13.サマースクール その2
サマースクールに水着会がしっかり書かれていないとのお叱りをうけ、更新しました。
13.サマースクール その2
サマースクールの2日目の朝。
体の変調に気づき目が覚めた。時計の針はまだ六時。起床時間までは三十分ある。
それにしても体が重い。昨日のオリエンテーリングに名を借りた肝試しのせいかと思うがそうでもなさそうだ。なんだか腹も痛くなってきた。すると元ユリカが出てきた。
『あー、そろそろかもね。うん、前回から今日で二十五日目。始まってもおかしくわないわね。でも今日は海辺での運動というか遊びよね。ナプキンしか持ってきてないしどうしよう』
どうやら俺に女の子の日が来たようだ。以前、治癒魔法で対処しようとして元ユリカに怒られた。病気ではないのだから現状を我慢しなさいと。
俺はとりあえずナプキンの入ったポーチを手にトイレに。ついでに替えのサニタリーショーツも持って入る。血のついたショーツは勿体無いがビニールに包んで捨てることにする。まだ始まったばかりでそれほど大事になっていないのが幸いだった。
ポーチを手にトイレから出ると愛理が待ち構えていた。手のポーチを見て、
「あら、ユリカ始まったのね。私も。それより今日のイベントどうするつもり。水着だしナプキンじゃどうしようもないよ」
今日は日頃の運動不足を解消するためにビーチでの運動がメインとなっている。始まった以上、見学が妥当だろうか。
「今日はビーチバレーの大会もあるし絶対参加したいよね。ね、ユリカ。タンポン使ったことある?」
愛理は自分のポーチから何やら四角い箱を取り出した。タバコの箱より少し大きい。するとそこから何やら取り出した。短い筒状のものだ。
「これがタンポン。これなら海に入れるわ。私もこれを使うつもり。少し多めにあるからユリカも使ったらどう?」
「ええ、でも大丈夫なのかしら? 私使ったことないし」
「大丈夫よ。なんなら今、使い方教えるわよ。まず私が装着するので見てると良いよ」
保養所のトイレはいわゆるユニットバスで中は広い。それにしても今から女の子のあられもない姿を目にすることに考えつき俺は断ることにする。
「やっぱりやめておくわ。愛理に変なことさせられないし」
すると愛理は、
「変なことじゃないわ。やっぱり最初は誰かに教わらないとできないから。私も最初は陽茉莉に習ったのよ。それに今日のビーチバレー大会には是非ともユリカに参加してもらいたいの。優勝とは行かなくても三位以内に入ると豪華景品出るのよ。運動神経抜群の陽茉莉となら優勝も狙えるわ。ね、だからお願い」
陽茉莉はテニスで全国大会に出場できるほどの運動神経。そしてユリカこと俺も魔界の大王たるサタンが憑依したことで抜群の運動感覚を今や身につけている。つまり現在のアトレリア女学院の運動ツートップが陽茉里と現ユリカなのである。
ビーチバレー大会は三人1組、つまり今の班でワンチームとして戦う。2人がコートで1人は控えというわけだ。つまり愛理は俺たち2人におんぶに抱っこだが優勝を狙っているというわけだ。ルールとしては15点先取で勝ち。1人最低3回はサーブを打たなくてはいけないので愛理が全く出ないというわけではないが。
「わかったわ。仕方がないわね。それじゃ見本を見せてちょうだい」
2人でトイレに篭りタンポンの付け方教室。下半身丸裸の愛理の肢体にちょっと興奮するが残念ながら男としての機能は今は全くないのでそこまでは興奮しない。俺がつける番になると元ユリカも出てきた。
『無理はしないでゆっくり挿入してね。まあ今時、処女膜の重要性ってあまりないとは思うけど、それでも傷が付いたらきっと痛いから』
魔界であるアークランドでは結婚前の処女性が重要視されるがこちらの世界ではそこまでではないのだろうか。そんなことを考えながら愛理を真似して前屈みでそれをゆっくりと内部に挿入していく。途中、ちょっと引っかり挿入しづらかったが幸い痛みなどなかった。
取り出し用のヒモがちゃんと出ているのを確認して装着完了。これで今日のイベントに参加できる。その後、愛理からタンポンを4つもらう。始まったばかりなので二時間に一回くらいの交換で良いそう。
起床時間になる。この後は朝食を摂り迎えのバスで花菱のプライベートビーチに移動となっていいる。ビーチには着替えるスペースが四人分程度しかないので予め水着に着替えその上からジャージを羽織って出かけることになっている。
