表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キミと紡ぐ【BL編】  作者: Motoki
17/55

我君を…… 6


 石を拾って、窓に当てて割らぬよう気をつけて投げる。


 窓の下の壁に当たった石に、部屋の窓が開いてあいつが顔を覗かせた。




「……矢野?」




 驚いた顔で見下ろす奥野を、微笑んで見上げる。




 ――なぁ上田。俺は、これを区切りとするよ。




「先生、今まで――……」


 ありがとうな、とそう言おうとしたのに。


「矢野、そこ動くなよ!」


 大きく言って、顔が引っ込む。


 その直後、ガタガターンッ! と派手な音がした。




「――おいおい。油絵ひっくり返してねぇだろうな……」




 ありえそうで怖ぇ、と呟いた俺は、「そういや」と思い出す。


 1度、「カッターで紙を切っている時によそ見してて」と指に包帯をグルグル巻きにされて、あいつが病院から帰って来た事があった。


「ホント、どうしようもねぇ程ガサツ……」


 何度も呆れたその様子が、今は笑える。




 笑っていたかった。







「矢野!!」



 階段を駆け下りてきたのだろう奥野が、校舎から走り出てくる。



「今度はあんた、何コカしたんだよ?」



 笑ってやった俺を、走ってきた勢いのままで抱き締める。



「まだ、日付変わってないよな?」


 息を切らせながら耳元で言う声に、「あ? どうだろ?」と腕時計を見ようとした。




 ――のに。




 両頬を手で挟まれて、動けなくなる。






 次の瞬間には、キスされた。





「……ちょッ……、まっ……」





 これって、ディープ……――。





「……はッ、……ん……っ……」





 溢れた唾液が零れて、顎を伝う。


 拭おうとする俺の手を掴んで、それすらも許さず、奥野はキスし続けた。




「――お前ね。教師としての僕と、お前の言葉の両方を叶えようと思ったら、卒業式終わってからの『今日』しかないって気付いてたか?」




 長いキスが終わった途端、もう1度抱き締められて。


 いきなりグチられた。




「お陰で全然、絵が手につかなくて完成しないったら……」




「ちょっと待て。ギリギリにしか完成しないのは、いつもの事だろ」


 呆れた声で返す。





「――けど。返事は受け取ったよ」





 あいつの長い指が触れるのと、頬や耳にキスしてくれるのを感じ受けながら、背を抱き締め返して夜空を見上げた。




「月が綺麗ですね」


「いやそこは。せめて夜空見上げながら言えよ」




 俺を抱き締めながら笑っている、あいつを感じる。




「ちくしょう……」



 これからもこんなふうに、くやしいけど俺は、こいつに夢中であり続けるのだろう。





 闇に浮かぶ灯りが、イヤんなるほど本当に――。




「月が……」




 それ以上は、声には出せなかった。







   我、君ヲ愛ス……――。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