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キミと紡ぐ【BL編】  作者: Motoki
10/55

この空の下で、キミへ 1


 3月14日。




 屋上に出た俺は、一瞬自分が寝惚けてんのかと思った。


「…………は?」




 ――里見敬先輩。




 あれ?


 この人確か、卒業したんだよな? と自問する。


 制服ではなく私服でいるのだから、もうここの学生でなくなったのには、違いないようだ。


「……なんでここで寝てんの?」


 意味解んねぇ、と近付いて、幸せそうに熟睡している先輩の傍らに座り込む。


 風で揺れる、額にかかる前髪を、そっとどけてやった。


 こんな事ならコート持ってきてやればよかったなーと思う。


 私服で寝に来るって判ってたら、屋上そうじしといてやったのに。


 とか。


 そんなどーでもいい事を頭に浮かべながら、寝ている先輩の顔を眺めた。




 ――ずっと、眺めていてーなぁ。




 なんて、思ったけれど。


 風邪でもひかれたら夢見悪いし、そんなワケにもいかないので、起こす事にする。




「あのー、すみませーん。ここ、部外者は立ち入り禁止なんですけどォー」


 口の横に手を添えながら言ってやる。


 途端。


 ガバッと先輩が飛び起きた。


 ププッ、と笑ってる俺に気付いて、「っんだよー」と俺の頭を小突いて再びゴロンと横になる。


「なんでここに居るんスか」


「あー、アレだよ。今日ホワイトデーじゃん。和美にお返ししてきたトコなんだ。他にも何人かもらってたから、他の娘には郵送して……」


「なんスかそれ。――自慢?」


 言いながら、密かにいっぱい貰っていたことにショックを受ける。


「まぁなー。俺、モテっからさ」


 ニヤリと笑った先輩を軽く睨んで、ああ、和美さんには直接渡したんだな……と小さく笑った。


「ちゃんとお返しとかするんッスねー」


 ちょっと意外ッス、と言うと、「なんでだよ」と軽くケリが入った。


「ちゃんとお返ししたぜー。和美には飴。マシュマロ渡そうと思ってたら、マシュマロ嫌い、とかアイツ言うんだぜー。ワガママだっつの。マシュマロ旨いのによー」


 グチる先輩に、ハハッと笑う。


 失恋した身としては複雑だが、やっぱり先輩の居る『この空間』は穏やかで、嬉しかった。


「――あ。あれッスか。俺にも何か買ってきてくれたんスか」


 そんなのいいッスのにー、と続けようとしたのに、「いいや」とあっさり言われる。


「……………………」




 ――何しに来たんだよ、あんた。




 軽く殺意が芽生えた処で、「え、なに。何か欲しかった?」と訊かれる。


「……いいえ。そう言やフランスでも、貰った女の方はお返ししなくてもよかったッスね、確か」


 あんたは女じゃないケドな。


 俺のスネた様子に、「アッハ」と先輩が笑った。


「お前にはコレ、やろうと思ってさ」


 ピラッと、二つ折りの小さな紙を渡してくる。


「何スか?」


 広げてみると、数字の羅列。


 090 から始まってるから、ケイタイの番号のようだ。


「コレって……」


「そ。俺のケイタイの番号。――お前、知らなかったろ」


「ええ、まぁ……」


 これからも遊んでくれるってコト?


「ヒマな時は電話していいってことッスか?」


「まぁな、そんな感じ」


 寝転んだままの先輩が、頭の後ろで手を組み目を閉じた。


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