ということもあり、洋助がいた時代ほど技術は発達しておらず、文明も劣っていたが、そこまで不自由無く暮らすことができたため、洋助は満足していた。しかし、未来人ということもあり、あまり他の人と仲良くすることはできず、未来のルールにより他の人に未来のことを教えることはできない決まりになっていた。それでも、人思いで優しい性格を持っていた洋介は、今こうして自分が生きているのは、過去の人たちのおかげであったと思い、決まりを破らない範囲で人助けを始める。洋介の人助けは、容易であった。なぜなら、これから起こることが全て分かっていたからである。例えば、誰かが階段を踏み外して怪我をする、強盗や殺人などの犯罪、それから地震や台風などの自然災害などと、小さなことから大きなことまで把握していた。未来人ならではの特権であった。しかし、決まりにもあるように、これから起こることを教えることはできなかったので、洋介は誰の手も借りることはできず、自分一人で誰かを助けるしかなかった。なので、洋介はすごく悩み、どうすればみんなを助けることができるのか?誰かを助けているとき、他の人を助けることはできないのか?などと考えた。洋介は、現代では仲間を作ることはできないため、一度未来に帰り、仲間を連れて戻ってくるなど考えたが、タイムマシンの技術はまだできたばかりであり、何度も往復することはできなかった。解決策が出ないままただただ時間だけが過ぎていき、洋介はその間ずっと悩み続けた。人助けのほうは、やらないよりはやり続けて、一人でも多くの人を助けられたらいいなと思い、続けていた。しばらくそんな日々が続いた。洋介は未だ解決策にたどり着くことなく、人助けを続けていた。そんな中、あるとき洋介は人助けに失敗した。はじめは何が起きているのか分からず混乱していた。冷静になり、落ち着いて考えてみると、これは自分のせいであると洋介は理解した。これまで自分がしてきた行いは、その人にとってはごく一部の小さな出来事であったかもしれない。しかし、未来を知っている自分が干渉したことにより、その時を境にその人の未来が変わってしまった。もしかしたら、その出来事がその人にとって人生のターニングポイントであったかもしれない。洋介は、今まで自分がしてきた人助けは、果たしてそののためになったのか?自分の行いは善であったのか?それとも悪であったのか?と悩んだ。洋介はまたもや壁にぶち当たり、どうすればいいか分からなくなり、自暴自棄になった。未来のことを知っているのに、それを活かすことができず、むしろ、その人の未来を奪ってしまったと、何もできない自分に嫌気がさしていた。そして洋介は、自分がこのままこの時代にいてはいけないと思い、未来に帰ることにした。未来に戻ると、そこには懐かしい未来都市の風景があった。しかし、洋介は何か違和感を感じた。それはすぐにはっきりした。それは以前と街並みが大きく変わっていたことである。洋介は何が起きているのか分からず、とりあえず家に帰ることにした。建物の配置なども変わっていたため、G P Sを頼りに行ってみると、そこには別の建物が建っていた。近くにいた人に自分のことを聞いてみても、知っている人は誰一人としていなかった。なぜなら、洋介が過去に行った人助けにより未来が大きく変わってしまったからである。人助けにより助けた人の未来が少しだけ変わったとしても、何人も助けることで小さな変化が積み重なりこのような結果になってしまった。洋介の人助けは、その人にとって善であるか、悪であるかはその人にしか分からない。洋介はこのことを理解したとき、今の自分はどの時代にも存在していないということを自覚し、消えてしまった。
Swallowed love
カチャカチャと物音が聞こえ始め、朝日が差し込んできた。
眩しそうに目を細めた彼女が微笑みかけてくる。
「おはよう。ナズナ!」
彼女の名前はいずみさん。僕の最愛の人。
「おはよう。いずみさん!」
僕はそう答えるが返事はない。いつものことだ。
こうして僕と彼女の1日は始まる。
僕の名前はナズナ。この名前はいずみさんがつけてくれたものだ。ナズナという名前の、花にちなんでつけたらしい。彼女はこの花というものが好きで、その中でもナズナがお気に入りだと言っていた。つまり僕だ。好きなものの名前をつけてくれるなんて、やはり僕たちは両思いのようだ。声は届かないけれどきっと心は通じている。
彼女は僕のことをナズナと呼ぶけれど、いずみさん以外にはアオイムシと呼ばれている。
