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ユリカは覇道を目指す!  作者: 名切沙也加
20/23

第20話 冬のイベントでの出来ごと その3

安易に飛翔魔法をつかった大魔王たち。ちまたでは大変なことになっているようです。

第20話 冬のイベントでの出来ごと その3


 東京の西のはずれの乙女市にある花菱ホテル、名を神楽の庄という。

 俺たちの今いる花菱ホテルの正式名称だ。コンセプトは和のくつろぎと華やかさ。30階建の高層ホテルだがいたる所に高級旅館の趣のあるデザインが特徴となっている。

 屋上には半露店風呂もあり、なんと天然温泉が地下800メートルから引かれている。単純炭酸泉で美肌にも良いとのことである。

 そしてその温泉のある最上階のすぐ下のスペシャルスイートルームに6人の女性が今、辛辣な顔を付き合わせている。


 1人は俺こと大魔王アークサタン、魔界からこちらの世界に転生し今は女子高生のユリカのクローン体となった女の子。

 もう1人はサキュバスの女王ララ。魅惑の肉体とフェロモンでかつては俺の愛人でもあった。が、今は大魔女マーベラによりその体は15歳の美少女となっている。俺と同じ銀髪赤眼でユリカの妹と間違われている。

 もう1人は田町詩織。アトレリア女学院のユリカの同級生。ただしオタクであり今は俺の眷属。最近はメガネをやめコンタクトにしたせいか、美少女っぽくなっている。

 もう1人は古代魔竜のメリダ。俺のかつての冒険者仲間でもあり今は人化形態で俺の秘書をしている。年齢は千年を超えるが今だにそのボティは蠱惑的だ。冒険者時代は俺と恋愛関係であったことは皆には秘密だ。

 もう1人は清友麻衣子。今はユリカの兄で元の勇者である花菱剛毅の妻である。なので今は花菱麻衣子か。世界的なファンドを率いる才女で今は花菱の総合科学研究所の所長を兼任している。なんと知能指数180の天才でMIT卒業。自然科学分野での研究論文をいくつも書いているという。一見、その言動から強欲そうに見えるが人は見かけによらないものだ。

 もう1人は服部芽衣。花菱家の専属メイドであるが、その出自は忍者の家系である。服部半蔵の子孫と称しているが定かではない。細身でボブカットの典型的な日本女性であるが、その戦闘力は計り知れない。

 以上の6名がスイートルームのリビングにあるテーブルで項垂れながら今後のことについて話し合っている。


「にしても困ったものよね。この後、どうすれば・・・」


 メリダが85インチの大画面テレビを見ながらため息をつく。

 テレビには魔法少女たちがタワーマンションから3人の女の子たちを救出する様が繰り返し映し出されている。その魔法少女たちとは俺とララ、そして詩織である。イベントの後、魔法少女ナイトメアのコスプレのまま救助してしまったのだ。しかも飛翔魔法まで使ってしまった。

 緊急事態とはいえあまりにも浅はかだった。この地球にはまだ飛翔魔法は存在しない。いや、それより魔法少女などという存在も空想上のものだ。それが現実となった。テレビが騒ぎ立てるのも当然だ。

 さらに悪いことに俺たちの正体がバレそうになっている。詩織はきつめのメイクであったので大丈夫そうだが、俺とララはほぼ素顔だ。銀髪赤眼の美少女。金髪のウィッグと青いカラコンを取っていたためバレバレだ。特に俺の顔は先のバンパイア亡命事件の当事者であるバンパイアの女王アリアと瓜二つなのである。アリアがアトレリア女学院に入学したことは世間一般に知られてしまっている。お昼のワイドショーなどでは一時、この話題で持ちきりだったしな。