「それにしても愛理って着太りするタイプなのね。水着になるとちょっとグラマラス程度にしか思えないわ」
陽茉莉は愛理のタンキニの水着を見て感心したように言う。タンキニのため胸のデカさは強調されていない。それに比べて下はフレアスカートのないタイプなのでお尻のラインが強調される。綺麗なヒップラインにハッとするほどだ。
「そういう陽茉莉は逆に着痩せする他タイプよね。胸も意外とあるしお尻も綺麗だし」
愛理も陽茉莉の水着の素晴らしさに感心する。紫のビキニで布面積少なめ。プライベートビーチは完全に男子禁制。事前にそれは知らされていたのでみんな意外と大胆な水着なのかもしれない。
俺、ことユリカは普通のワンピース水着。といっても肩口と腰にはフルルが付いていて可愛らしい。薄いピンクなので透けるかもと思ったがアンダーヘアもシルバーなので問題なし。元ユリカの指示でちゃんとムダ毛も剃ってきたので大丈夫だ。一応バンパイアなので日差しはあまり得意ではない。ビーチバレー以外の時はこの上にTシャツを羽織るつもり。
朝食会場はすでに賑わっている。アリアの姿を見つけ声をかける。実は双子のせいかユリカとアリアの生理周期は全く同一だからだ。
「アリア。体調はどう? 」
「それを聞くのはルール違反よ」
なんかそらされてしまう。おそらく来ているのだろう。後に対戦するかもしれないのでここは深くは聞かない。
食欲があまりないが体力的に持たないかもしれないのでコーンフレークに砂糖を増し増しでミルクがけ。これでなんとかなるだろう。そして迎えのバスに乗りビーチへと向かう。
愛理が、
「今日は日差しが強そうね。ユリカは大丈夫なの?」
バンパイアと知っているだけに日光に弱いことがわかっているのだろう。
「心配ないわ。普通に日焼けはするけどね。赤くなるといけないので日焼け止めのオイルを持ってきたの。あとで塗ってね」
言ってちょっと期待してしまう。美少女の手であんなところやこんなところに塗り塗り。興奮して赤くなる。すると陽茉莉が、
「ユリカ。熱でもあるのかしら。無理はしなくてよ。アレだし」
変な心配をかけてしまった。
そんなたわいないやり取りをしているとバスはビーチに到着。ここは花菱のプライベートビーチで本日は男子禁制。
「すごいわね。白い砂浜。そして青い海。空には入道雲。沖にヨット。まるで絵に描いた夏の景色ね。最高!!」
愛理の言葉に嘘はない。今日は最高の海水浴日和だ。
『何年振りかしら。ここのビーチ。懐かしいわ。今日はだいぶ調子いいみたいなのでできるだけ意識、同調するわね』
元ユリカも今日は楽しんで欲しい。最近では無意識に意識が同調してしまっていることも多い。俺と元ユリカの同化が進んでいるのかもしれない。秋にはユリカのクローンボディが完成するので早いところ分離しないと取り返しのできない事態になりそうだ。
『そんなことは心配しなくていいわ。万が一、私としアークが同一化したらそれはそれでいいかもと最近思い始めているの。アークって意外とシャイでお人好しなのもわかったし』
俺はとりあえずユリカの言葉を無視することにする。やはり人間と悪魔は別物だ。決して一つになるなんて許されることではない。
今日の予定は午前にビーチバレーボール大会。午後はスイカ割り大会だ。空いている時間は自由時間。泳ぐもよしビーチでくつろぐもよし。
ビーチにはすでに3面のコートが用意されている。早速水着になり抽選会。
俺たちの班はシード組になる。5回勝てば優勝だ。
陽茉莉が、
「15点先取で勝ち。ジュースなしだから決着は早く着きそうね。ただ・・・」
愛理の方を見る。すると愛理が、
「そうね。私がずっと控えというわけにもいかないしね。確か一人最低でもサーブは3回打たないといけないのよね」
三人1チームなので2人がコートで1人が控え。ただし控えになっても最低3回のサーブが義務付けられている。サーブ後に得点が入るか入れられると交代できる。交代は自由なので愛理の使い所が肝心となる。
「ここは愛理先発であとは私たちでどうにかするという作戦が一番ね」
運動神経神クラスの陽茉莉の言葉に納得する俺。
そして試合が始まった。
『うーーん、タンポンってちょっと違和感。激しい運動にはどうかと思う』
すでに4回戦。これに勝てば決勝だ。ただ経血で膨らんできたのかタンポンの感触が気持ち悪い。激しく動くと股間でグニュルルという感じで違和感ありまくりだ。集中できない。