人間たちに必要な栄養素をたくさんもっている微生物で、その活用方法を研究するためにこの場所で培養している。と彼女に誰かが言っていた気がする。
「おはよう。かにすけ!」
いずみさんの声がする方向を見るとあいつがいた。答えないなんて無礼なやつだ。どうしても好きになれないあいつの名前はかにすけ。蟹というものらしい。いつも勝ち誇った顔で見てくるあいつには心底ムカつく。いずみさんは優しいから挨拶をするだけなんだぞと叫ぶが聞こえないふりをしてくる。本当にいけすかないやつだ。
いずみさんがこちらに向かってきた。今日も素敵だ。だが、心なしか元気がない気がするのは気のせいだろうか。
「大丈夫?いずみさん。」
彼女は辛そうな顔をしてこう言った。
「私ね、この間の人間ドックで、胃がんの可能性が高いって言われたの。明日再検査をするんだけど、とても怖くて…。本当にがんだったらどうしよう。」
いずみさんを悲しませるなんて、がんって奴は最低だな。僕ならいずみさんを悲しませることなんて絶対にしないのに。なんて思っていると、彼女が僕に顔を近づけてきた。
「ち、近いよ!!いずみさん!そんなに見つめないで、照れてしまうよ!」
すると彼女は意を決したかのような顔つきになりこういった。
「ナズナ、ごめん!!」
「え?」
その瞬間、僕の視界はぐらぐらと揺れ、彼女の姿も、何も見えなくなっていった。
僕は何が起こったのかすぐに察した。身体中に彼女の声が響いたからだ。
「アオイムシががんに効果があるかはわからないけど、できることはやったほうがいいよね。ごめんねナズナ…。」
僕はいずみさんに飲み込まれたのだ。
「今、いずみさんの中にいるんだな。」
いずみさんの中にいても僕の声は届かない。でも彼女とずっと一緒にいることには変わりないから、それでいいんだ。
それから間も無くして、ねばねばした狭いところに着いた。壁が波を打っているのでその反動でだんだんと移動していく。
これから僕はいずみさんの中に一生いることになるのか。常に一緒にいられるなんて、こんなに幸せなことが他にあるのだろうか。いやない、絶対にない、僕は今、ものすごく幸せ者だ!なんて考えていたら、ひらけた場所に出た。なんだか体がヒリヒリしてきたな。
目も慣れてきたことだし、周りを偵察することにした。いずみさんの中は僕、いや、僕らの家になるのだから、きちんと把握しておかなければいけないよね。
浮かれながら周りを見渡していたら、膨らんでいるところを見つけた。僕の今の目的は、僕らの家を把握することなのでしっかりと見てやろうと思い近づいた。そしたら、あいつを見つけてしまったんだ。
かにすけだ、蟹のかにすけがいる。いつものようにムカつくあの顔で、ここは俺の場所だと言わんばかりの態度でそこにいる。
「いずみは、俺のものだぜ。」
そんな声が聞こえた気がした。絶対に許せない。いや、許さない。
かにすけよりも僕の方がずっとずっといずみさんを愛している。がんというやつもそうだ。僕ならあんなふうに彼女を悲しませたりなんてしない。自分を犠牲にしてでも、必ず幸せにするんだ。
僕は決意した。絶対にかにすけをこの場所から追い出すことを。
かにすけは、引き剥がそうとどれだけ頑張ってもどんどん増えていく。数で勝とうだなんてずるいぞ。でも僕は負けない。いずみさんのためなら僕はどんな手段だって使うのだ。
そして僕は思いついた。僕のお尻についている鞭毛を使おう。この鞭毛というのは、いずみさんに教えてもらった。普段は彼女を近くで見るために、これを使って頑張って移動している。とても体力を使うからゆっくりとしか動けないけれど。しかし今いずみさんはいない。もし何かあったら彼女のためにこの鞭毛で戦うと決めていた。今は、その時だ。
鞭毛でかにすけを鞭毛で全力で殴る。効果があったようで、かにすけが一匹、また一匹と消えていく。何時間たっただろうか、もう僕の鞭毛は限界だ。普段移動することにしか使っていなかったからだろうか。こんなことになるならもっとトレーニングをしておけばよかった。
とうとう動けなくなってしまった。最後のかにすけがこちらを見て笑っている。もう勝負が決まったと思っているのか、増えることはせずただただこちらを見てくる。意識を失いかけたその時、いずみさんの声がした。
「もしがんだったとしても、私頑張る。絶対負けない。諦めない!!」
僕はハッとした。そうだ、諦めちゃダメだ。僕はいずみさんを守るんだ、絶対に、絶対に!!
