ある事に気がついた 2
ソファへともたれなから、浩行は拗ねた口調で言った。
「なんで?」
「知らない」
プイと顔を背ける。
「今日だってなー。あいつが見たいって言ってた映画観て、食事して、一体何が不満だって言うんだーッ!」
「へえ? 何観たの?」
「なんか……洋画だよ。恋愛もの。『運命のどうちゃら』とか言う……」
……どんな映画だよ。『運命のどうちゃら』って。
「また寝てたんだろ」
呆れて言うと、「うん」とあっけらかんと頷いた。
「そこじゃない? フラれた理由は」
「ちっがう! 麻美はそこは寛大なの。笑って許してくれる」
「じゃあなんだよ?」
「だから、知らないってば」
ぷぅと頬を膨らませる。フラれた理由が判らなければ、慰めてやる事も出来やしない。
そもそも浩行は、決してつまんない奴ではない。甘えたな性格ではあるが、そこもまた、女達からモテる理由の1つだった。
「じゃあ、なんて言ってフラれたんだよ? 突然『つまんない』って言い出したのか?」
「いや。『浩行君って、矢野君の話ばかりするよね。つまんない』って」
「俺ぇ?」
突然俺の名前が出てきて、びっくりした。
「いや、だってするだろー? 麻美より修といる方が長いんだもん。話にだって、出てくるだろー?」
俺が原因だと言われて怒るとでも思ったのか、慌てて言い訳してくる。
短く息を吐いてビールをあおると、「お前は?」と訊かれた。
「何が?」
「お前は話する時、俺の事話に出てきたりしないの?」
「そもそも、自分の話なんかしない」
は? と、浩行が怪訝そうな顔をする。
「じゃあ、なんの話すんの?」
「俺から話なんかしない。大体女は、勝手に話すんだろ? それにふんふんと頷いてやれば、話は途切れない」
目の前で固まる友人を見ながら、再びビールを口へと運んだ。
「……そんなんで、面白い?」
不思議そうに訊いてくる浩行に即答する。
「つまんないよ」