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ユリカは覇道を目指す!  作者: 名切沙也加
18/23

第18話 冬のイベントの出来ごと その1

ユリカのクローンボディを手に入れた大魔王サタン。これから独自の活躍の始まりです。

第18話 冬のイベントの出来ごと その1


カシャ カシャ カシャ


 カメラのシャッター音に俺は包まれ高揚とした気分になる。



・・・これは病みつきになるのがわかるな


「マーベラさん。こっちに目線お願いします!」


「あ、次はこちらにお願いします!」


 周囲には大勢のカメラを構えたいわゆるオタクたち。

 そう、今、俺はオタクの一大イベントである冬コンに来ている。

 場所は西東京の乙女市にある花菱コンベンションセンター。東京ドーム3つ分の広さを持つ屋内展示場である。

 現在、クリスマスの翌日から3日間開かれる日本最大のアニメ、マンガの祭典である花菱冬マルチメディアアワードがそこで開かれているのだ。

 そして今は2日目のメインイベントである日本コスプレ大賞のプレイベントでの撮影会というわけだ。


・・・にしてもなんという人の多さだ。こんな衆目に晒されこんな格好でいるとは大魔王としてはいかがなものか・・・


カシャ、カシャ、カシャ、


 カメラの数は段々と多くなり秘書であるメリダが順番などを取り仕切っている。


・・・恥ずかしさもあるが、世、つまり俺を崇めるような態度。決して悪くはないな


 自身のコスプレ衣装は露出多めのエナメル調ボティスーツに大きな鎌を持つ大魔女マーベラ。

 幸いにして屋内で空調が効いているので真冬という割には寒くはない。いや、逆に恥ずかしすぎて体が熱っているくらいだ。


 真っ白なロングウィッグを被り顔の半分は黒い仮面に覆われている。これは大魔王サタンの火炎魔法で火傷を負ったという設定だそうだ。しかもその傷は呪いがかけられているため大魔王サタンを倒さない限り回復魔法では修復できないということになっている。そして仮面の奥から覗く金色の目。最初はコンタクトレンズで表現する予定であったが俺は大魔王だ。元の魔界ではデフォルトで金色の目。コンタクトをつけずとも金色に変色できた。


・・・しかしながら本物のマーベラはもっと背が高く巨乳であるがな


 ユリカのクローンである今の俺の体はせいぜいDカップに手が届くくらいの胸。本物のマーベラはGカップくらいはある。なのでパッドを二枚重ねでカサ増ししている。背の低さはハイヒールのブーツでなんとかしている。顔立ちは元々西洋っぽいので薄いメークでバッチリだ。


 今回のこのイベントには友人であり俺の眷属でもある同級生、田町詩織の立ってのお願いで参加している。その詩織は隣でマーベラのしもべであるサキュバスのララを演じている。こちらも露出多めのビキニでかなりエロい。ショートの銀髪ウィッグに西欧風のメイクでバッチリ決まっている。


・・・サキュバスのララか。かつての俺の愛人。そして大魔女マーベラの刺客に落ちた反逆者。本物のララに比べるとちょっと肉感的。が、よく似せているな。にしても俺が仇でもある大魔女マーベラの役とは・・・


 今年の春に始まったアニメ「ララの魔女旅」のキャラコスプレである。


 簡単に内容を説明すると現世で過労死したオタクサラリーマン(男)が異世界TS転生。可愛いいサキュバス、ララになってしまった。が、元が男であるため男を誘惑することができずに魔女になる決心をする。そして魔女になりたいララは大魔女マーベラの弟子になるため策を巡らせようやく弟子入り。が、魔界のルールを知らないララはドジばっかりで周囲を困らすという異世界転生アニメである。


・・・設定の半分は本当なのが怖いな。が、内容といいキャラといい絶対にあの大魔女マーベラの息がかかったアニメに違いない


 なんでもアニメ制作会社の一つが謎の資本に買収され、すでに製作が開始されていたなろう系アニメを中止して割り込みそこで「ララの魔女旅」は作られたそうだ。すでに制作途中だったアニメは期待されていただけにこの件はSNS上でかなりの非難を浴びた。が、予想に反して大ヒット。新たな異世界転生ものの境地を開いたとして絶大な評価を受けている。


 そのアニメにオタクを自他ともに認める田町詩織もハマってしまい今回のコスプレとなったわけだ。


「なんで私がララ本人でなくて妹役のリリなのかしら」


 俺の左横にはララの妹役であるリリのコスプレをしたララがいる。なんかややこしい。

 リリはララの妹というアニメオリジナル設定である。アニメの設定では転生の事情を知ったことでララの指南役となっている。


「ひとえに胸の大きさの関係だと思いますよ」


 田町詩織はすでにEカップ。ララは未だBカップだ。仕方がない。


 カメラマンたちの要求でマーベラ、ララ、リリの3人での絡みを要求される。アニメの重要なシーンであるララとリリがマーベラに弟子入りを志願する場面だ。マーベラに縋り付くララ。それを止めようとするリリ。