最後の力でかにすけを引き剥がす。逃がさないようにしっかりと捕まえる。
「いずみさん!僕、勝ったよ!!いずみさんは、絶対に、幸せにするから…」
そこで僕は意識を失った。
それから何時間たっただろうか。体が大きく揺れて目が覚めた。周りに圧迫されてとても苦しい。すると、いずみさんじゃない声が聞こえた。
「あれ?がん細胞が見当たりませんね。まさか、そんなことが…」
そしていずみさんの嬉しそうな声が聞こえてきた。
「本当ですか!?よかった、本当によかった。」
がんがいなくなったのか。かにすけにも勝ったことだし、やっと二人で幸せになれる。早くこの狭い場所から抜け出して、いずみさんに報告しなければ!!
すると、周りがどくんと動いた。
「すみません。お手洗いに行ってきます。安心したら緊張が解けたみたい。」
お手洗いってどこだろうか?そこにいけば僕はいずみさんの姿をもう一度見れるのかな。ずっと一緒にいられるのは嬉しいけれど、もういずみさんを見ることができないなんて寂しいよ。
ーーガチャン
悲しみに暮れていると、キラキラと光が差し込んできた。
1日の始まりだ。これからまた、いずみさんとの幸せな1日が始まるのだ。
僕は早く彼女の微笑む顔を見たくて光の差し込む方へ飛び込んだ。
「いずみさん!!おは…」
ーージャー
お手洗いには、水の流れる音だけが響いていた。
Apocalypse 一章 「覚醒」
誰しも人の心には闇がある。
どれだけ誠実な人であろうと心に裏は必ず存在する。
あなたの心の中にも多少なりと闇が存在するのです………。
僕は光合 ヒカル、ごく普通の中学2年生だ。
いや、孤児院で育てられたからごく普通ではないか………。
そんな僕は今、目の前で化学で証明できないような事象に遭遇してます。
お母さん、ごめんなさい………。
僕はここで二度と帰れない体になりそうです……。
「うああああああああぁぁぁ!!!!!」
ガキィン……
「あれ、生きてる……?」
「少年、危ないから下がってろ。」
恐る恐る目を開けると、化け物の歯を刀のようなもので抑え込む少女の姿があった……。
頭が混乱してぼーっとしていると、
「なに、ボケっとしている。早く逃げろ!!!!!」
「は、はい……!!!!!」
僕はすぐさま近くの物陰に隠れた。
「さっさと片付けるか。」
少女は化け物を蹴り飛ばすと、刀に気のようなものを溜めて化け物を切りつけた。
すると、化け物はすうっと消えた。
化け物が消えたのを確認するとすぐさまどこかへ行ってしまおうとする。
「ちょっと待って!!!!!」
僕はすかさず彼女を呼び止める。
「なんだ……?」
少女は不機嫌そうにこちらを睨みつける。
「さっきの化け物はなんだ?君は一体……。」
少女は無視して去ろうとする。
「君は光合ヤマト、僕の父親のことを知らないか!!!!?」
「なぜ君が、その名前を知っている……?」
「僕は光合ヤマトの息子の光合ヒカルだ!!!!!」
「なるほど………。そうか、なら私と来い。」