『そろそろ替えたほうがいいかも』
果たして1人でうまく挿入できるか不安になりながらトイレへと向かう。
とそこでアリアと遭遇。
「あっ、やっぱりね。次は決勝戦で当たるみたいだけど。大丈夫なの?」
アリアもどうやら俺と同じ状況。やはり替えに来たのか。
「ええ、大丈夫と思うわ。ちょっと不安だけど」
「手伝うわ。あなた初めてなんでしょ。ヒモ出てるし」
俺は股間に目をやる。すると取り出し用のヒモが股間からはみ出て垂れ下がっている。
「ちゃんと垂れないように気をつけないと。アレってのがバレバレじゃない」
まあバレてもここは女の子しかいないので問題ないと思うが。
「デリカシーの問題よ」
見抜かれていた。
そしてトイレで交換。やはりアリアについていてもらってよかった。
俺一人ではアレを抜くことかできなかったのだ。ユリカの処女膜を傷つけないように慎重すぎてダメだったがアリアは躊躇いなく抜いてくれた。
「そんなに簡単に傷つくものじゃないわよ。ていうかバンパイアは再生能力高いのであなたが憑依している限りは万が一でもすぐに再生するわ」
そんなものかとも思うが、やはりユリカに対しては優しく接していくのが紳士であろうと考え今後もこの方針は変えるつもりはない。
『紳士ねえ、悪魔だけど・・・ でもちょっと嬉しいわ』
元アリアはわかってくれているので問題はない。
そしてビーチバレーもいよいよ決勝戦。
意外だったのは愛理もそこそこ活躍してくれたこと。
サービスエースはもちろんレシーブなどもしっかりやってくれ得点に結びついた。
「これでも私、中等部時代は学外の地元バレーボールチームのエースだったのよ」
愛理の説明に納得。ユリカの記憶によると愛理は中等部では結構筋肉質でしまった体をしていたのを思い出す。週末は用事があるからと付き合いの悪かったのはそのせいか。が、決勝戦を前にかなりへばっているようだ。
「流石に疲れるわね。あと十キロダイエッしないとヤバイ!!」
痩せなくてもかなりの美少女なのだが、痩せると超絶美少女確実。ようやく気づいてくれたようで何より。
そして決勝戦の相手はアリアのチーム。アリアはビキニで鍛えられ上げた肉体を惜しげもなく晒す。腹筋割れてるし。他のメンバーもかなり運動神経が良さそうだ。クラシックバレエで体幹が鍛えられているとの情報もある。これは強敵だ。とりあえず今までの作戦通り愛理のサービスから始める。コートには陽茉莉がいる。つまり俺が最初は控えだ。コート横のテントの日陰で待機。横にはアリアが。アリアも控えスタートだ。
「日焼け止めのオイルが切れかかっているわよ。塗ってあげる」
アリアはオイルを取り出すと俺の承諾も得ずに塗り始める。オイルはクーラーボックスに入れていたためかものすごく冷たい。
「ヒャっ、アリア、冷たい!!」
アリアは情け容赦なく俺のボディにオイルを塗りたくる。これは反撃しなくては。
お返しにと俺もオイルを手に取りアリアに塗りたくる。
「ヒョッ、ヤメテっ!!」
「コラっ、そこ。じゃれ合うんじゃない!!」
先生に叱られた。ま、でも周りから見たら仲の良い姉妹にしか見えていないので問題なし。
そして試合開始。愛理のサービスからだ。
「行くわよ!!」
愛理の思ったよりも鋭いサーブが敵のコート奥深くに行く。
これはサービスエースか。と思ったら、
「えっ、簡単に返されて決められちゃった」
やはり一筋縄では行かない。3本立て続けに得点を献上。
愛理に変わり俺がコートに入る。ここから本番だ。そして向こうのコートにもアリアが入る。
そこからは一進一退の攻防が続く。そして3点差のままマッチポイントを迎える。アリアのサーブだ。が陽茉莉が上手くレシーブ。高く上がったトスを俺は渾身の力でスパイク。
「決まった!!」
これで2点差。が、まだマッチポイントのままだ。不味いなと思った時、
「思い出した。これならいけるかも。ユリカ、選手交代で私に出させて」
愛理が突然思いついたように申し出る。まあ、このままではどうせ負けるし、ここは愛理を出してみよう。負けても愛理は納得がいくだろうし。
疲れてきた陽茉莉と愛理が選手交代する。そして愛理のサーブ。
「えいっ!!」
なんとも頼りない掛け声と共にサーブが打ち出される。これじゃ簡単にレシーブされるな、と思ったら。
「何、これっ!!」