 このことからアトレリア女学院の関係者にマスコミの記者は取材しまくっているらしく、ララも女学院の生徒であることがバレてしまった。

 今後の対策を練ること1時間。この程度では結論が出ようもない。

 と、その時、部屋専用のインターホンが鳴る。来客のようだ。インターホンに出た芽衣が驚いたようにみんなに告げる。


「アリア様、そして元のユリカ様、三島遥香様、そして遥香様の妹の三島聖奈様の四名がお見えになりました」


 遥香と聖奈はおそらく火災からの救出劇による俺たちへのお礼だと思う。遥香も俺の眷属だし早く会いたかったのだろう。

 それにしても元ユリカとアリアとは。二人とも年末でかなり忙しいと聞いていたのたが。


 スイートルームは広いと言っても流石に10人ともなるとちょっと手狭になる。椅子は8脚しかないので急遽足りない分を窓際のテラスルームから持ってくる。

 三島遥香と妹は早速俺たちに救出の礼を述べる。そしてクリスマスパーティーと聞いていたとのことで大きなバケツを持参。いや、バケツではなく中にはフライドチキンやクッキーなどが入っていた。そしてしばし救出劇のことで盛り上がる。

 もっとガヤガヤするかと思ったが、まだリアル魔法少女の件が片付いていないことに気づく。会議の続きだ。とここでアリアから衝撃の発表があった。


「実は飛翔魔法の件だけど、バンパイアの科学局で反重力に関する研究が大詰めを迎えていたの。そしてアトレリア公国の研究機関と合同で最終確認をしてとうとう重力の秘密が解き明かしたわ。これにはユリカの働きが大きかったけど」


 アリアによると重力の秘密が今、完全に解き明かされ、さらには反重力の技術まで開発できたということだ。これには元のユリカの助力があったということだがユリカは俺と融合することで意識が他の並行世界の住人とも繋がることが度々あったそうだ。

 ある日、たまたま意識が繋がった並行世界の住人は科学が遥かに発達した世界の住人であった。しかも重力に関するその研究の第一人者だったという。

 アリアの説明は続く、


「重力とはエーテルのスピンということがわかったの。宇宙空間におけるエーテル理論はかなり昔から提唱されていたけどそのエーテルをついに科学的に実在することが証明されたのよ。しかもそのエーテルが重力の元となっていたことが判明したの。物質の原子間に入り込むとエーテルはゆっくりと右回転を始めるの。すると質量という概念が生まれ物質同士が引かれ合う。つまり引力の発生よ。そして魔力の根源たるマナというものはこのエーテルが左回転した特殊な状態を持った原子ということね。さらに言えばこのエーテルの左回転を加速させると反重力が生まれるというわけ」


 頭の良いメリダが疑問をぶつける。


「物質内で反重力が生まれれば原子間で反発しあってバラバラになるのではないかしら」


「それは心配いらないわ。原子間引力の方がはるかに大きいとわかっているから。しかもこのエーテルは人の意思に反応することもわかっているの。つまり魔力とはエーテルによる物質の移動、変化と言い換えられるわね。ユリカ、例のものを見せて」


 元のユリカは持ってきたバッグからハーネスのようなものを取り出した。ただしかなり薄く軽そうだ。色は薄いブルーで光沢がありヒラヒラしている。


「田町詩織さん。こちらに来てこれを装着してくれるかしら」


 呼ばれた詩織はパジャマにすでに着替えていたがその上からそれを装着する。


「先ほど、魔王様と一緒に飛翔したのでその感覚がまだ残っていると思います。その時の感覚を思い出して少し床から浮いてみてください。イメージとしては10センチくらい」


 装置を装着した詩織は何をされるかちょっと心配な顔であるが、俺のやれと言う暗黙の指示に従ったようだ。俺は詩織に檄を飛ばす。


「詩織、頑張って! 今こそ詩織のオタクとしての本領を発揮するときよ」


 オタクは関係なかったか。が、詩織は意を決したように両手を広げ足を少し開く。そして飛翔の時を思い出すように目を瞑る。


「おおっーー、すごい」


 詩織は見事に宙に浮いていた。重力制御が成功したようだ。

 アリアがちょっとドヤ顔になる。そして、


「麻衣子さん。明日にでも花菱の本社で大々的に重力制御の発表会をしましょう。人類は重力の制御という新たな歴史の一歩を踏み出します。すでに剛毅さんにはその旨を伝えて段取りは進行中です」


 麻衣子はすぐに夫の剛毅に連絡を入れているようだ。かつての勇者であった花菱剛毅は今や花菱グループの総裁代行。実質的な経営の実行役だ。

 メリダが念押しするように質問する。


「つまり、今回の魔法少女事件は魔法少女のイベントで擬似的に重力制御を体験させ、本番は明日であったということにするのですね。たまたまその途中で火事がありそのことが役に立ったと」