「知りたいことを教えてやる。」
「わかった。」
僕は、ガブリエルと名乗ったその少女と一緒に「Lightning」という国家組織の本部に行った。
「私も君には聞きたいことがたくさんある。まずは所長に会いに行こうか。」
「うん。」
そして、僕は所長と呼ばれる人に会うために所長室まで案内された。
「君が光合ヒカル君か。所長の佐藤ガイアだ。」
「君のお父さんには、Shiningシステムの開発でたくさん助けて貰ったよ……。究極の闇、アポカリプスを封印するために自らの身体を犠牲にして命を落としたがね……。」
「そんなことが……。」
「君には私たちと共に世界にあるバケモノと戦って欲しい。」
「そんな、急に……。」
「無理にとは言わない。ただ、君が加わってくれると君のお父さんに関してより深くわかるかもしれない。」
「分かりました。僕にできるかの保証は出来ませんが、戦います……。」
「所長!!!!!素人に戦場は無理ですよ……。」
「大丈夫だよ。ガブリエル、彼には隠された力がある。」
「隠された……力………?」
「それじゃあ、まずは日頃からパトロールに当たって欲しい。」
と言われながら僕は、所長からトランシーバーを渡される。
「もし、バケモノに遭遇した際にはこのトランシーバーを使ってガブリエルに連絡してくれ。」
「了解!」
「これからよろしくね。」
不機嫌そうに彼女は僕に言った。
「こちらこそ。」
僕は彼女にそう微笑みかけた。
数日後、僕は初めて人の心の闇からバケモノが作り出される光景を見た。
バケモノは近くの公園で遊んでいた、幼い少女に狙いを定めて少女に襲いかかる。
僕は震える足を無理やり前へ前へと動かし、バケモノに向かって突撃した。
「アポカリプス……..。」
バケモノは僕の方を見て怯えていた。
そんなバケモノを気にも止めずにずかずかと近づいていく僕。
バケモノの前に立った瞬間、僕が指パッチンをするとバケモノは苦しみ出した。
僕は苦しむバケモノを見て、僕の意識は途絶えた…….。
目を覚ますと見知らぬ天井があった。
「ここは一体……..。」
「目が覚めたか。ここは病院だ。まったく…….大したものだ。」
「バケモノに単身で突撃して少女を守るなんて、無茶にも程がある…….。」
彼女は少し悲しそうな顔をして、俯いた。
「ごめんな…..。バケモノに襲われそうな少女を見て、居ても立っても居られなくなっちゃった。」
「いくらなんでも無茶しすぎだ馬鹿…….。」
「ごめん…….。」
「まぁそういう男らしい所が好きなんだけどね…….。」
彼女はボソッと何かを言った。
これからヒカルは様々な強敵と戦い、仲間と供にどんな困難も乗り越えていくのだろう。
第一章完
去年の君にさよならを
「けいくん! けいくん!」 「あっ、ごめんぼーっとしてた笑」
「もー何ぼーっとしてんのこれから楽しい楽しい遊園地デートだよ?」
「うんそうだな!」 「早く行こ!」
僕の名前は渡辺啓介何か特徴があるわけでもない高校一年生だけど彼女のことが大好きな男だ!