 再びシャッター音の嵐。この写真はSNSで瞬く間に世間に広まるだろう。一応、アトレリア女学院には自分の会社のイベントなので出場せざるを得ないということで許可をとっているが、他の生徒たちは気づくだろうな。特に俺とララはほとんど素だし。


・・・年明けの新学期がちょっと怖いな。それに元のユリカにはなんと説明して良いやら


 ところで、そのリリ役のララの人気がすごい。ララは本物の美少女だしなんといっても本物のサキュバスである。知らないうちにサキュバスのフェロモンを周りに振り撒いている。明らかにカメラのレンズの多くはララを狙っている。ちょっと嫉妬する俺。こちらも負けずとより大胆なポーズをとる。詩織も負けずと大胆に。その競い合いも素晴らしかったのか会場全体のカメラマンの半分は俺たちの周りにいるようだ。


・・・ちょっと張り切りすぎたかな


 その後いくつかのポーズをとりいよいよラストショットの時間。


 カシャカシャカシャカシャカシャ


 すぐ目の前にいる高級一眼レフを構えた帽子にマスクの男が必要に俺の股間を狙ってシャッターを切っている。他のカメラマンも同様に俺の股間を狙っているような。

 おやと思い股間を確認。するとボディスーツの股間部分がワレメにきっちり食い込み大変なことになっている。一本のスジが大事な部分を激しく主張している。


「ちょっと休憩。メリダ、終わりにして」


 撮影会を仕切っていた秘書であり運転手のメリダが両手を振って撮影会の終了を告げる。

 会場のアナウンスもあと30分で日本コスプレ大賞の審査が始まることを告げている。


 このあとはメイン舞台でその審査会だ。1組が2分間のパフォーマンスをして優劣を決める。優勝はロスでのアニメイベントにVIP待遇での招待と賞金200万円。

 はっきり言って俺たちはそれにはあまり興味がない。詩織の希望で来年2月のロスのそのイベントには参加が決まっているしお金なら兆円単位で持っている。あくまで名誉のための参戦だ。

 そこにメリダが、


「あ、日本コスプレ大賞のイベントにはゲスト枠での出演なのでコンペには参加しませんよ。主催者が出て賞をもらうなんてこと出来ないでしょ」


「そうなの。詩織、聞いてる?」


「はい、もちろん。私たち主催者側ですから。それよりこれから着替えて魔法少女ナイトメアのコスプレをしてもらいます。あ、ユリカは生徒会の仕事が忙しかったのでぶっつけ本番になるけど、大丈夫よね?」


 ユリカ? あ、今は俺だった。


「ええっと、聞いてないけど。なんとかなると思う」


 メリダが補足説明をしてくれる。


「魔法少女ナイトメアは日曜の朝8時からの少女向けアニメです。花菱テレビ局の独自制作で花菱トイがメインスポンサーということもあり社長である剛毅様の立っての要望です」


 花菱テレビと玩具メーカーの花菱トイはユリカの兄である剛毅が社長を務めている。俺自身も株の30%を持っているので他人事ではない。これはやるしかないのか。

 

 俺たちは会場の一角にある会議室に向かう。そこはコスプレの着替え室に今日は割り当てられている。

 普通の学校の教室二つ分ほどの広さの会議室にはすでに予選を勝ち抜いた15組、40人ほどのコスプレイヤーたちがいた。ここにいるのは女性のみのコスプレイヤーで男性の残り8名のコスプレイヤーは隣の小会議室で着替えているとのことである。

 ザワザワと騒がしい音が外まで漏れ出している。

 詩織に続いて中に入ると、


・・・アトレリア女学院の更衣室のような匂いだな


 空調が効いているはずなのにむせかえるような少女たちの熱気と制汗剤が混じりあった空気に頭がくらりとする。

 ほとんどの女子コスプレイヤーが本戦前に備えて身繕いをしている。一度完全に衣装を脱いできっちりと着直しているものがほとんどだ。ほぼ全裸に近い子もいる。趣味のためとはいえ恥ずかしくないものか。目の前でもお尻をプリンと突き出し1人の女の子が着替えをしている。


