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キミと紡ぐ【BL編】  作者: Motoki
11/55

この空の下で、キミへ 2


 風が吹いて、先輩の前髪を揺らす。


 額で踊る様子に、「払ってやりてぇなー」と思った。


「俺さー」


 瞼を閉じたままで、先輩が口を開く。


 目を向けて、しばらくその言葉の先を待つ。


 けど、いつまで待っても続けないので、聞き間違いかと視線を逸らそうとした瞬間、先輩が目を開けた。


 起き上がると、膝に肘を置いて頬杖をつく。


「……お前は知ってるかもしれないけど。和美がチョコ渡したいって言った時、最初は屋上に呼ばれたんだよ」


「はぁ」


 もちろん知ってる。


 そん時先輩は、「寒いから」って嫌がったんだ。


「俺、それ断ってさー。何でだろって後から考えたよ。寒ィのなんて、いつもの事だし」


「はぁ。……まぁ、そうッスね」


「お前――だったんだよなぁ。頭の隅に浮かんでたの。……お前に見られたくねぇって、思ってたんだ」


「は?」


 俺? と思っていると、先輩がまっすぐ俺を見つめた。


「お前と屋上で別れた後だったけどな、気づいたの。お前の前では、渡されたくなかった。――和美のでも。他の娘のでも」


「………………」


 先輩から、目を逸らせられない。


 そして先輩も、俺から少しも目を逸らさなかった。


「一応、さ。お前に言われた事も、よく考えたんだぜ。女に恥かかせないって意味とかさ。和美と付き合おうかって思ったりもしたけど。……出来なかった」


「えっ」


 付き合ってるんじゃ……ないんスか。


「卒業式の数日前には、和美に伝えて。……泣かせちまったよ」


 肩を竦めた先輩に、心臓が、バクバクと音を立てる。


 そして卒業式の後の和美さんを思い出した。


 先輩から言われた後だったのに、あんな風に先輩と笑ってたのだ。


「……いい女ッスね、和美さん」


「まぁなー」


 先輩も、そう言って少し笑う。


 その瞳は今、和美さんを映しているに違いない。




「……なぁ。――触れていい?」




 先輩が、首を傾げるようにして訊いてくる。


 あらためて問われても困る。


 声を出せないでいると、クスリと笑った先輩の手が伸びてきた。


 首の後ろに手が触れて、引き寄せられる。


 俺の、唇に。――先輩の唇が触れて、顔を覗き込まれた。


「今日は、突き飛ばさないんだなー? 優樹?」


 顔を真っ赤にしてる俺を見て、ニヤニヤと笑ってる先輩に「ウッセ、バカ」と返す。


 キスされて。初めて名前で呼ばれて。


 照れないヤツがいたら、見てみてーよ。


「俺も、していいッスか。……キス」


 一瞬。


 キョトンとした先輩が、ニヤリと笑う。


「ドーゾ?」


 先輩の腕を掴んで、先輩の額に口付ける。




 前髪に、ずっと嫉妬してた。


 触れたいと、ずっと思ってた。




 その額に触れられて、嬉しく思う。



 ――それなのに。



「オコチャマー」



 クスクスと笑う先輩を、シバいてやりたい……。





 ――なんで俺、あんたを好きなんスかねッ!





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