昨日の夜は今日の遊園地デートが楽しみすぎて寝不足だ
彼女の名は、絵里、賢くて可愛い俺の彼女。
彼女とは幼稚園から一緒で中学生の頃に付き合った。彼女はしっかりものでみんなから頼られている。
成績優秀、スポーツ万能、そして何よりかわいいときた
そんな子が特に顔がかっこいいわけでもない俺と付き合ってくれているだけで幸せだ。
昔、なんで俺なんかと付き合ってくれたの?と質問したら、
またそんなこと言って!けいくんはかっこいいよ?と言ってくれた。
具体的に教えてと言うと調子乗るから嫌と言われた
そんな可愛い彼女と夏休み遊園地に向かう途中事故は起きた。
「はっ!」
「またこの夢か・・・」
あの日俺の人生は終わった。
彼女は信号無視をしたトラックに轢かれて死んだ。
本当なら彼女は死なないはずだった。
彼女は俺を助けるために俺を押して身代わりになったのだ。
あの時の光景が今でも鮮明に記憶にある。彼女は俺を押した後悲しそうな顔で笑った。
それと同時にさよならと言った気がした。
その後のことはよく覚えていない。気づいたら自分の部屋にいた。
それからの俺は親に学校はしばらく休みなさいと言われ、そうした。
いくら時間が経っても彼女を犠牲に生きている自分が許せなかった。
自殺も考えた。でも、それは俺を助けてくれた彼女の行動を無駄にする行為だと
思いできなかった。
俺は今後まともに生活できるだろうか・・・
そのぐらい俺には絵里が大切な存在だった。絵里がいないのに生きてなにがあるのだろう
そんなことをずっと考えていた。
そんなことを考えているうちに数日が経ち担任の先生が来た。
「彼女の分までお前が生きるんだ。絵里だってきっとそれを望んでる。」
そう言われ俺は絵里が助けてくれたこの命を無駄にしないと心に決めた。
学校へ行くとみんな事故のことを知っているのだろう優しく接してくれた。
でもその優しさが辛かった。絵里がいればみんなと遊園地の話をしたかった。
夏休みの出来事をみんなで話したかった。
そう思うとどうしても心から笑えなかった。作り笑いしかできなかった。
もう絵里はここにはいない、もう会えない。
その後も心から笑えることができなく、次第に人と距離を置くようにもなっていった。
何ヶ月か経つとクラスの友達も俺から距離を置くようになっていった。
何かをするわけでもなくただ生きるだけの人生。きっと俺はこのまま死んでいくのだろう
絵里は許してくれるだろうか、でも俺も早く絵里の所へ行きたい。
もっと絵里と楽しいことをいっぱいしたかった、もっとありがとうを伝えたかった
そんな後悔だけが何ヶ月も続いた。
いつしか俺は高校2年生になって仲のいい後輩が入学してきた。
中学で同じバスケ部だった東條ももかだ。
この子は絵里とも仲が良かった気軽に話せる後輩だ。
入学早々彼女は俺の所へ来た「お久しぶりです先輩!」
「ももかかお前もこの学校に来たんだな」「そうなんですよ!これからまたよろしくお願いします!」
「なんか元気なくないですか?」「あぁお前は知らないよな・・・」「何の話ですか?」
「実は絵里が死んだんだ」「えっ?冗談ですよね?」
「こんな冗談言うわけないだろ」ももかに事故のことを説明すると
またあの事故が記憶に蘇る。
「先輩そんな顔して、まさかまだ引きずってるんですか?」
「俺の彼女だぞ忘れれるわけないだろ!」「何怒ってんですか!絵里先輩のためにも過去を引きずってないで前に進
べきなんじゃないんですか!」ももかが涙を堪えながら悔しそうに俺を怒った。
「そんなこと分かってるよ!でも・・・仕方ないじゃないか」
「絵里の分まで前を向いて頑張ろうとしたよだけど・・・どうしても絵里がいたらもっと楽しいだろうとか
頭に浮かんでその度に辛いんだ。せめてさよならの一言が言えたらよかった。」