・・・俺がここで着替えて良いものか。まるで魔王城でのサキュバスとのパーティーを思い出す。いや、今、俺の体はユリカで女の子だ問題はあるまい


 とりあえず着替える前に俺は自身をネット接続し高速で脳内に魔法少女ナイトメアの動画をダウンロードする。


・・・まずは魔法少女ナイトメアとは何かを知らないとな


 ダウンロード後、脳内で鑑賞。5分ほどでおよその衣装、形態や動きを覚える。子供向けもあってそれほど複雑なものではない。特に変身時の動きは独特なものではあるが再現には問題ない。その動きを直接、筋肉細胞内にあるマナに取り込み正確に再現できるようにする。


「ユリカ、何ボーッとしてるの。早くこれに着替えて」


 田町詩織から渡されたのはナイトメアホワイトの衣装だった。巫女さんのような衣装であるがミニスカ仕様となっておりアンダースコートが必須だ。アンダースコートはと詩織に聞くと、


「あっ、ホワイトは上半身をはだけて必殺技出すので中はこの水色のレオタードなの。薄い生地なのでショーツのラインが出るから下着はつけないでね」


 どんなキャラだよとツッコミたくなるが時間がない。今は素直に従おう。が、さっきの件を思い出した。


「えっと、このままだと股間にまた食い込みが発生しそうなんだけど」


 詩織は先ほどのカメラマンたちの視線が俺の股間に集まっていたことも知っている。


「ええっと、それ専用の股間ライナーがあるのだけど今からじゃ間に合わないわね。仕方ないわ。いつも私がしている方法を試してみて」


 詩織が自分のショルダーバッグをまさぐる。そして渡されたのは生理用のナプキン普通の日用だった。


「食い込みが発生しないようにこれを股間に貼り付けてね。あ、いつもと逆で粘着面を股間側にしてスジに沿って少し上の方に装着するの。これで解決できるはず」


 そういえばこの体になってからはまだ生理は一度しか来ていなかった。その時はまだ元のユリカが日本にいたのでナプキンを借りていたのだがこれからは自分で用意しないといけないな。

 などと考えながら無事に装着。衣装を着る。少し動いてみるが大丈夫なようだ。

 隣ではすでに全裸になったララが詩織の衣装を待っている。さすがサキュバスだけに裸には全く抵抗がないようだ。


「はい、ララはナイトメアピンクね。きっとララにはピッタリよ」


 ララに渡されたのはピンクのメイド服。これもミニスカ仕様でパンツ丸出しだが大丈夫なのか。

 そして田町詩織はナイトメアレッド。隊長はレッドと決まっているらしい。いや、あれは戦隊モノか。なんだか俺の中で記憶が錯綜している。レッドの衣装は真っ赤なアイドル衣装が基本となっている。いやどちらかといえばアイススケートの衣装か。

 そして魔法少女らしく魔法のステッキを各自手渡される。


 無事に着替えが終わり会場外のロビーに移動。こちらは関係者用のロビーなのでほとんど人もいない。そこで三人で決めポーズの練習をする。5つのパターンほどができるようになりメリダにチェックを入れてもらう。


「うん、問題ないわ。みんなとても可愛いわ。特に魔王様。いえユリカ様ね。必殺技の前の衣装をはだける所。完璧です。レオタードの背中に浮かび上がる桜吹雪がとても幻想的で素晴らしいです」


 なぜかナイトメアホワイトは必殺技を出す時に上半身をはだけ、背中にある桜吹雪の絵が光るのである。どうやら原作者が遠山の金さんの大ファンでこれを取り入れたらしいが、原作者の年齢いくつなんだよって感じだ。

 開始まであと10分ほど。俺たちは軽く屈伸や伸びをして体をほぐす。会場はカメラ持ち込み可能なのでもう一度股間の状況を確認。

 問題ない。


 そしてメリダが進行手順を説明してくれる。


 俺たち三人の役割はまずオープニングで舞台が暗転するところで登場。二つ決めポーズをしたところで敵役のロボットゴーレムが登場。三人合わせての斬撃魔法でやっつけるという寸劇をまず行う。

 そこに大魔王サタンが現れ魔力の尽きたナイトメアピンクを攫っていくという設定だ。ホワイトとレッドが追いかけるところで「果たしてピンクは無事なのか」というところでいよいよ審査が開始される。続きはコスプレ参加者の披露が終わり、採点の集計が終わるまでの5分間で行われる。つまり俺たちは場の繋ぎ役。


・・・なんと大魔王サタン。つまり俺自身が敵役ということか。誰なんだこの設定考えたのは


 それを察してかメリダが、


「すみません。魔王様。いえユリカ様。この企画を考えたのは花菱剛毅様です。勇者様には私も逆らえませんので」


 帰ったら卍固めだ。


「逆に剛毅様は喜ぶんじゃ」


 確かに。


ちょっと短いですが、どんどん更新する予定です。はたして大魔王サタンはこの地球を制服することができるのか・・・


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