ふらふらと打ち出された愛理のサーブは海風に押し戻されアイリのすぐ手前で落ちた。サービスエース。これで2点差だ。
そして次のサーブも、その次も。
「こんなサーブ、とても取れないわよ」
愛理のサーブは無回転サーブ。風に煽られどこに行くか本人でもわからない。しかも今日の海の風は気ままだ。右や左、あるいは上から。俺は脳内のアーカイブからこのような球筋を検索する。
「野球のナックルカーブね。愛理にこんな秘密兵器があったなんて」
俺は素直に感心する。そして俺たちの優勝が決まった。
三人がコートの中央に集まりハイタッチ。アリアの悔しがる顔を見て俺はなんだか気が落ち込む。
・・・妹に勝たせてやればよかったかな
『アリアは私の妹よ。何しんみりなってるのよ。あなたは悪魔でしょ』
なんだかアリアの意識に同調しすぎていたようだ。やはり早く分離しなくてはな。
表彰式でちっちゃなトロフィーと複勝の目録をもらう。目録の内容はというと。
「花菱のエステグループ、アルマドランの回数券ね。総額にすると百万円するわ。豪華ね」
愛理は目を輝かす。まあ、肉を引き締めるのに効果があるしな。嬉しいだろう。陽茉莉も、
「私も嬉しいわ。筋肉質すぎて肉が硬くなっているのよね。エステでちょっと柔らかくしてもらいたいのでちょうど良いわ」
羨ましそうに見るアリア。俺はそれを見て居た堪れなくなり俺の目録をアリアに渡す。
「そんなに欲しそうな目で見ないでよ。ちょっといたたまれないわ。あ、でもタダではないわ。あなたとの交換ね」
アリアは満面の笑みで俺に抱きつく。
「嬉しい、やっぱりお姉ちゃんね!!」
交換した目録は花菱グループの飲食系のお食事券だ。フレンチにイタリアン。中華に和食。最高級レストランのお好きなところ合計6回分の券が入っている。
愛理がそれを見て、
「あ、あたしそっちても良かったかも。一回で十万円分も食べることかできるのって最高よね」
いやせっかく覚醒したんだ。痩せる努力しろよと内心で叫ぶ。
後に聞いたのだがアリアはやはり筋肉質の体を気にしていたようだ。女性らしいしなやかで美しいボディラインを手に入れたかったらしい。
・・・なんとも乙女だな
『アリアはあなたと違って乙女以外の何者でもないわよ』
お昼のバーベキューの後はスイカ割り大会。デザートも兼ねてらしい。
が、俺たちはすでに体力気力の限界。ほとんどスイカにタッチすることもできずに敗退。後片付けの役割を決めるスイカのタネ飛ばし競技でも敗退。めでたく最下位となり最後はビーチの清掃まで手伝って一日をようやく終えた。
夕食後は地元の花火大会とのことでみんな浴衣に着替え保養所の海岸まで出向く。夏は夜でもそこそこ暑いので支給されたスポーツドリンクを片手に花火見物だ。ついでに地元の商工会からうちわも配られた。ま、アトレリア女学院は日本有数の大企業の子女が集まっているからな。そんなことも関係しているのだろう。
愛理と陽茉莉は自分たちの部活の子と一緒に見るとのことで不在。代わりに俺の横にはアリアがいる。この世界では今やたった2人だけの家族だ。兄の剛毅もいるが厳密には従兄弟だ。アリアはユリカが半年前までは交通事故で瀕死の状態であったことを聞いている。そして俺の手をギュッと握って、
「ユリカお姉ちゃん。もう絶対に私の前からいなくならないでね」
「大丈夫よ。アリア。私はアリアとずっと一緒にいるわ。もう心配しなくていいわよ」
俺なのかアリアなのか。意識はユリカとして俺は答えているらしい。ユリカは俺の意識に上ることなく徐々に同一化しているらしい。このままでは・・・
ドドォーーーーン ドドォーーーーン ドドォーーーーン
花火が上がりだす。綺麗だ。が、アリアは俺の手をさらにギュッと握ってくる。
「怖い」
アリアとユリカの幼い頃の記憶がよみがって来る。戦乱の中の砲声。
「大丈夫。これは平和の音よ。みてごらん綺麗」
俺はアリアの肩をそっと抱きしめ花火を見るように促す。
「本当に綺麗ね。こんな平和がずっと続くといいのに」
本当だ。が、地球にも大魔女マーベラの手の先が迫っているのを知るのはもう少し後になってからだった。
コロナで体調を崩し、心臓疾患までなってからようやく復活しました。病床ではamazonのKindleで「二度目の転生はハーフエルフでした」これはおっさんがお姫様に転生するお話です。「僕が読モでツンデレな件」男の娘が本当の女の子になるお話。等を執筆していました。ぜひ読んでくださいね。