「そうですか、この時のためにあるのかもしれませんね。」「何の話だよ」「放課後話したいことがあるので私の家に来てください。」
真剣な表情でももかはそう言う。「わ、分かったよ」ももかの真剣な表情を見てそう答えた
〜〜放課後〜〜
放課後ももかに連れられて家に行く
「どうぞ入ってください。お茶とってくるので部屋で待っててください。」
そう言われ部屋で待っていると小さくて不思議な機械が置いてあった。
「何だこれ」こんな機械見たことない。
「お待たせしました。今日呼んだ理由がこの機械のことです。」
「何なんだこの機械は」「これは過去戻ることができる機械ですです」
「過去に戻る?そんなことできるわけないだろ。」「実際にやってみた方が早いですね。」
そう言われると小さい機械を頭につけられた。
「これから今日学校で先輩に会ったときに時間を戻します。」真剣な表情で言うからもしかして
本当に過去に戻るのか、半信半疑の気持ちで頷いた。
「10分にタイマーをかけるので10分経ったら自動的に戻ります。」そう言ってボタンを押す。
「先輩?先輩ってば!」
「はっ!」
「久しぶりに会ったのに何ぼーっとしてるんですか?」
「あっあぁ・・・ごめん」
どうやら本当に過去に戻ってきたようだ。さっきまでももかの家にいたはずなのに
気づいたら学校にいた。ももかのやつすごい機械持ってるな・・・
「で、絵里先輩はどこですか?ずっと会いたかったんですよ!」
「あっあぁ・・・絵里は・・・」また一から説明していると。
「はっ!」
「お帰りなさい先輩。どうでした本当に戻れたでしょ?」どうやら目の前のももかは
現在のももかのようだ。
「おまえすごいなこんな機械どうしたんだ?」「作りました。」
「お前機械とか作れたんだな、でもこれさえあれば絵里を救えるかもしれない」
「ただ一つ欠点があります。」「欠点?」
「はい、実は過去にはいけても過去を変えることはできないんです。」
「それじゃあ絵里を助けることはできないのか?」
「はい、でも過去を乗り越えることはできます。」
「どう言うことだ?」「最高一時間しか設定できないので時間内に絵里先輩に
さよならと言ってきてください。」
ももかは俺の過去を乗り越えさせようとしてくれたのか。
「わかった、ありがとう。」そう言うとももかが一年前の事故の日に設定してくれた。
「いってくる。」そう言って過去に戻ろうとしたときももかが泣いているように見えた。
「けいくん・・・けいくんってば!」聞き覚えのある俺を呼ぶ声が聞こえる
心地いいのになぜか涙が溢れてくる。
「絵里・・・」「そうだよ、絵里だよ?」俺は泣きながら絵里を抱きしめた。
「絵里!絵里!」「急にどうしたのけいくん!」
「ごめんな!本当にごめんな!」「ちょっとほんとにどうしたの!?」
俺を助けてくれたこと、もっと絵里を大事にしていたらと謝った。
「ちゃんと後で説明してよ?」と言いながら絵里はやさしく抱きしめてくれた。
だんだん落ち着いてきてももかが作った機械で未来から来たこと、過去は変えれないこと、
このあと絵里が俺を助けて死んでしまうことを話した。
「そっか未来からね・・・」「信じるの?」「一度でもけいくんを疑ったことある?」
確かに絵里はいつもそうだった、そんな優しさに何度救われたことか。
「私もう少しで死んじゃうんだね・・・」そう言う絵里は泣かなかった
これから自分が死んでしまうが分かっているのになぜ泣かないんだろう。
「でもいいの!けいくんが生きているなら私はけいくんを助けるよ
たとえ自分の命と引き換えになったとしても。」
「ごめん・・・。」「そう言う時はありがとうだよ!」
「でも、絵里は俺を助けなければ生きれたんだよ?」
「まぁ、けいくんと一緒に歳をとって生きていきたかったけど
でもけいくんを助けれるならいいんだ。