 その言葉にアリアが、


「さすがメリダさんね。話が早い。これで今回の件は一件落着。いえ、むしろこれからが大変よね。さあ、みなさん、忙しくなるわよ。覚悟しなきゃねって言いたいとこだけど、クリスマスパーティーの途中と聞いてきたわ。これから続きをしましょう!」


 ようやく方向性というか今後の成り行きが決まったところで皆ほっとする。そしてパジャマパーティー兼クリスマスパーティーの始まりだ。

 といっても俺にはまだやることがある。すぐにベルフェゴールに悪魔の遠隔通話で連絡をとる。ネット回線を使わないので秘匿性が高い。そしてまだ市場の開いているロンドンの株式市場で花菱の関連株を買い漁るように指示。インサイダー取引以外の何物でもなく現代経済における最大の悪事。

 が、俺は悪魔。悪事などどうでも良い。明日には数兆円規模の利益を上げることになる。


・・・どこにも証拠が残らないので問題なし


 いや、問題だらけであるが富は富を産む。それが資本主義の大原則だ。


 クリスマスケーキとチキンを食べプレゼント交換会。

 俺の用意したプレゼントはハワイの花菱リゾート一週間の旅。最高級のリゾートで各種リラクゼーションとアクテビティ付き。さらにアウトレット免税店での1万ドル相当のお買い物券。俺のプレゼントが1番豪華かと思ったが上には上がいた。

 麻衣子は花菱自動車の最高級スポーツカー「疾風」の特別仕様車。日本円で1億円とのことで桁が違った。俺は二輪免許は持っているが18にならないと普通免許は取れない。そこを麻衣子にただすと、「教習所の入校料も含んでいるわよ」とのことである。「あ、でも皆さんが18歳になってからのお楽しみね」と付け加えられた。プレゼント取得まではまだ2年。気の長い話だ。

 なんて思っているとアリアのプレゼントはなんと結婚式場でのウエディングパーティー一式。さらに気の長い話だ。アリアは最近、バンパイアの事業の一環として結婚式場を始めたそうだ。少子化が叫ばれて久しい日本であったが、ララと一緒に日本には多数のサキュバスが紛れ込んだらしい。その数3万人ほど。男性の性欲が高まり婚姻意識が高まると判断したらしい。それに日本に来たバンパイアの半数が独身である。これもその数5万人ほど。これからの需要を見込んだらしい。


 まあ、そんな豪華なプレゼントや変わったプレゼントの交換会であったが俺には田町詩織の薄い本セットが当たった。詩織のオリジナルがかなり含まれており冬コミで1時間で捌き切った伝説の薄い本のセットとのことだ。当たった感想を詩織に聞かれたが、俺はBLには一切興味がない。すぐにネットオークション行きだがこれは内緒。


 無事にプレゼント交換会も終わり一日遅れのクリスマスパーティーもいよいよ終焉。このあとはみんなで屋上の露天風呂に行こうということになった。


・・・まずい。俺の意識は元のユリカと分離した後、男としての自我が完全に蘇ってきている。サマースクール以来の女の子の裸に耐えられるだろうか・・・


 魔界では酒池肉林のパーティーを毎夜のように開いていた俺だが、いざ自分自身が女の子になってみると女性をモノとしてしか見ていなかった自分に気づいてしまった。一人一人の女性の意思をもっと尊重して大事にしなければと今は思っている。そんな今だから眷属、いや友人となった女の子達の裸を見るというのはどうなのかと思う。


「何か変なこと考えているのかしら。アーク。もうあなたもちゃんと女の子なのだから普通にしていれば良いのよ」


 元ユリカにはお見通しだったようだ。

 その後、屋上露天風呂でのぼせたのは言うまでもない。


・・・にしても元のユリカの胸がすでにEカップ近いとは。俺は同じクローンなのに差をつけられてしまった。俺はまだCカップなのに


 男としての威厳は今やどこにもない。


次回はいよいよ大魔女マーベラの触手がいよいよこの地球に!乞うご期待。

Kindleにて他の作品も公開中! 「二度目の転生はハーフエルフでした」「ぼくが読モでツンデレな件」

TSラノベ公開中です。

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