私ね、けいくんにたくさん助けられたからずっと私がけいくんを助けたかったの。」
「俺は何もしてないよ助けられていたのは俺の方だよ。
絵里はバイトでミスをして落ち込んでいたら次はミスをしないように頑張ろうと励ましてくれた。
学校のテストが近い時は自分の勉強をしないで俺に教えてくれた。
特に何もなかった日でも絵里が笑わせて楽しい1日にしてくれた。」
思い返せば返すほど絵里にどれだけ助けられていたかがよくわかる。
「そうなんだ私けいくんの助けになれてたんだ。」嬉しそうに絵里は涙を流した。
「でもね、これだけは知っていてほしい。けいくんは中学校の時友達ができなかった
私に話しかけてくれたんだよ。」
「そんなことかよ」「そんなことじゃないよ、けいくんが話しかけてくれなかったら
ずっと一人だったと思う。」
確かにはじめて話した時は一人で本を読んでいて雰囲気も今とは全然違った。
「私はね、けいくんとずっと一緒にいたいから自分を変えてけいくんに
相応しい人になろうと頑張れたんだよ
その努力もあって今はこうして付き合ってる、まぁもう死んじゃうみたいだけど。」
「そうだったんだな。」俺に相応しい人になろうなんて思ってたのは知らなかった
俺が絵里に相応しい人になろうと考えていた時絵里は同じことを思っていたのか。
「ねぇけいくん、まだ聞いてなかったけど、どうして過去を変えることは
できないのに過去にきたの?」
「俺は絵里の死を乗り越えることができなくてずっと一人でいたり笑えなくなっていた
そんなときももかが過去を乗り越えるために
過去の君とも一度会ってさよならを言ってこいって言ってくれたんだ。
だからさよならを言いに来た。」
「そっか、私はけいくんとお別れするのは悲しいけど区切りをつけなきゃね。」
優しい目で俺を見ながら絵里はそう言った。
「最後にけいくん、わたしのお願いを聞いてくれる?」
「もちろん、俺にできることなら何でも言ってくれ!」
「ありがと、私のお願いはね、私を忘て自分の人生を生きてほしい。」「えっ?」
「けいくんは優しいから約束しないと私が望んでるとか言って自分のために
生きようなんて思ってなかったんじゃない?」
「・・・」「やっぱりね」そう言って絵里は笑った。
「そう思ってくれるのは嬉しいけど私のせいでけいくんの人生を無駄にさせるのは嫌なんだ。
だからさ、約束して?」絵里はそう言って小指をこちらに向けた。
「嫌だ・・・」「えっ?」「嫌だ!」「俺は絶対に絵里を忘れたりしない!」
絵里は自分を忘れてと言ったでも、俺はこんなにも大好きな絵里を忘れたくはない
忘れれるとも思わない。忘れることを過去を乗り越えるとは言わない。
絵里の頼みを断ったことなんて一度もなかったでも、忘れるのは絶対に嫌だった。
「けいくん・・・」
「俺が絵里のことを忘れたら楽しかった思い出も全部消える、そんなのは嫌だ!
だから俺決めた・・・
いつか俺も死んだ時、絵里との思い出とこれからの俺の人生頑張って楽しかったことをこんな事あったんだぜって話すからさ、それまで信じて待っていてくれよ。何日経っても終わらない
ぐらいすごい話持っていくから、またいつもみたいに聞いてよ。」
俺は、絵里との思い出を大切にしながら次に会える時までに自分の人生をたくさん頑張って
面白い話をいっぱい持っていこう、そう決めた。
「うん、待ってるね」そう言って絵里は嬉しそうに泣いた
もうすぐ事故が起きる時間になる。お別れの時間だ。
「絵里大好きだよ。」「私もけいくんのことが大好き。」
これから絵里は俺を助けるためにしんでしまう。俺は絵里に助けてもらう命を大切にし、絵里の分まで思い出を作り、また絵里に会う。
「そろそろけいくんを助ける時間だから。」
「あぁそうだな。」
「うん。」
「俺を助けてくれえてありがとう。」
「うん、楽しい話待ってる。」
「「またね」」